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自殺願望

「ね、やめなよ。死んだら終わりだよ」

「そうだよ。もう飛び降りなくたって良いじゃん」

4組の廊下の向こう、非常階段の先から女の子の声がしていた。

ゆみは、放課後に教室で姉の部活が終わるのを1人で待っていた。特に読む本が無かったので、教科書を読書しているときだった。非常階段から女の子たちの黄色い声が聞こえてきた。

「なあに?」

ゆみは、教室を出ると、声のする非常階段のところにやって来た。非常階段に出るには、扉があって、その扉を開けると外に出れるのだ。外には、非常階段が1階までずっと下っていた。

「開いてる・・」

普段は、非常階段の扉は閉まっているのだが、その日は大きく扉が開いていた。前にも、扉が開いていることはよくあって、ゆみも、そこから非常階段を覗いたことはあった。非常階段には、1階までずっと手すりが付いているのだったが、細い手すりだし、なんだか落っこちそうで恐くてあまり非常階段に出るのは好きで無かった。

「あ、さやかちゃん」

ゆみは、落ちないように非常階段の扉に捕まりながら、表を覗くと、そこに立っている人影を見つけて叫んだ。

白の夏向きの薄手のロングフレアースカートを履いた同じ4組のクラスのさやかと由佳が立っていた。2人の向こうには星野くんもいた。

「あ、ゆみちゃん」

「ゆみ。ちょうど良かった。こっちに来て星野になんか言ってやってよ」

由佳が、ゆみに言った。

「どうしたの?」

非常階段に出るのは恐いので、扉と壁に捕まって、顔だけ外に出しながら、ゆみが聞いた。

「星野、自殺するんだって」

「自殺?」

「ここから飛び降りて、死んじゃうんだって。ここから離れないのよ」

さやかと由佳は、ゆみに言った。

「本当に死んでやるよ!ゆみのせいでもあるし」

星野は、チラッと扉から顔を出しているゆみのことも見つつ、叫んだ。

「あたしのせい?なんで?」

ゆみは、星野に聞き返した。

「ゆみは、可愛いレースふりふりのエプロン縫っていただろう。俺だって、そういうの縫いたいよ。あんな重たい刃物の付いたものなんて振り回したくないし」

「可愛いエプロン縫えば良いじゃない」

ゆみは、ケロッと星野に言い返した。

「え、縫えばいいって」

「それは無理でしょう。星野、いちおう男子だし。女子じゃないから」

さやかと由佳が、ゆみに言った。

「あたしが先生に頼んであげる!」

ゆみは、星野に言った。

「そうか。ゆみは優等生だものね。ゆみが先生に言えば、特別に星野も家庭科のクラスにしてもらえるかもよ」

「いや、無理だ。飛び降りる」

星野は、そう言って片足を手すりにかけると飛び降りるマネをした。

「やめなって、落ちちゃうよ」

さやかが、両手で星野の片足を押さえて床に戻しながら言った。さやかの履いているロングのフレアースカートは夏向きで生地が薄いので、夏の優しい風に揺れて、ふわっと浮き上がった。

「ほら、さやかまで俺にスカート自慢しやがって」

星野は、風で揺れるさやかのスカートを見ながら言った。

「え、ただ、風で揺れただけじゃん」

さやかは、自分のスカートを手で押さえながら答えた。

「なんで、そんな風で揺れる可愛いスカートを俺の前で履くかな」

「いや、別に星野の前で履いているわけじゃないし」

さやかは、星野に少し呆れながら言った。

「確かに、さやかちゃんの、そのスカートって、あたしもいつも履いているところ可愛いって思っていたけど」

ゆみは、非常階段の扉の向こうから、さやかのスカートを見ながら言った。

「そうなの?」

「うん。可愛いよ、ふわふわ揺れるところ」

ゆみは、さやかに聞かれて答えた。

「ゆみちゃんも、こういうスカート履けば良いのに。ぜったい似合うと思うよ」

由佳が、ゆみに言った。由佳は、青いデニムのスカートを履いていた。

「ほら、ゆみは可愛ければスカート履けるんだし。可愛くても履けない俺の気持ちなんかわからないだろう」

星野が、由佳の言葉に反応して言った。

「別に、星野もスカート履きたければ、履いたって良いんだよ」

「あたし、スカートはぜったい履かないけど・・」

ゆみが言うと、皆は、ゆみの方を一斉に見た。

「どうして?」

「あたし、スカート嫌いだもん。生まれてから一度も履いたことない」

ゆみは、皆に答えた。

「そうなの!?」

「うん。ぜんぜん。お姉ちゃんに聞いてもらっても良いよ。1回も履いたことないから」

「もったいない・・」

星野が、ゆみに言った。

「うん。だから、星野もスカートなんか履けないこと悔しがることないよ」

ゆみは、星野に言った。

「それに、どうしても家庭科のクラスが良ければ、あたしと代わってもいいよ」

ゆみは、星野に言った。

「ゆみ、本当に?木工やる気?」

さやかが、ゆみに聞いた。

「うん。あたし木工も嫌いじゃないもの。前に、鳥居に誘われて、先生に教わりながら彫刻したことあるの。けっこう楽しかったもの!」

ゆみは、皆に答えた。

その後、部活から帰ってきた祥恵と、ゆみは一緒に自宅へ帰った。

自宅に帰って、ゆみは、お母さんに星野って女の子になりたい男の子がクラスにいて、その子が木工よりも家庭科をやりたいって自殺しようとしたんだよって話した。

「それはね、本当に自殺しようとしていたんじゃないわよ。星野くんは、ゆみやさやかちゃんたち女の子がキャーキャー言うから、わざと自殺するとかってふざけていただけよ」

と、お母さんは説明してくれた。

お母さんの話を聞いて、星野ってそうだったのかなと思うゆみだった。

緊急会議につづく

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