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大統領機

「うわ、久しぶりの下水の中だな」

竜は、マンホールを下水の中に降りながら、言った。

「下水って、こんなに臭かったんだね」

あゆみも、当時は自分たちも貧民で毎日同じ臭い服を着ていたので気づかなかったが、下水が臭いものだということを改めて実感していた。

「早くしろよ」

「ちょっと待ってよ。あたし、スカートを履いているんだから」

ゆみは、スカートでマンホールの梯子を下りながら、下から催促してくる竜に、言い返していた。

「なんで、そんなわざわざ動きづらい服装を着ているんだよ」

「だって仕方ないでしょう。お姉ちゃんがスカートを履いてこいって言うんだもん」

ゆみは、竜に言った。

「祥恵さん、なんで、ゆみちゃんにスカート履いてくるように言ったんだろうね?」

あゆみが疑問に思っていた。

下水道の中の道を、犬のメロディを先頭に皆は歩いて行く。下水が流れる脇の道なので、道幅はそんなに広くはない。メロディの後は、竜を先頭に少年盗賊団の男の子たち、あゆみたち、女の子たちに、ゆみ、そしてお母さん、お父さんと一列になって続いていく。猫たちは、ゆみが肩からぶら下げているバッグの中に入っている。

皆は、しばらく歩くと、省庁の真下までたどり着いてしまった。

「だいたい、この上が省庁だけど」

竜が、後ろの列にいるゆみに声をかけた。

「大統領の官邸はどこらへん?」

「もう少し右の方。だけど、そこまで下水は繋がっていないから、ここのマンホールから上に上がった方が良いかも」

竜は、ゆみに返事した。

「じゃあ、ここから上がりましょう」

ゆみが言うと、竜はマンホールに取り付けられた梯子を上がろうとした。

「待って!あたしが先に上がる。上の地面には、宇宙人たちがいるかもしれないから」

そう言って、ゆみは竜のいる先頭に移動して、梯子に足をかけて上がり始めた。その後を竜が上がっていき、ほかの子たちも順番に梯子を上がっていく。

「ゆみって、ピンク色のけっこう可愛い猫のパンツ履いているんだな」

ゆみのすぐ下を上がっていた竜が、真上のゆみのスカートの中を覗きながらつぶやいた。

「ええ、エッチ!何を見ているのよ!上見ないでよ」

ゆみは、下にいる竜に向かって叫んだ。

「だって、仕方ないだろう。梯子を登っているんだから」

「上見ないで、上りなさいよ!」

ゆみに言われて、正面の梯子を見ながら、手探りで上に上がっていく竜だった。

マンホールの蓋を開けて、地上に出る。

地上には、宇宙人はどこにもいなかった。祥恵は、宇宙人がゆみたちのことを狙っていると言っていたのに、拍子抜けするぐらいに宇宙人は誰もいなかった。

「なんだ、誰もいないじゃない」

ゆみたちは、地上の道を大統領官邸前のお庭まで余裕で歩いてきてしまった。そこのお庭には、真っ白の大きな大統領専用機が停まっていた。

「ぜんぜん危険なところなんか無いじゃん」

竜たちも、誰もいない静かな大統領のお庭で安心しきっておしゃべりしていた。

「とりあえず大統領専用機に乗ろう」

ゆみは、皆を引き連れて、大統領専用機の扉を開いて、機内に入った。

「俺たち大統領じゃないけど、これに乗ってしまっても良いのかよ?」

竜たちも、おしゃべりしながら機内に乗りこんだ。機内は、薄暗かった。飛行機の壁に取り付けられている窓から、夕刻の明かりが入ってきて、辛うじて機内の様子がわかる程度だった。

「中に誰もいないよ」

あゆみも、誰もいない機内をキョロキョロしながら言った。

「この飛行機じゃないんじゃないの?」

窓から外の庭を眺めてみるが、ほかに飛行機は停まっていない。と、飛行機の先頭付近、コクピットの扉が開いて、中からヤマト航海長の島大介が顔を出した。

「あれ、君たちが到着一番か?」

島大介は、ゆみたちに声をかけた。

「はい。これでヤマトに行くんですか?」

前回の旅で顔見知りのゆみが、島大介に返事した。

「そうだよ。ゆみちゃん、久しぶりだね。ずいぶんと港では活躍したみたいじゃないか」

島大介は、ゆみに言った。ゆみは、祥恵には褒めてもらえなかったのに島大介に褒めてもらえたので、少し照れていた。

「おお!やっぱりスカートで来たんだ」

島大介は、ゆみがスカートを履いているのを見て答えた。

「うん。お姉ちゃんが履いてこいって言ったの」

「ああ、知ってる。祥ちゃんから聞いているよ。また、ゆみちゃんがヤマトに乗ったときに、突拍子もない行動に出るといけないからって、少しでも動きづらいスカートを履かせて、ここに来させるんだって言っていたよ」

「ええ?」

ゆみは、なぜ祥恵がスカートで来いって言ったのかわからなかったけど、島大介からその理由を聞いて驚いた。

「へえ、そういうことで祥恵さんって、ゆみちゃんにスカート履かせたんだ」

あゆみが、祥恵のアイデアにクスリと微笑んでいた。

「確かに、その服の方が、ゆみちゃんは少しは女の子っぽくなれるかもな」

「もう、お姉ちゃんったら」

島大介にまで言われてしまって、ゆみは、この場にいない祥恵に文句を言っていた。

「お姉ちゃんは、この船に乗らないの?」

「皆、今ここに向かって来ているところだよ。何しろ、宇宙人に見つからないように、こっちに向かっているから時間が掛かっているみたいだね」

島大介は言った。やっぱり、省庁の中には、宇宙人たちがいっぱいいるみたいだった。

長官の死につづく

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