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「もう夕方だよ」

ゆみたちが、ほら穴を掘ったり、花壇を植えたりしていると、もう時間は夕方近くになっていた。

「急がないと、食料盗りに行けなくなちゃうよ」

「そうだな。今日は、バカゆみに付き合って一日じゅう時間を無駄に過ごしたからな」

竜は言うと、皆に食料の調達に行くぞと声をかけた。

「今日はね、食料を盗りにはいかないから」

皆が慌てて出かけようとしている中、ゆみだけは、慌てずに掘りあがったほら穴の中の広い空間の真ん中に掘りを作って、そこで火を焚いて食事の準備を始めた。

「え、盗りにいかないの?」

「うん。昨日、盗ってきた分がまだ残っているでしょう」

ゆみは、子どもたちに言った。

昨日の夜、草むらの中で食事を作ったとき皆は、ゆみに言われて、バックパックの中に入ってた食料の半分しか食べていなかったのだった。

「あ、今日は残りの半分を使って、お料理して食べるのか」

子どもたちは、ゆみに言った。ゆみは、その通りと子どもたちに頷いた。

「バカバカしい。毎日、盗って来なかったら、明日盗れるかもわからないんだぞ。ほら、皆行くぞ!」

竜が、子どもたちに言った。

「皆、聞いて。あのお店の人たちだって、あの建物のエリートの人たちだって、地下シェルターの中で限りある食料で生活しているの。それを皆が毎日盗んじゃったら、今度はあの人たちが食べるものが無くなちゃうわよ」

ゆみは、皆に話した。

「それに、毎日なんて盗みに行ったら、向こうのお店だって警戒して、もう盗みに行くことだって出来なくなちゃうわよ」

出かけるために立ち上がっていた子どもたちは、ゆみの話を聞いて、ゆみの側に座り直した。

「ほら、皆行くぞ!お店に警戒されないためにも、一回盗みに入ったお店には、もう二度と行かないようにして、別のお店を狙うようにしているだろう」

「そんなことをしていたら、いつの間にか盗みに入れるお店なんてすぐ無くなちゃうわよ。竜のやり方は雑なのよ」

ゆみは、言った。

「ほら、皆、ゆみなんてアホは放っておいて行くぞ!」

竜は、子どもたちを誘った。が、誰も立ち上がるものはいなかった。

「ダイスケ、行くぞ!ナオトも行くぞ!」

誰も立ち上がらないので、竜は、今度は個別に呼びかけ始めた。

「ナオト、どうする?」

ダイスケは、ナオトに聞いた。

「え、俺は・・」

ナオトは、返答に困って、側にいた少しだけ年上のあゆみの顔を見た。

「リーダーのゆみが行かないって言っているんだから、行く必要ないよ」

あゆみは、ゆみの料理の手伝いをしながら答えた。

「そうだよな。ゆみがリーダーなんだものな」

そう言うと、ナオトも座って、あゆみたちの料理の手伝いを始める。それを見た他の子どもたちも皆、ゆみの料理の手伝いを始めた。

「ねえ、お料理の準備に、そんなに人いらないから」

ゆみは、手伝い始めた皆に言った。

「お料理は、あゆみちゃんたちが得意そうだから、後の子たちは、あたしと壁をペタペタしようか」

そう言って、ゆみは、他の子たちと、壁に表で拾ってきた小石を敷き詰めて、壁が崩れて来ないように強度を強くしていた。

「ピーちゃんは、穴を掘るのおもしろいって言っていたよね。だったら、その奥のところを掘って、ここほど広くなくて良いんだけど、もう一つ小さな部屋を作ってくれる」

ゆみが、ピーちゃんに言うと、

「うん、わかった」

ピーちゃんは、穴を掘り始めた。

「竜も、そこで手持ち無沙汰しているのだったら、ピーちゃんのこと手伝ってあげて」

ゆみに言われて、竜もピーちゃんの穴掘りを手伝う。竜以外にも、2、3人の男の子がピーちゃんの穴掘りを手伝っていた。

 

「ご飯、できたよ」

食事の準備ができて、子どもたち皆が、ほら穴の大広間の掘りの周りに集まってくる。

「ええ、ずいぶん掘れたじゃない。もう、これだけあったら大きさは十分よ」

ゆみは、ピーちゃんたちが掘った部屋を覗いて言った。ゆみに褒められて、ピーちゃんは満足そうにしていた。

そして、子どもたちの食事の時間になった。

「あのさ、お前らは本当に、リーダーがゆみなんかで良いのかよ」

竜が、皆に聞いた。皆は、何も言わない。

「こいつ、頼りないぜ。ただのチビ女だぜ」

竜が、ゆみのことを指差して言った。

「ゆみちゃんは、頼りなくないもん。今日だって、一日でこんな立派な屋根付きのお家を作ってくれたし」

あゆみが言うと、皆があゆみの言うことに頷いた。

「あたしは、これからはずっと、ゆみちゃんにリーダーでいてほしい」

「僕も、ゆみちゃんがリーダーが良い。竜は雑だし」

「お前らが、それが良いって言うなら、俺はぜんぜん別に構わないけどさ」

竜は、子どもたち皆が、ゆみを支持しているので仕方なさそうに言った。

「じゃ、ゆみちゃんリーダーに乾杯!」

あゆみが手に持っていたお味噌汁の入った器を高くあげて言った。他の子たちも、お味噌汁の器で乾杯した。

「そしたら、明日はゆみリーダー、ううん、ゆみお姉ちゃんが、新しい盗み方について教えてあげるね」

ゆみは、皆に言った。

「それじゃ、ゆみお姉ちゃんは、もう帰るけど、今夜は皆はここでちゃんとお泊まりできるよね?」

ゆみが皆に聞くと、皆は大きく頷いた。

「ゆみ姉ちゃんは、ごはんは食べていかないの?」

「ごめんね。ゆみ姉ちゃんには、車にゆみ姉ちゃんのパパとママがいるからね」

ゆみは、皆に言った。

「よし、じゃあ、竜兄ちゃんが代わりに皆とごはん食べていってあげるよ」

竜が皆と一緒に座ろうとすると、

「あんただって、車におばあちゃんいるだろうが」

ゆみは、竜の耳を引っ張って、一緒に車の停まっている駐車場へと帰った。

その様子を見て、子どもたちは皆、大声で笑っていた。

はじめての盗みにつづく

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