「ゆみ・・」
祥恵は、大型スクリーンに映し出されたピンクタイガー機を見ていた。
「こちら、ピンクタイガー。ヤマト聞こえますか?」
ピンクタイガー機からヤマトへ無線が入った。無線の声は、澪いやサーシャだった。
「澪さん、無事だったの?」
祥恵は、サーシャに聞いた。
「ええ、ゆみちゃんが迎えにきてくれたの」
「そう。そうだったの」
祥恵は、ゆみが皆と逆方向に向かった理由を理解した。
「それで、ゆみは?」
「ゆみちゃんも、ここにいるよ。ちょっと前まで、私と一緒にピンクタイガーのステアリングを握って、必死で操縦していたんだけどね。ちょっと疲れちゃったのかな。今は、操縦席で眠っている」
サーシャは答えた。
「サーシャ、大丈夫なの?」
そう聞いたのは森雪だった。
「え、どうして私のことサーシャって?」
「それはわかるわよ。私は、あなたの叔母なのだから」
森雪は、サーシャに答えた。
「サーシャ」
「お母さん、今ヤマトに戻るね」
サーシャは、無線を通じて母のスターシャの声を聞いて胸を詰まらせていた。
「サーシャ。ゆっくりでもいいから安全にヤマトに戻っていらしゃい」
「はい、お母さん」
「あと、あなたのお友達のゆみちゃんも、しっかり連れて戻ってくるのよ」
「うん。わかっている」
サーシャは、スターシャに答えると、無線を切った。ボロボロになっているピンクタイガー機だったが、そろりそろりと少しずつ前方に動き出し、ヤマトの格納庫に向かって飛び始めていた。
「ゆみ。今、ヤマトに戻るからね」
サーシャは、操縦席でぐったりと横になっているゆみに声をかけた。
「サーシャ・・」
ゆみは、後ろの席から手を伸ばして、ピンクタイガーのステアリングを操作しているサーシャに声をかけた。
「ほら、無理して話をしないの」
「あたしさ、これでヤマトに戻って地球に戻ったら、もう宇宙には出るつもりないよ」
「私も。地球でゆみちゃんと一緒に学校に通って、地球でずっと暮らす」
サーシャも、ゆみに答えた。2人は、嬉しそうに笑顔で見つめ合っていた。そして、ゆみは疲れてそのまま眠ってしまった。
「ゆみちゃん。あとは私がしっかりピンクタイガーをヤマトまで操縦するからね」
サーシャは、そういうとピンクタイガーのステアリングを1人握っていた。ピンクタイガーの機体は、暗黒星雲の爆発でぼろぼろだった。そのため、操縦してもなかなかスピードが上がらず、ゆっくりゆっくりとヤマトに向かっていた。
「ほら、あともうちょいだよ」
サーシャは、前の席で気絶しているゆみにつぶやくと、ピンクタイガーの機体をゆっくり静かに宇宙戦艦ヤマトの格納庫フロアに着地させた。
「おかえり」
格納庫には、ヤマト乗組員たちが2人をお出迎えに集まっていた。
「ただいま」
サーシャは、ピンクタイガーを降りると、祥恵に言って、抱いていたゆみの身体を手渡した。祥恵は、ゆみの身体をサーシャから受け取ると、しっかり抱き留めた。
「お母さん、お父さん」
祥恵に、ゆみの身体を手渡した後、サーシャは迎えに来ていたスターシャと古代守に抱きついた。2人もサーシャのことを抱きしめてくれていた。
「ほらほら、道を開けた。開けた」
佐渡先生が、担架を持ったロボットのアナライザーを引き連れてやって来ると、ゆみの身体を担架に乗せて、医務室へと運んでいってしまった。
祥恵に、祥恵のお母さん、お父さん、それに森雪、スターシャさんたち一家は、ゆみを運んでいった佐渡先生たちの後を追って、医務室に向かった。
「進。ヤマトは、これから地球に帰還する」
古代守は、スターシャたち家族と医務室に向かう前に、弟の進に艦長として指示をした。
「了解です!」
古代進は、兄に敬礼をすると、
「ヤマト!地球に向けて発進!!」
古代進は、皆に言うと、格納庫に集まっていたヤマト乗組員たちは、それぞれの担当部署につき、ヤマトを地球へと発進させた。
地球に帰還につづく