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お母さんもいっしょ

「眠ってしまいましたわ・・」

ゆみのことを、あゆみたちの横のベッドに寝かせたゆみのお母さんは、ベッドルームのカーテンの仕切りを閉じてから、佐渡先生たちの座っているテーブルにやって来た。

「まあ、今、お茶でもお入れしますね」

お母さんは、テーブルの脇のキッチン、というか古いガスコンロと小さな冷蔵庫だけが置かれた台に行き、そこでお茶を沸かし始めた。

「どうぞ、お構いなく。皆さんの食べるもの、飲むものが無くなってしまうでしょうから」

佐渡先生は、お茶を沸かしているお母さんに声をかけた。

「お茶ぐらいなら大丈夫ですよ。なんか、この子たちがどっかからか食料と一緒に持ってきてくれるんですよ」

お母さんは、奥で眠っているゆみやあゆみたち少年盗賊団の方を指さしながら答えた。

「うむ。そうなんだよ」

佐渡先生は、古代進たち3人に話した。

「ゆみちゃんはな、ここの貧民街に閉じ込められた孤児たち、ガミラスが遊星爆弾を地球に落としたときに両親を亡くしてしまった子たちなのだが。彼女、彼らたちと一緒になって少年盗賊団なるグループを作ってだな。毎晩、下水道の通路を通って、貧民街の表に脱けだして、そこのお店から貧民街の人たちが食べる分の食料とかを頂いてきておるんだよ」

佐渡先生は、ゆみのやっている少年盗賊団のことを3人に説明した。

「おかげで、ここの貧民街の貧民の人たちは皆、食料にありつけて暮らせておるんじゃよ。なんせ、ここの地域の貧民街だけだからな。1人も貧民の中から死者が出ていない貧民街は。大した子だ」

佐渡先生は、ゆみが眠っているカーテンの方を眺め、頷きながら話していた。

「ほかの地域にも、貧民街という場所はあるのですか?」

「ある。ほかの地域の貧民街は、政府が配布する食料を減らしておるから飢え死にしてしまっている貧民がたくさんおるんじゃ。なのに、ここの貧民街だけは彼女たちの活躍のおかげで餓死する貧民はゼロじゃ」

「食料の配布を減らしているのですか?」

「予算かなにかで縮小しているとか?」

「いや、違う。政府も、復興当初は、復興の促進のために貧民という存在は必要だったのじゃろうが。今は、貧民街を存続させることは、もし人権団体とか何かに真相が見つかったら大変じゃからな。早く貧民街は、貧民の存在は無くしたいのだろう」

「それで、食料の配布を縮小?」

「ああ。食料の配布を減らすことで、餓死させて貧民街の貧民を自然消滅させたいのだろうよ。現に、ロシア地区にあった貧民街は、貧民の居住者がいなくなって完全消滅しておるからな」

「ひどい!そんなこと許せない!」

森雪は、佐渡先生から話を聞いて怒っていた。

「それが、彼女の少年盗賊団の活躍で、ここの貧民街は餓死する人がゼロと・・」

「そうじゃ」

「すごいじゃない!沖田艦長の高い銅像の上から飛び降りたときは怪我をしないかとびっくりしたけど。あの子は、ガッツあるわね」

森雪が、眠っているゆみのいる方を眺めながら言った。

お母さんが、淹れたてのお茶を皆に出した。

「それでな、ゆみ君には卒業祝いにヤマトのテストセーリングに乗せてやろうと思うんだ」

佐渡先生は、お母さんとお父さんにも明日の卒業式以降のテストセーリングについて話した。

「彼女は頭の良い子だからな、ヤマトに乗せても上手くやると思う。しかしじゃな、わしも貧民の子を内緒で狭い船の中に乗せて、長期航海に出させたことなどない。何が起こるかわからないのが実情だ」

佐渡先生は、お母さん、お父さんたちに話した。

「そこでじゃな、お父さん、お母さんにも一緒にヤマトに乗ってあげてもらえないかな?」

「それは。ゆみが乗るなら、もちろん私たちも一緒についていてあげたいです。でも、そんなこと出来るんですか?」

「貧民に定められたルールによるとだな、貧民は貧民街から外に出てはいけないことになっておる。しかし、それには例外があってな」

佐渡先生は、お母さんたちに説明していた。それを古代進たち3人も聞いていた。

「一般の人、いわゆるさっき、ゆみ君がエリートと呼んでいたエリートの人たちが貧民街に来て、気に入った貧民のことを奴隷、女中として家に連れ帰ることができるんだそうだ。選ばれた貧民は、その人に連れられ、その人の家で監視下のもと、ずっと女中・・といっても奴隷じゃな。奴隷として一生こき使われるんだそうな」

佐渡先生の話を聞いて、皆しばらくシーンとしていた。話があまりに衝撃的過ぎたようだ。

「そこでじゃな、わしは、この貧民ルールを逆手に取ってやろうと思っておる。わしが、ゆみ君のご両親のことを気に入り、ヤマトの食堂担当の女中に雇いたいと申請する。そして、ご両親にはヤマトの食堂で乗組員のごはんを作ったりしてもらいたいんだ。ゆみ君の側でな」

佐渡先生は、お母さんとお父さんに提案した。

「それは、ぜひ」

「私も、ここの貧民街では何も仕事させてもらえないし、することが無くて身体がなまっていたので、食堂でも何でも働きますよ」

いつも、コンテナの部屋の中でぶらぶらしていたお父さんが、仕事を与えられることを喜んでいた。

「で、じゃな。但し、お父さん、お母さんは貧民としてヤマトに乗りこむことになる。ゆみ君は、卒業生として貧民であることは隠して乗りこむことになる。なので、ゆみ君の側にいてやってほしいが、ゆみ君と親子だということは内緒にしてついていてやって欲しいんじゃ」

「わかりました」

お母さんは、佐渡先生に返事した。

出発の日につづく

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