「そういうわけだからさ、ちょっと一緒に手伝ってもらうぞ」
竜は、ゆみに言った。
「何を?」
「まあ、いいから。ちょっとついて来いよ」
竜は、ゆみにそう言ってから、ほかの子たちに合図すると、ほかの子たちと一緒に建物と建物の間にある道を進んでいった。
ゆみは、皆のあとにはついていかずに、その場で立ち止まっていた。
「ほら、誰かに見つかるとヤバいんだから早く来いよ」
竜が戻ってきて、ゆみのことを引っ張った。
「あたしは、別に行かないから。車に戻るから」
ゆみは、竜の腕を振り払って、戻ろうと反転した。
「ここまで来ておいて、今さら、そんなこと言うなよ。人に見つかるから、とっとと黙ってついてこい」
竜は、ゆみの腕をつかんでグイグイと引っ張った。さすが、男の子だけあって、本気で引っ張られると、力が強い。ゆみは、黙ってついていくしかなかった。
「なんなのよ」
それでも、ゆみは、竜に連れていかれながらも、一言だけ文句を言っていた。
「よし、今日は、あの店が良さそうだな」
「おお」
竜たちは、建物の間をすり抜けると、一軒のお店の前に立っていた。中華料理のお店のようだ。店内からは料理のにおいがプンプンしていた。
「めちゃ、都合いいじゃん。店主が誰もいないよ」
皆から、あゆみと呼ばれていた女の子が、店内を見渡してから言った。
「ここにするか!」
「おお!」
竜が皆に聞くと、子どもたちは皆、周りに聞こえないように小声で叫んだ。
そして、竜たちはお店の中に入っていった。竜たちがいったい何をする気なのか気になったので、ゆみも店内に入ってみる。
竜たちは、店内の座席には座らずに、そのまま調理場の中に入ってしまった。
「肉あるぞ」
「あ、野菜とかもあるから、栄養取れそうじゃない」
子どもたちは皆、調理場に置いてある食材を見て興奮していた。そして、その見つけた食材を次々とそれぞれが持参してきたバックパックの中に放り込みはじめた。
ゆみは、子どもたちが自分のバッグに食材を入れ始めたのをポカンと眺めていた。しかし、さすがに、これは黙っているわけにはいかない。
「ちょっと、何をやっているのよ!」
ゆみは、竜に注意した。
「うるさい!黙って見ていろ!」
逆に竜が、ゆみに怒鳴ってきた。
と、その大声に店の奥にいた店主が気づいて、店内に出てきた。
「こらー!お前ら、何をしているんだ」
店主は、竜たちに大声で叫ぶと、追いかけてきた。
「やばい、逃げるぞ!」
竜は、ほかの子どもたち皆に叫ぶと、子どもたちは、一斉にバックパックの蓋を閉じ、背中に背負って店の外へと走り始めた。
「ほら、おまえもグズグズしてんなよ!」
竜も、自分のバックパックの蓋を閉じ、背中に背負ってから、ゆみの手をつかむと、一緒に店の外へと走り始めた。
店主も、慌てて自分の靴を履くと、店の外まで追いかけてきた。
「え、ちょっと」
ゆみは、竜に手を引っ張られながら、店主の方を振り向いて、店主のことを気にしていた。店主は、さすがに大人だ。けっこう早いスピードで追いかけてくる。
「後ろなんか気にするな!ともかく前を向いて走れ!」
竜は、後ろを気にしているゆみに叫びながら、走って逃げていた。
リーダー誕生につづく