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ブタの救世主

「ゆみ、俺のことをそんなに見つめるなよ」

白いブタは、話すぬいぐるみに驚いて見つめてしまっていたゆみに言った。

「そりゃさ、俺はけっこうイケメンだからさ。お前が惚れるのもわかるけどな」

「そうじゃない」

ゆみは、思わず白いブタに突っ込んでいた。

「なんで、あたしにだけ、あなたが見えるの?」

ゆみは、白いブタに質問した。

「その訳を知りたいか?」

白いブタは、ゆみの顔をおもしろそうに見ながら聞いてきた。

「まあ、別にそれほど知りたい訳でもないけど・・なんとなく、あたしにしか見えていないって聞くと気になるじゃない」

「それは、俺がお前の救世主だからさ」

白いブタは、ゆみに答えた。

「救世主?」

「そうさ、救世主。ゆみって、生まれたときからロクな目にあってないだろ?」

「そんなこともないけど・・」

ゆみは、白いブタに反論した。

「いや、気づいてないのかな。お前さん、生まれてすぐ病弱で、ずっと病院に入院してばかりいただろう。そのせいで、姉は幼稚園とかに通園してたのに、お前さんはずっと他の子が幼稚園に行っている間、ずっと独りぼっちだっただろう」

「まあ、それは・・」

ゆみは、白いブタに頷いた。

「やっと小学校に通えたかと思ったら、いつもお姉ちゃんと一緒でないと、一人で学校にも通えないだろう」

「それは、病気があるから、一人で通って、途中で倒れちゃうといけないからって」

「やっと通えた小学校だって、3年間しか通わせてもらえなかっただろう」

「それは、お勉強が出来るからって飛び級で進学させてもらえたの」

「そのせいで、小学校でせっかく出来たお友達とも別れることになってしまっただろう」

「でも、中等部でゆり子お姉ちゃんとかいっぱいお友達できたよ。それにお姉ちゃんと同じクラスになれたし」

ゆみは、白いブタに言った。

「お友達?それは本当にお友達か?ゆり子も、他の中等部のクラスメートたちも皆、お前よりずっと年上の・・、言ってみればおばちゃんたちばかりじゃないか」

「お、おばちゃんって・・」

「これから、周りが年上のクラスメートばかりになって、お前さんにはトラブルが結構多く降りかかってくるじゃよ」

「そうなの?」

「ああ、そうだ。残念だけどな」

白いブタは、そう断言して、ゆみの前で大きく頷いてみせた。

「それでな、救世主である俺がお前の前に現れたってわけなんだ」

白いブタは、ゆみに言った。

「へえ」

「俺が来たからには安心していいぞ。お前のこれからの中等部の学園生活はバラ色の未来、青春で溢れることになる!」

白いブタは、大げさにぬいぐるみの短い手を振りながら力説してみせた。

「そうなんだ。ドラえもんみたいなものかな?」

「失礼な!そんな変な青いネコ型ロボットと俺のことを一緒にせんでくれ」

白いブタは、ゆみに怒ってみせた。

「ふーん」

ゆみは、半信半疑で白いブタのことを眺めていた。

「あ、もしかしてだけど、クレヨンしんちゃんのブリブリザエモンみたいなの?なんか助けてくれる度に、あたしからお小遣い巻き上げようとしてる?」

ゆみは、白いブタに聞いた。

「だから失礼な奴だな。俺は、そんな程度の低い救世主とはぜんぜん違う。お前さんが幸せになればそれが嬉しいだけじゃ。お小遣いなんてセコいこと要求したりしないわ」

白いブタは、ゆみに言った。

「そうか。まあ、お小遣い請求されても、あたし、お母さんからお小遣いもらってないから上げられないしね」

ゆみは、言った。

「お小遣いもらってないのか?」

「うん」

「なんて不幸な。では、まずはそこからじゃな」

「そこからって?」

「中学生になったんだからな。お小遣いぐらい渡しなさいと、お前さんのお母さんに交渉してやろう」

「余計なことしないでいいから。あたし、別にお小遣いなんて欲しくないし。ただでさえ、病気のせいで普通の子より病院代とか余計にお金の掛かる子なんだから、あたしはお小遣いなんてもらわなくても良いの」

ゆみは、白いブタに言った。

「なんて心の優しい子なんじゃ」

白いブタは、ぬいぐるみの短い手を思いきり伸ばして、ゆみの頭の上を撫でようとしているのだが、手が短くて、ゆみの頭の上まで届かないので、ゆみの目の前の空中を手でぐるぐるしているだけだった。

その姿を見て、可愛いぬいぐるみと思ったゆみは、思わず白いブタのことを抱きしめてあげていた。

ブタの同居人につづく

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