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貧民街の生活

「うっ・・」

お母さんに抱かれていたゆみが、目を覚ました。

「ゆみちゃん、起きたの?」

「うん」

ゆみは、お母さんに返事した。

「ゆみちゃん。あなたの言うとおりだったわね。健康診断なんかじゃなかったのね」

お母さんは、目を覚ましたゆみに言った。

「でしょう!で、ここはどこなの?」

ゆみは、周りを見渡して言った。確か、地下シェルターのマーケットの建物の中で、へんな注射をされたはずだった。

「地上よ。正確には、地上の貧民街という地域の中だけど」

お母さんは、ゆみに眠っている間のことを説明した。

「さて、とりあえず今晩、皆が寝れるところを探しましょう」

取り残された貧民たちの中から男性たちが、貧民街の中を散策しはじめた。

「おーい!こっちのコンテナは使えそうだ」

コンテナの中を物色していた男性が、皆に向かって叫んだ。皆は、その男性の周りに集まってきて、コンテナの中を覗く。使い終わった古いコンテナなのだろう。数台のコンテナが二段ずつ積み重なって並べられていた。

「ここは住めるかもしれないぞ」

中を覗いていた男性が、皆に言った。コンテナは、二段積みで20個ずつ並んでいた。

「1家族1コンテナで、この中で暮らそうか」

皆は、それぞれの家族毎に別れて、コンテナの中に入った。二段目のコンテナには、捨てられていた脚立を拾ってきて、立てかけて男性の数が多い一家が中に入った。

「ゆみちゃん、こっちよ」

お父さんも、1個のコンテナの中に入った。お母さんは、ゆみを連れて、お父さんの後からコンテナの中に入る。

「あなたたちも、ここで暮らしましょう」

お母さんは、地下シェルターの車の中で一緒に暮らしていた少年盗賊団の女の子たちにも声をかけた。ほかの少年盗賊団の子どもたちも、地下シェルターで同乗してもらっていた家族のところに振り分けられて、一緒にコンテナの中に入っていた。

「何にも無い」

コンテナの中に入って、ゆみと少年盗賊団の女の子たちはつぶやいた。

「明日、明るくなったら表のゴミ貯めの中から、まだ使えそうな家具とか拾ってきて、家の中を充実させていきましょう」

お母さんは、子どもたちに言った。お母さんは、もうこのコンテナの中に住むつもりでいるらしかった。

「ああ、明日明るくなったら、使えそうな家具を拾ってこよう。今夜は、とりあえずバッグの中の食料を分けあって食べて寝よう」

お父さんも言った。

 

次の日の朝、コンテナの中で眠っている皆は、大きな拡声器の音で目を覚ました。

「貧民の皆さん、これから皆さんの食料を配布します!」

拡声器は、繰り返し叫んでいた。

コンテナの中で一晩を過ごした皆は、拡声器の声で起きて、コンテナの外に出てみる。そこには、大きなダンプトラックが1台停まっていた。

「それでは、貧民の皆さんに食料を配布します。食料は、早いもの勝ちです。早く拾って持ち帰って下さい」

ダンプトラックの拡声器が言うと、トラックの荷台が上空に上がって、荷台に載っていた食料が皆、地面に落ちて散らばった。

「さあ、食料は早いもの勝ちです。早く取らないと無くなりますよ」

ダンプの拡声器は、貧民たちに向かって叫んでいた。地面に落ちた食料は、特にラップとか梱包をされているわけではない。食品廃棄物のような食料が地面に散らばっていた。

「どうする?」

「あんなもの食べられないよ」

地面に落ちて泥まみれになった食品廃棄物を眺めながら、皆は口々に言った。

「どうしましたか?食品の配給は一日一回。ダンプトラックで配給されるだけです。これを逃すと、次の日まで何も食べられませんよ」

ダンプの拡声器は、貧民の皆に向かって応答した。

「食べるもの無くては生きていけない」

1人の貧民が、地面にばらまかれた食料を拾い始めた。1人が拾い出すと、それを合図に他の貧民たちも、地面に散らばった食料を拾い始めた。中には、地面の食料を巡って、取りあいを始める貧民たちもいた。

「わー!わー!いいぞ!いいぞ」

貧民街の壁の向こう、表の金網から、こちらを眺めていた人たちが、貧民が地面に落ちた食料を奪い合う姿を見て、大きな歓声をあげて喜んでいた。

「おまえたちは待っていなさい」

お父さんは、お母さんやゆみ、少年盗賊団の女の子たちに言うと、自分も地面に落ちた食料のところに行き、落ちている食料を拾い始めた。

「あなた・・」

お母さんは、お父さんのことを止めようとしたが、

「拾ってこなければ、生きていけないだろう」

お父さんは、そう言って拾いに行ってしまった。

ゆみの決断につづく

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