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プロローグ

今井ゆみは、東京の井の頭線沿線、東松原駅前の商店街を通り抜けた先にある「今井デンタルクリニック」で産まれた。産まれたとき、とっても難産で、姉とお産婆さんに連れられ、救急車で大きな病院まで緊急搬送された、らしい。

らしい、というのは、そのとき私はお母さんのお腹の中にいて、どういう状況だったのかを全く知らなかった。

その後、お母さんのお腹の中から出てきた私は、しばらく未熟児室で過ごすことになった。お姉ちゃんとお母さん、お父さんは、しばらくの間は生まれたばかりの私の姿を未熟児室の窓の外から眺めるしかなかったらしい。

お父さんは、今井デンタルクリニックの院長、慶應大学医学部卒の歯医者さんだった。お母さんも、お父さんと同じ慶応大学医学部を卒業していて、医師の免許は持ってはいたのだが、今井デンタルクリニックでは、治療には携わらずに経理の仕事だけ担当していた。お姉ちゃんは当時5歳だった。

生まれて数週間が過ぎた。

やっと私は、医師から未熟児室を出る許可がもらえて、お母さんの腕の中に抱かれて病院から退院し、東松原の自宅に戻った。戻ったといっても、生まれたばかりの私にとっては、初めて訪れる場所だった。自宅は一軒家で、入り口表側には、お父さんの病院である「今井デンタルクリニック」が所在し、その奥に2階建ての今井家の自宅があった。

ゆみの家につづく