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木工の授業

「あ、淳子さん」

ゆみは、木工室の前を麻子と歩いていたときに木工室に入っていく淳子の姿を見つけた。

「本当だね、行ってみようか」

ゆみと麻子は、木工室に入っていった淳子の後ろ姿を追っかけて、中に入ってみた。

「あ、彫刻を彫っている」

ゆみは、淳子の前の椅子に座っている良明が木の板になにか彫刻刀で彫っているのを見て叫んだ。

「ああ、ゆみちゃん」

その声に振り向いた淳子が言った。

「彫刻しているの?」

「私は、一応女子だからやっていないよ。良明が授業で彫っているの」

淳子が、ゆみに答えた。

「あたし、女子だけど7年のときに彫刻を彫ったよ」

ゆみが、淳子に言った。

「そうだよね。7年の2学期のときだけ、ゆみは木工の授業を受けたよね」

麻子も、ゆみに頷いた。

「おお、ゆみか。久しぶりじゃな」

「先生、久しぶりです」

ゆみは、久しぶりに会う木工の先生に挨拶した。

「え、なんで、ゆみちゃんは木工の授業受けたの?女子でも木工の授業ってあったの?」

栗原淳子は、ゆみに聞いた。

「彼女は、なかなか手先が器用でな、先生が1学期だけ家庭科の代わりに木工の授業を受けさせたいとスカウトしたんだよ」

ゆみの代わりに、木工の先生が淳子に説明した。

「ええ、いいな。私も、家庭科より木工の方が良かったな」

淳子は、つぶやいた。

「あ、ワンコだ」

ゆみは、木の板に犬の彫刻を彫っている良明を見て叫んだ。

「うーん、彼も、ゆみに負けず劣らず、けっこう器用に彫刻刀で彫るんだぞ」

先生が、ゆみに言った。

「へえ」

ゆみと麻子は、良明が器用に彫刻を彫る様子を眺めていた。

「ふん」

良明は、もう一個余っている彫刻刀を栗原淳子に渡した。

「え、なに?私に彫れって?」

淳子が、良明に聞いた。良明は、黙って自分が座っている斜め前の席に栗原淳子を座らせた。良明が彫っている白い板は、窓枠か何かになるらしくかなり大きい。良明は、その窓枠の上側部分を彫っているところだった。下側部分は、まだ何も彫られていなくて、そこの部分をどうやら栗原淳子に彫るのを手伝わせようとしているみたいだった。

「私に彫れっていうの?無理だよ。こんな繊細なの彫れないよ」

淳子が良明に言うと、良明はムッとした表情で淳子のことを睨んでいる。

「あたしが彫ってもいい?」

ゆみが、その様子をみて良明に聞いた。良明は、黙ってゆみに、こういう風に彫れとばかりに窓枠に付ける予定の下絵を、ゆみに見せた。

「そういう風に彫ればいいのね」

ゆみは、淳子から彫刻刀を受け取ると、良明の斜め前の席に座って、下絵を見ながら彫り始めた。

「ゆみも、なかなか上手いじゃない」

麻子は、下絵とそっくりに彫っていくゆみの姿を見て言った。

「お!彫り始めてしまったな!」

先生がやって来て、ゆみが彫っている姿を見つけて言った。

「これは、1組の木工の卒業制作で使う窓枠だからな。これを彫り始めてしまったら、もう卒業までずっと、ここの部分については、ゆみに彫ってもらうしかないぞ」

先生は、笑いながら言った。

「うわ、ゆみ。大変だ」

麻子は、先生の言葉を聞いて反応したが、ゆみは逆に

「え、いいの。ここは、あたしが全部彫っても?」

ゆみは、木工の作業が嫌いじゃなかったので、先生にそう言われて喜んでいた。

「ゆみ、ちょっと、こっちに来てみな」

先生に呼ばれて、ゆみは木工の手を休めて、先生の見ている木工室の表を眺めた。

「あそこに小さな小屋があるだろう」

「うん。なんか作りかけ」

ゆみは、木工室の表に小さな作りかけの小屋があるのを見た。

「あの小屋の、あそこの窓になるのが、今ゆみと良明が彫っている窓だ」

「へえ」

ゆみは、小屋を見た。

「窓を付けたら、煙突とか、部屋の中のダイニングとかを作って、今年の9年生の卒業制作は完成となる。お前も、あの小屋を完成させるのに協力してくれるか」

「うん」

ゆみは、先生に答えた。それから、放課後に祥恵が部活があるときは、ゆみは木工室に来て、小屋の制作に没頭することとなった。

「おもしろいね」

ゆみは、窓枠の下半分を彫りながら、その斜め前で上半分を彫っている良明に言った。良明は、何も口では答えてはくれなかったが、ゆみにニッコリと笑顔で頷いてくれた。

「これ、ブタさん?」

「うん」

ゆみが、下絵に描いてあるブタらしき絵を指さして、良明に聞くと、良明は黙って頷いた。

「ブタさん彫るのは、ブータ先生のこと参考にしようかな」

ゆみは、自分の側で眺めていたブータ先生に聞こえるように言った。すると、ブータ先生は、ゆみの彫っている横で斜めに寝転がったりしてモデルのようにポーズを取り始めた。もちろん、ポーズを取っているのは、ゆみにしか見えていず、他の人には、ただ白い板の上にブタのぬいぐるみが転がっているだけにしか見えていないのだった。

「こっちもブタさんなの?」

「あ、そうか。ブタさん2匹いるのね。じゃ、もう1匹彫らなきゃね」

ゆみは、良明に下絵の説明をされて、2人は仲良く楽しそうに笑っていた。

「ゆみ。あんまり仲良くしたら、彼女の淳子に嫉妬されるよ」

そんな2人を見て、麻子がゆみに言った。

「えっ」

「いや、別に私、良明の彼女じゃないから」

淳子は、麻子に言った。

「違うの?」

「違うよね?」

麻子に聞かれて栗原淳子は、良明に同意を求めた。良明は、黙って彫刻刀を板の上に置くと、淳子のことを追っかけて軽く叩いている。

「はいはい、わかったよ。あ、今、本気で叩いたろう?」

淳子を追っかけて部屋の外で叩いていた良明が、今度は淳子に反撃されて叩かれていた。

「ああ、あれは、あのじゃれ方は完全に彼女だね」

「確かに」

まゆみと麻子は、そんなじゃれ合う2人を見てつぶやいていた。

「ああ、そうか。あの2人ってお付きあいしてたのね」

ゆみが、表でじゃれ合う2人を見てつぶやくと、いつも天文部でもしょっちゅうじゃれ合っていたのに、何を今さら気づいたのという顔で、麻子たちが、ゆみの顔を見た。

ソーラン節体操につづく

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