今井ゆみ X IMAIYUMI

多摩美術大学 絵画科日本画専攻 卒業。美大卒業後、広告イベント会社、看板、印刷会社などで勤務しながらMacによるデザイン技術を習得。現在、日本画出身の異色デザイナーとして、日本画家、グラフィック&WEBデザイナーなど多方面でアーティスト活動中。

4 帰国

「ゆみ。次の授業は理科室だよ、一緒に行こう!」

ゆみは、初めての学校、中学校生活をすごく楽しく過ごしていた。

お母さんに提案されて、すぐ近所の公立中学校には通わず、車で20分ぐらいの私立中学校に通ってよかった。本来、ゆみの年齢は小学校1年生だった。周りにいる同級生たちよりは7年も年下だ。なのに、同級生たちはみな優しくて、ゆみのことを自分たちと同じ年齢の同級生の友人として扱ってくれていた。

ゆみが中学校に通って、最初にできた同級生のお友達は、シャロルという女の子だった。シャロルと仲良くなったら、シャロルを通してほかの同級生の女の子たちとも仲良くなれた。シャロルの次に仲良くなったのは、ゆみのちょうど目の前の席に座っているマイケルという男の子だった。

毎日、大好きなお母さんに車で送り迎えしてもらって、中学校に通学していた。朝、大好きなお母さんの運転する車で、大好きな中学校に通えて、学校では大好きなお友達たちと勉強したり、遊んだりして、夕方、放課後には大好きなお母さんが車で迎えに来て、お母さんと車に乗って家に帰る、すごく幸せな毎日だった。

ゆみは、この中学校生活がすごく気に入っていたので、ずっとこのまま、この中学校に通い続けたかった。

「これだけ体力が回復してくれば、もう大丈夫ですよ。いつでも飛行機に搭乗して日本まで帰国できます」

診察の際に、母は担当医師からそう告げられた。

「え、いやだ。中学校はこのまま通って、卒業してから日本に行く」

ゆみは、母から日本に帰国、お父さんやお姉ちゃんの待っているところに帰れると聞かされたときも、そうお母さんに訴えた。

「ゆみ。お父さんに会いたくないの?お姉ちゃんに会いたくないの?」

ゆみは、お母さんにそう聞かれたとき返事に困ってしまっていた。いつもパソコンを通してでしか会えていないお父さんとお姉ちゃんには会いたかった。

「お友達は日本の中学校でもたくさんできるわよ」

「日本でもいいお友達いっぱいできるから」

お母さんとお婆ちゃんは、ゆみに優しく言った。

「ゆみならば頭いいんだし。日本でも、どこの国に行ってもうまくやっていけるさ。学校でもいいお友達すぐ作れるから」

お爺ちゃんは、ゆみに言った。

ゆみは、9月に入学したフィールドストーンロワースクールをたった半年で、日本の中学校へと転校することとなった。転校の話を学校に伝えると、クラスの皆は、ゆみのために送別会まで開いてくれた。

「ゆみ、バイバイ!」

クラスでも大の仲良しだったシャロルは、ゆみが帰国するとき、ケネディ空港までお見送りにも来てくれて、帰国の飛行機に乗る直前までずっと、ゆみと一緒にいてくれた。

ゆみとお母さんの見送りに空港まで来てくれたのは、シャロル以外に、お婆ちゃんとお爺ちゃんもいた。

「今は日本に帰国するけど、夏休みとかはいつでもお婆ちゃんのところに戻ってきていいんだからね」

お婆ちゃんは、ゆみに言った。ゆみが、お母さんの方を振り向くと、お母さんも夏休みとかには、また一緒にニューヨークに戻ってきましょうと頷いてくれた。そしたら、お婆ちゃんやお爺ちゃんだけでなく、シャロルともまたニューヨークで再会できるのだ。

「お父さんが空港まで迎えに来ているよ」

ゆみがシャロルやお婆ちゃんたちと別れて、日本行きの飛行機で旅立つと、飛行機の中でお母さんが、ゆみに伝えた。ゆみは、日本の空港で初めてパソコンを通さずに、自分の父親と出会えるのだった。

「おかえり」

「ただいま」

ゆみとお母さんは、日本の空港に迎えに来ていたお父さんとお姉ちゃんに、笑顔で返事した。

「ゆみ、ちゃんと日本語しゃべれてよかったな」

お父さんは、空港から自宅まで車を運転しながら、ゆみに言った。

「ずっとアメリカにいたままで、日本に帰ってこないから日本語しゃべれないんじゃないかと思って心配したよ」

「そんなわけないじゃん」

ゆみは、お父さんに答えた。

「学校とか外では英語だったかもしれないけど、お家の中では、お母さんとも、お婆ちゃん、お爺ちゃんともちゃんと日本語で話していたものね」

お母さんが言った。

「おやすみなさい」

ゆみは、東松原の自宅でパジャマに着替えると、お母さんたちに挨拶してベッドに入った。ゆみの就寝時間は、アメリカにいる頃からいつも夜の9時だった。小さい頃から夜の9時を過ぎてから寝ることは一度もなかった。生まれつき体力が弱かったので、しっかり睡眠をとることは必須だったのだ。

「日本に帰国したけど、ゆみはどこの学校に通わせようかしらね」

お母さんは、お父さんやお姉ちゃんに相談した。

「ゆみがいく学校は、祥恵と同じ明星学園でもうしっかり入学手続きしてあるよ」

お父さんは、お母さんに報告した。

「あら、そうなの」

「ああ、小学校ではなく中学校の入学でよいんだろう?」

「ええ、ゆみは飛び級してますから」

明星学園は、武蔵野に在る私立の学校だ。京王井の頭線の井の頭公園駅から徒歩20分ぐらいのところに在って、母がニューヨークに里帰りする前に、姉の祥恵が通う学校として見つけた学校だった。

明星学園は、小等部と中等部が同じ敷地内に在って、高等部だけが少し離れた敷地に在った。アメリカナイズされた自由な風土の学園で、小等部の1年生から2年生、3年生とつづき6年生、中等部の1年を7年生と呼び、8年、9年とつづき、そのまま高等部も10年から12年生まであって卒業となる学園だった。

祥恵は、その明星学園の小等部1年生からずっと通学していた。

ゆみも、父親の機転で姉と同じ明星学園の中等部に通学できるように入学手続きが既に完了していた。

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