「あなたね。もしかして私のこと迎えに来たの?」
サーシャは、コスモタイガー機ごと建物に飛びこんできたゆみに聞いた。
「うん、早くお母さんのスターシャさんのいるヤマトに戻ろう」
ゆみは、サーシャに答えた。
「こんなところに来て、あなただって星の爆発に巻き込まれるかもしれないのに・・」
サーシャは、勝手にやって来たゆみに向かって、なにか言おうとしていたが、
「早く!時間がないのよ!」
ゆみに即されて、ゆみの乗ってきたピンクタイガー機の後部座席に乗った。
「いい?発進するわよ」
ゆみは、ピンクタイガーのコクピットハッチを閉めると、飛び立った。2人の乗るピンクタイガー機は、ゆみがやって来た通路を今度は逆方向に進んでいた。そのまま、ほかのコスモタイガー隊と左右に別れた分岐点まで来ると、今度は他のコスモタイガーが進んでいった右方向に向かって進んでいく。
「ねえ、ゆみ。あんたさ、なんでここに来たの?」
「なんでって?サーシャのこと誰かが迎えに来なければ、サーシャはヤマトに戻れなくなってしまうじゃない」
「そうだけど。こんな危険なところに来て、ゆみにもしものことがあったらどうするつもりだったのよ」
「あたしは大丈夫」
「なんで、そんなこと言えるのよ?」
「わからない。なんとなくね、大丈夫な気がするだけ」
「もう!計画性もなく無茶するんだから」
サーシャは、ゆみの頭を後ろからこづいた。
「私は、別にこの星で亡くなっても良かったのよ。それより、ゆみちゃんには、祥恵さんって素敵なお姉さんも、お母さんも、お父さんもいるんだから」
「サーシャさんだって、お父さんもお母さんもヤマトにいるでしょう」
「そうだけど・・」
「ねえ、知ってる?子どもはね、お父さんやお母さんたち親よりも先に死んだりしちゃいけないんだよ。お父さんとお母さんを看取る責任があるの。だから、サーシャも、こんな暗黒星雲なんて変な星で死んだりしちゃいけないの」
ゆみは、サーシャに言った。
「はい、わかりました!」
サーシャは、ゆみに返事した。
「それは、まだ1歳の私への人生の先輩としてのアドバイスですか」
「うん、そうよ」
ゆみは、後ろのサーシャの方をチラッと振り向いて、笑顔で答えた。
「本当はね、それは小さい頃、あたしがお父さんに言われた言葉なの」
それから、ゆみもサーシャも前を向いて、前方の進路に向かって飛行するのに集中していた。ゆみは、ピンクタイガーのステアリングを握って操縦に集中、サーシャは、ピンクタイガーのビーム砲の扱いをゆみから引き継ぎ、進路の側壁から攻撃してくる敵を倒していた。
2人がピンクタイガーの飛行に集中していると、進路の前方の方からものすごい衝撃音とともに大爆発が発生していた。
「あれが、この星の中心の心臓部ね」
ゆみの誘導で右方向に進んでいった祥恵たちコスモタイガー隊は、暗黒星雲の中心部にあるコントロールルームというか星全体を制御する巨大な機関部に到達していた。
「破壊してしまいましょうか?」
坂本が、戦闘班長の祥恵に聞いた。
「そうね。手前付近のコスモタイガーでも破壊できそうなものだけ破壊して、あとは出口まで飛び立って、波動砲を撃ち込める道筋をつくって、ヤマトから波動砲を撃ってもらいましょう」
「了解!」
コスモタイガー隊は、祥恵の指示で暗黒星雲中心部の巨大な機関部の表面を集中攻撃してから、反対側の通路を突き抜けて、出口から星の外に飛び出した。コスモタイガーたちが通過したことで、暗黒星雲の骨、骨した星には、中心まで続いた一直線の穴が出来ていた。
「進、波動砲発射!」
古代進は、艦長の古代守の指示で、ヤマトの波動砲を暗黒星雲の穴に向かって撃ち込んだ。それによって、暗黒星雲中心部の巨大機関部は大爆発を起こし炎上した。
その炎上の煙の中から祥恵たちの乗るコスモタイガーは、出てきて少し離れたところで反転して、暗黒星雲の星が完全に消滅するのを確認していた。
「うわ!」
大爆発の衝撃でピンクタイガーのハンドルを取られたゆみは、必死でステアリングを握って耐えていた。
「ゆみ、大丈夫!?」
サーシャは、後ろからゆみに声をかけた。
「うん。すごい衝撃でステアリングを持っていかれそう」
ゆみは、サーシャに答えた。サーシャも後ろの座席から前方に手を伸ばして、ゆみと一緒にピンクタイガーが爆発で揺れないように、ステアリングを握ってくれていた。
それでも、ピンクタイガーは爆発の衝撃に、木の葉のようにゆらゆらと揺れていた。それを必死に抑えて、機体の体勢を整え直そうと必死にステアリングを握っている2人だった。
ニュータイプにつづく