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ヤマトの先生

「あんたが、ヤマトのお医者さん?」

ゆみは、佐渡酒造という男の言葉を聞いて、自分の耳を疑った。

ヤマトといえば、ガミラスの宇宙船に放射能だらけにされてしまった地球をまた元通りにきれいにしてくれた宇宙戦艦のはずだ。

「本当に、おじさんは宇宙戦艦ヤマトに乗っていたお医者さんなの?」

ゆみは、また聞き返してしまった。

「だって、ヤマトと言ったら地球の放射能をきれいにして助けてくれた戦艦でしょう。遠くの宇宙人のところまで放射能をきれいにしてくれる装置を取りに行ってきて、ついでにガミラスって悪い宇宙人まで倒してきてくれた戦艦だよね」

ゆみは、言った。

「そうさ。その皆の憧れの戦艦ヤマトのお医者さんがわしじゃ」

佐渡酒造は、ゆみの前で威張ってみせた。目の前で威張られても、どう見てもこのチビで短足でかっこわるいおじさんがヤマトのお医者さんだなんて信じられなかった。ゆみは、佐渡酒造の姿を上から下までジロジロと眺め回してしまった。

「なんじゃ、お前さんはヤマトの乗組員のことを、いったいどんな風に想像しているんだ?」

佐渡酒造は、ゆみに質問した。

「それは、宇宙戦艦ヤマトの乗組員なのだから、背が高くて、スラリとしていて、お目々がぱっちり大きくて・・」

「なんだ、なんだ。なにを想像しているんじゃ。そんな人間は少女漫画の世界の中ぐらいしかおらんわ」

佐渡酒造は、笑いながら答えた。

「それに、なんでヤマトのお医者さんとかいう先生が、こんなところにいるの?」

ゆみは、佐渡酒造に質問した。

「よし、その理由を聞かせてやろう。わしはじゃな、エヘン」

佐渡酒造は、少しお茶目に偉そうな感じで咳払いをしてみせた。

「わしはじゃな、動物病院の先生じゃが、人間のお医者さんの先生でもあるのじゃ。だからな、わしは動物も人間も両方の病気を診てあげることができるのじゃ」

佐渡酒造は自慢してみせた。

「それとな、わしほどの医者になるとじゃな。貧民街に住んでいる貧民というのは、別に人間とは別の下等生物でもなんでもなくじゃな、わしら人間と全く変わらない普通の人間であるということを知っているのだ」

「そうだよ。あたしだって普通の人間だもの。貧民なんかじゃないよ」

佐渡酒造に言われて、ゆみは嬉しそうに答えた。

「もちろんじゃ。ゆみ君というのか、君だってちゃんとした人間じゃ。なのに、バカな地球政府の上官連中は、貧民などとくだらん差別階級なんか作りおってな。貧民は人間で無いから、下等生物だから病気とかしたときは、人間の病院でなく動物病院に連れていけとか抜かしおってな」

佐渡酒造は、地球政府に怒りながら話していた。

「だからじゃな。わしは、地球政府への反逆の意味もあって、ここの、貧民街の境いのところに動物病院を作ってやったんだ。表側から見ると、この病院は動物病院なのだが、貧民街側から見ると、普通の人間の病院として営業させておるのじゃ」

佐渡酒造は、ゆみに説明した。

「表の動物病院から病気のペットを連れてきたエリート連中からは、がっぽりと治療費を請求してやっておるんじゃ。そして、その分で裏の貧民と呼ばれている人間たちが診察に来たらタダで治療してあげているんじゃ。だからな、ゆみ君も、もし病気になったら遠慮せずに、わしのところに来なさい」

佐渡酒造は、ゆみに言った。

「先生、あたしが病気したら、あたしの病気を診てくれるの?」

「ああ、もちろん」

佐渡酒造は頷いた。

「でも、動物たちをほったらかしにしちゃう先生なんだよね?」

「あ、それはじゃな。ちょっと予定がズレてしまってな、帰りが遅くなってしまっただけなんじゃ。決して、動物たちをほったらかしにしたくてしていたわけじゃないぞ。それに、わしがいない間、ゆみ君がちゃんと面倒みていてくれたんだろう」

佐渡酒造は、弁解した。

「白色彗星って知っているか?」

「ううん」

「そうじゃろうな。地球に直接的に攻撃してきたガミラスのことは知っているかもしれんが、地球に到達する前に、宇宙戦艦ヤマトとテレサで退治してしまった白色彗星のことは地上にいた人たちは誰も気づいておらんのだろうな」

「その白色彗星とかいうのを、先生がヤマトで退治してきたの?」

「そうじゃよ」

「それで、ヤマトから戻ってくるのが遅くなって、動物たちが寂しい思いをしちゃったってことなの?」

「そうじゃよ、そうじゃよ」

佐渡酒造は、ゆみの言葉に頷いた。

「ふーん」

ゆみは、佐渡酒造の言うことを、なんとなく半分ぐらいは信じたが、残りの半分はまだ少し疑っていた。

お母さんの恩師につづく

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