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春の旅行

「ああ、やっと期末終わった・・」

祥恵は、3学期の期末試験が終わって、美和たちとホッとした表情をしていた。

「さあ、春休みだね」

ゆり子も、ホッとした表情をしながら祥恵たちに言った。

「春休みが終わったら、私たちもいよいよ9年生か」

「本当だね、中等部最後の年だね」

「そういえば、祥恵はバスケ部で春の合宿とかあるの?」

「春の合宿?」

祥恵は、ゆり子に聞き返した。

「ゆみちゃん、天文部じゃない。天文部では、春休みに春の合宿とかで、高尾山に登って、そこの頂上で泊まって星空を観察するんだってよ」

「そうなんだ」

「バスケ部も、そういうのあるのかなって思って?」

「そういうのは無い。ただ体育館に集まって、バスケの練習するだけ」

祥恵は、ゆり子に答えた。

「で、ゆみは春の合宿に行くんだって?」

「そうじゃない、たぶん。ブータ先生と高尾山に登る話をしていたから」

「大丈夫なのかな?あの子、1人でお泊まりなんかできるのかな」

祥恵は、心配そうに言った。

「え、1人でお泊まりとかできないの?」

「うん。前に、うちのおばあちゃんの家に1人で泊まりに行ったとき、昼間はおばあちゃんと元気に遊び回っていたのに、夜に1人で寂しくなって泣き出して、お母さんが夜中にわざわざ車を出して迎えに行って大変だったのよ」

「そうなんだ」

「それ以来、あの子は私かお母さんか家族の誰かが一緒でないと外にお泊まりしに行ったことがないの」

「ふーん、でも大丈夫じゃない」

「そうよ。もう9年生なんだし。ゆみちゃん、4組になってから、けっこう大人になっているよ」

美和とゆり子は、祥恵に言ったが、祥恵はなんとなく不安だった。

「ブータ先生」

その日の帰りの井の頭線の電車の中で、ゆみがいつものように席に座って、その前に祥恵が立っていると、突然ブータ先生の姿が現れた。

「ブータ先生、元気だった?」

「ああ」

ブータ先生は、ゆみの座っている席の横にある手すりの上を綱渡りのように歩きながら答えた。ゆみも、突然現れるブータ先生にも、すっかり慣れっこになっていた。

「この子、どこにブータ先生持っていたんだろう?」

ゆみの提げているぺっちゃんこのバッグを見つめながら、ゆみがどこにブータ先生を持っていたのか不思議だった祥恵でさえも、今は、ブータ先生ってけっこう小さめのぬいぐるみだし、どこかきっとバッグの隅にでも入れていたのだろうと思うようになっていた。

「ねえ、ゆみ」

膝の上でブータ先生とじゃれ合っているゆみに、祥恵は声をかけた。

「なあに?」

「ゆみさ、天文部で春休みに合宿があるんだって?」

「うん、高尾山に行くんだって。お姉ちゃん、高尾山ってどこにあるか知っている?八王子のほうにあるんだよ」

「そのぐらい知っているよ」

祥恵は、ゆみに答えた。

「で、あんたも行くの?」

「え、あたし?あたしは行かないよ。だってユーレイ部員だもん」

ゆみは、祥恵に答えた。

「ユーレイ部員って・・」

祥恵は、ゆみの返事に苦笑した。

なんだか、すっかり天文部のユーレイ部員っていう自分のポジションが気に入ってしまったのか、家でもお母さんや祥恵にユーレイ部員なんだよと話しているゆみだった。

「そうか。天文部の皆は高尾山に行くけど、ユーレイ部員のゆみは行かないんだ」

「うん」

ゆみは頷いた。

「そうか、それなら良いんだけど。もし、行くんだったら、ゆみ1人でお泊まりできるのかなってちょっと心配だっただけ」

井の頭線が東松原駅に到着した。

「着いたよ。降りるよ」

祥恵は、ゆみを連れて電車から降りた。

「大丈夫だよ。お姉ちゃんがバスケの合宿に行くときは、寂しくないように、あたしもちゃんとついていってあげるからね」

ゆみは、東松原駅の改札口を抜けると、駅前商店街の中を歩きながら、祥恵の手を掴んで言った。

「何よ、それ。お姉ちゃんは別に1人でお泊まりできるし。1人でお泊まりできないのは、ゆみでしょう」

祥恵は、ゆみの手をぎゅっと繋ぎながら答えた。

「お姉ちゃんも合宿行くの?高尾山?」

「だから、バスケ部は合宿なんて無いの。毎日、学校の体育館に行って、バスケの練習するだけ」

祥恵は、ゆみに答えた。

「9年生になってもバスケやる?」

「やるよ」

祥恵は答えた。

「10年生になったらバスケはやめるけど」

「え?なんで?高等部には、バスケ部って無いの?」

ゆみは、祥恵に聞き返した。

「高等部にもバスケ部はあるだろうけど、高等部になったら私は部活は一切しない」

「そうなの?どうして?」

「大学受験があるでしょう。大学受験の勉強をしなくちゃ、大学に行けなくなってしまうでしょう」

祥恵は、ゆみに答えた。

「お姉ちゃん、大学に行くんだ」

「行くよ。医学部の大学を卒業しなきゃ、お医者さんになれないでしょう」

「ああ、お姉ちゃんってお医者さんになるんだ?歯医者さんになるの?」

「うん」

祥恵は答えた。

「ゆみは、高等部を卒業したらどうするつもりなの?」

「わからない」

ゆみは答えた。

「わからないけど、お姉ちゃんが大学に行くのなら、お姉ちゃんと同じ大学に行くと思う」

「同じ大学って、ゆみも医学部に行くつもり?お医者さんになるの?」

「お医者さんになるかはわからないけど、お姉ちゃんが医学部の大学に行くのならば、あたしもお姉ちゃんと同じ大学に行くよ」

ゆみは、ケロッと答えた。

「なに、その単純な大学の選び方・・」

祥恵は、ゆみの顔を見て、つぶやいた。

ママ友につづく

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