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ブータ先生の秘密

「かおりちゃん、何か読みたい本ある?」

ゆみは、図書室で、かおりに聞いた。

「あたしは、普通の本は読めないから」

「あ、そうか。かおりちゃんが読める本ってあるのかな」

ゆみは、目が見えない人でも読める本がないかと図書室の中を見渡した。

「さすがに無いよね」

かおりは、ゆみに言った。

「ね、図書室の中がどうなっているか案内してもらえない?」

「いいよ」

ゆみは、かおりの車椅子を押しながら、図書室の中をぐるぐると一周した。

「あそこがね、小等部の子たちが遊べるスペースなの。絵本とかもいっぱいあるけど、ほかに積み木とかおもちゃもあって、カーペットの上で直に座って遊べるんだよ」

ゆみは、図書室の入ってすぐのところにあるカラフルなカーペットが敷かれたキッズスペースの前で、かおりに説明した。

「今は小等部の子たちは誰もいないけどね」

空っぽのキッズスペースを見ながら、ゆみは言った。

「あたしさ、飛び級で中等部にならなかったら、まだ小等部でしょう。だから、小等部の子たちは知っている子たち多いんだよ」

「そうか。ゆみちゃんのお友だち会ってみたかったな」

「また今度、もう少し早い時間に来ようよ」

ゆみは、今度はかおりを奥の書庫に案内した。狭い書庫の通路をゆっくりと車椅子を押しながら進んでいく。

「え、なんか光っている」

ゆみは、奥の書庫の棚が金色に輝いているのを見つけて叫んだ。

「何かいるよね」

目が見えていないはずのかおりも、その金色に光るものに気づいて、ゆみに言った。

「え。あ、ブータ先生!」

ゆみは、金色に光る中に、書庫の棚の上に立っているブータ先生の姿に気づいた。

「え、なに?ブータ先生って?」

かおりは、ゆみに聞いた。ゆみは、かおりに何て説明したらいいかわからずに黙っていた。

「ゆみちゃん、どうしたの?ブータ先生って、ゆみちゃんのお友だち?」

かおりは、黙っているゆみに質問した。

「あのー、お友だちというか・・なんていうか」

ゆみが返答に困っていると、

「なんだよ。もっとちゃんとおいらのことを紹介しろよ」

ブータ先生が書庫の棚から飛び降りて、こちらにやって来た。

「こんちわ」

ブータ先生は、かおりに挨拶した。

「あ、こんにちは」

かおりは、ブータ先生に返事しながら、自分の側にやって来たブータ先生の身体を手で触って確認していた。

「あなた、ブタさん?っていうかブタのぬいぐるみさん?」

かおりは、ブータ先生の身体を手で触って確かめながら質問した。

「まあ、おいらはブタじゃないんだけど。まあ、人間界では、おいらの姿をブタのぬいぐるみだと認識する人が多いみたいだな」

「あら、そうなの」

かおりは、ブータ先生の身体を手で抱き上げながら言った。

「かおりちゃん、ブータ先生の姿が見えるの?」

ゆみは、ブータ先生を持ち上げているかおりに聞いた。

「え?ええ。見えるっていうか、目が見えないから、見えていないけど手で触ればブタさんのぬいぐるみだってことはわかるわよ」

かおりは、ゆみに答えた。

「今、かおりちゃん。ブータ先生とお話していた?」

「うん。だって何か話しかけてくるんだもん」

かおりは、ブータ先生の頭を撫でながら答えた。

「あたしもブータ先生のこと見えるし、おしゃべりもできるの」

ゆみが、かおりに言った。

「でも、お姉ちゃんとか、ゆり子お姉ちゃんにはブータ先生が見えないみたいなの。ううん、見えているんだけど、それはただのブタのぬいぐるみで、おしゃべりとかは聞こえないみたいなの」

ゆみは、かおりに説明した。

「そうなんだ。あたしにはブータ先生の声、ちゃんと聞こえるよ」

「そうか、良かった!だって、ブータ先生って、今まであたしにしか聞こえないから、あたしがなんか頭おかしくなったのかと思って心配してたの」

「大丈夫。あたしにもちゃんと聞こえるから」

かおりは、ゆみに笑顔で言った。

「それはじゃな、心が荒んでいるんだな」

ブータ先生は、2人に答えた。

「心が荒んでいる?」

「そうじゃ。心が荒んでいる人間には、おいらの声は聞こえんのじゃ。心がきれいで清い人だけ、おいらの声が聞こえるし、話もできるのじゃ」

ブータ先生が言った。

「え、ちょっと待ってよ!それじゃ、あたしのお姉ちゃんは、心が荒んでいることになってしまうじゃない!」

ゆみは、ブータ先生の言葉に反論した。

「そうかもな」

「ちょっとそれって、失礼ね。ブータ先生ってちょいちょい失礼よね」

ゆみは、ブータ先生に抗議した。かおりは、ブータ先生と仲良さそうに抗議するゆみの声を聞きながら笑っていた。

「まあ、心が荒んでいるっていうのは撤回してやろう」

ブータ先生は、ゆみに言った。

「ともかく、この学校でおいらのことが見えるのは君ら2人だけなんだから。その辺のところは、ちゃんと理解してもらわんとな」

「理解?」

「そうじゃ。理解じゃ」

ブータ先生は、2人に言った。

「ほら、古くは魔法使いサリーとかアラレちゃんとか、最近ではプリキュアだって皆、ヒロインはちゃんと秘密は守っておるだろう」

「ふーん。ブータ先生って秘密なんだ」

ゆみは、ブータ先生のことを見つめながらつぶやいた。

下校につづく

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