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お姉ちゃんの救出

「ゆみ、ゆみ・・」

ゆみは、誰かに呼ばれたような感じがした。

「だあれ?」

「あらら、しばらく会っていないと思ってたら、お姉ちゃんの声も忘れてしまったの?」

「お姉ちゃん?本当にお姉ちゃんなの?」

ゆみは、地下の下水道の中の道を歩いているときだった。

英雄の丘から太助のバイクに乗って、宇宙戦士訓練学校まで戻ってきた。

「ねえ、本当にここでいいの?」

「うん」

「もう夜も遅いし、おうちまで送るよ」

太助は、学校の前の道でバイクから降りるゆみに言った。

「レディのお部屋に来るつもり?」

「いや、別に、そういうわけじゃないけど。それに、ゆみちゃん家は、お父さんとお母さんが一緒なんでしょう。一人暮らしじゃないんだから」

太助は、ゆみのことをバイクで家まで送ってあげようかと声をかけてきた。

「大丈夫。それじゃ、明日。卒業式でね」

そう言って、ゆみは太助と別れた。

太助がバイクに乗って、自分の家に帰っていくのを見届けると、ゆみは近くにあったマンホールの蓋をこじ開けて、そこから下水の中に入った。

下水の通学路を通って、2年間この宇宙戦士訓練学校に通学したのだ。それも、いよいよ明日は卒業式。明日で、この学校ともお別れだ。

ゆみは、下水道の中を、お母さんたちの待つコンテナの家がある貧民街に向かって、歩いていた。

「お姉ちゃん・・」

ゆみは、お姉ちゃんの声がした空間に声をかけた。

「お姉ちゃん、どこにいるの?」

「冥王星・・」

「冥王星?それじゃ、本当にお姉ちゃんは、冥王星の悲劇で、ロケットに乗って冥王星に避難したの?」

「そう・・」

「冥王星ってどんなところなの?食べるものとかちゃんとあるの?お姉ちゃん、独りぼっちなの?」

ゆみは、お姉ちゃんの声が聞こえる空間に矢継ぎ早に質問した。

「ひとりじゃないわ。一緒に避難したときの仲間が何人かいるから、それで寂しくなく、今までここで暮らせてきたのかもしれない」

「食べるものは?」

「クレーターの中に洞穴を掘って暮らしているの。ここのクレーターには、砂漠のオアシスみたいなところがあって、そこだけは水と植物が生えているの。その水と植物を食べて、なんとか今のところは生きている」

お姉ちゃんは、ゆみに答えた。

「でもね、そろそろオアシスの植物も、水も底をつきそう。地球からの救援のロケットが来るの待っているんだけど、地球の皆に忘れられちゃったのかな?ぜんぜん救援のロケットが来ないから、このままだと飢え死にも近いかも・・」

「お姉ちゃん、あたし、どうしたら良い?どうやったら、お姉ちゃんを冥王星から地球に連れ戻せるかな?」

ゆみは、お姉ちゃんの声がする空間に聞いた。しかし、お姉ちゃんからの返事は何も無かった。

「お姉ちゃん!お姉ちゃん!」

ゆみは、返事が無いので、何度も呼んでみた。そのゆみの声は、下水の中を反響しているだけだった。

「お姉ちゃんの声って、あたしの空耳かな?」

ゆみは、真っ暗な下水道の中に自分1人しかいないことに気づいた。

「でも、お姉ちゃんって、もしかしたら本当に冥王星に閉じ込められてしまっているのではないかしら?」

ゆみは、ハッと気づいて背中に背負っている自分のバックパックから用紙を取り出した。それは、きょう学校で先生からもらった明日の宇宙戦艦ヤマトのテストセーリングのスケジュール表だった。

「冥王星、冥王星・・」

ゆみは、そのスケジュール表の中に冥王星という言葉があることに気づいた。

宇宙戦艦ヤマトは、明日のテストセーリングで、地球を出発したら、まず月へ向かい、そこから冥王星の側にある小惑星帯に向かう。小惑星帯では、小惑星を敵に見立てて、坂本たち新人コスモタイガー隊の新人研修をやることになっていた。小惑星帯での新人研修を終えると、そのまま地球への帰還となり、太助たち新人エンジニア班による宇宙戦艦ヤマトの波動エンジン研修で地球へ帰ってくることになっていた。

全行程は、約2週間だった。

「この日程ならば、明日のテストセーリングに乗っていたとしても、大学の春休み期間中には、地球に戻ってこれる。大学の入学式の日までに十分に戻ってこれるじゃない」

ゆみは、スケジュール表を眺めながら、考えていた。

テストセーリングにつづく

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