ゆみと、お母さんと、おばさん、それにおばさんの息子ジョー君も並んで、職員室を出ると、中等部の校舎を目指して歩いていた。
「一緒に行くのは良いんだけど、ゆみちゃんって俺と同じクラスなの?」
ジョー君は、自分の母親に聞いた。
「ゆみちゃんは、何組なの?」
おばさんは、お母さんとゆみの方を向いて訪ねた。
「ええっと、ゆみは何組だったんだっけ?」
お母さんは、ゆみの方を向いて聞いた。ゆみも、自分が何組なのかよく覚えていなかったので、首を斜めに傾けてみせた。
「まあ、大丈夫だよ。どうせ、7年生は4組までの4クラスしかないから、教室に行ってみれば、4つのうちのどれかだよ」
「まあ、そうね」
おばさんは、息子のジョーに言われて納得した。
ゆみたちは、中等部の校舎の中に入ると、入り口のロッカースペースを抜けて、奥にある階段を上がっていく。階段の脇には、トイレがあった。
「あ、ゆみちゃん。階段の横にトイレあったわよ。これから通うのにトイレの場所は覚えておいたほうがいいわよ」
お母さんが、ゆみに言った。
「あ、そっちは男子トイレ。女子トイレは階段の左を抜けて、ちょうど階段の真下辺りにあるよ」
階段を上がりながら、ジョーが教えてくれた。
「7年が2階で、8年が3階、9年が4階だから」
ジョーは、ゆみたちに説明しながら、階段を2階まで上がると、2階の一番手前の教室を覗きこんだ。
「あ、小汀。あのさ、ゆみちゃんってお前のクラスかな?」
ジョーは、覗きこんだ教室の中に、知り合いの男子の姿を見つけたらしく声をかけた。
「だれだよ、ゆみちゃんって?」
突然、ジョーに聞かれた小汀と呼ばれた少年は、逆にジョーに聞き返した。
「知らないのか、知らなければ別にいいよ」
ジョーは、小汀と別れて、その隣りの教室を覗きこむ。
「ゆみ!あんた、何やってるのよ?どこに行ってたのよ?」
ゆみは、一番奥の教室の方から廊下を歩いてきたお姉ちゃんに声をかけられた。
「え、なに、祥恵の知り合い?」
「あ、ジョー。ジョーがゆみのこと連れてきてくれたの?」
お姉ちゃんは、ジョーに話しかけた。
「なんか自分のクラスがわからなくなちゃったんだってさ」
「それで、ジョーが連れてきてくれたの?ありがとう」
「祥恵の知り合いだったんだ?」
「うん。私の妹」
お姉ちゃんは、ゆみの頭をポンポン叩きながら、ジョーに答えた。
「で、ゆみちゃんのクラスはわかってるの?」
「私たちと同じ1組だって」
「なんだ、俺と同じクラスだったんだ」
ジョーは、祥恵に言った。
「お姉ちゃんと一緒なら、後は1人でも大丈夫ね」
お母さんは、ゆみに言った。
「やだ、お母さんも一緒にいてよ」
ゆみが、お母さんにお願いした。
「せっかくだから、おばさんもジョーの、息子の授業を受けている姿も見てみたいし、廊下から教室の中を見学させてもらいませんか」
ジョー君のおばさんが、ゆみに助け船を出して、お母さんに言ってくれた。
「そう、そうですね」
おばさんに誘われて、ゆみのお母さんも一緒に、廊下の一番奥の1組の教室の前までついてきてくれた。
「お母さんは、教室の中まで入れないから、ここで見ているから、ゆみはお姉ちゃんと教室の中に行きなさい」
お母さんとジョー君のおばさんは、教室のすぐ外の廊下で待機となった。ゆみは、お母さんの手を離して、お姉ちゃんと教室の中に入る。ジョー君も一緒に教室の中に入ったが、教室の真ん中辺りで止まって、そこの席に腰掛けた。お姉ちゃんは、さらに教室の前のほうの席に移動していく。
「一緒に来ないの?」
ゆみは、ジョー君に聞いた。
「俺は斉藤ジョー。さ行だから席はここなの」
ジョー君が答えた。
「ゆみちゃんは今井だろう。いは、あ行だからもっとずっと前」
ゆみは、教室の前に移動していくお姉ちゃんの後を追っていく。
「ゆみの席はこっち」
お姉ちゃんは、窓際の一番前から3番目の席にゆみを座らせた。お姉ちゃんは今井祥恵で、ゆみは今井ゆみだから、「ゆ」は「さ」より後なので、お姉ちゃんより一つ後ろの右側の席が、ゆみの席に指定されていた。
ラーメン先生につづく