ゆみたちは、東松原駅で電車を降りた。
「皆、急がしそう」
ゆみは、東松原駅前の商店街を右に左に走っていく人々の姿をみて言った。
「さあ、私たちも早くお家に帰ろう」
お姉ちゃんに言われて、ゆみも家に向かって歩き出す。
「ただいま!」
家に入ると、病院の受付には誰もいなかった。病院も、休診で歯科衛生士さんたちも皆、自分の家に帰ってしまったようだった。
「ただいま、お母さんいる?」
お姉ちゃんがリビングルームに入ると、テレビの前にお父さんとお母さんが座っていた。
「あ、お帰り。ゆみは?」
お母さんが振り返って、お姉ちゃんに言った。
「お母さん、ただいま!」
ゆみは、ソファに座っているお母さんに飛びついた。
「お帰り、ゆみちゃん無事だったのね、良かった」
お母さんも、自分の膝の上に飛びついて来たゆみのことを抱きかかえる。
「ねえ、何があったの?」
お姉ちゃんは、真剣な顔でテレビの報道を聞いているお父さんに聞いた。
「宇宙人だよ!宇宙人が攻めてきたんだよ!」
お父さんは、お姉ちゃんに言った。
「宇宙人?」
お姉ちゃんに、ゆみまでもが、お父さんの顔をまじまじと見つめてしまった。
「お前たち、空に飛んでる宇宙船を見ていないのか?」
「宇宙船?」
確かに、とてつもない数の隕石が空が降ってきているのは見た。だけど宇宙船って?
「宇宙人です。宇宙から来たガミラス星人という宇宙人です」
テレビの報道番組も盛んに、宇宙人、宇宙人と騒いでいた。本当にいまテレビでやっている番組は、報道番組だろうか?何かの映画とかドラマ、バラエティ番組では、なかろうか?
「本当に宇宙人なの?」
どうやら何かのバラエティ番組というわけではなく、本当の報道番組、ニュース番組をテレビでは、やっているようだった。
「隕石じゃないの?空からいっぱい降ってきているのって」
お姉ちゃんが、お父さんに聞いた。
「隕石らしい。隕石らしいんだけど、ただの隕石でなくて、ガミラスという星の宇宙人が落としてきた遊星爆弾という隕石らしい。隕石が地上に落ちると爆発して、周りは原子力で汚染されてしまうらしいんだ」
「ええ、だって武蔵野のところにたくさん落ちてたよ」
「そうらしいな、だから武蔵野は火の海で、爆発して原子力、放射能だらけになってしまって大変なことになっているらしいぞ」
お父さんは、テレビの報道番組で言っていたことを伝えた。
「その隕石が、世界じゅうの他の地域にも落ちてきているらしいのよ」
お母さんが言った。
「じゃあ、どうするの?どこかに避難するの?」
「ええ、なんか各主要都市の地下に放射能から守られる巨大なシェルターがあるらしいの。そのシェルターに避難することになるみたいなのよ」
「いつ?」
お姉ちゃんが、お母さんに聞いた。
「わからない」
「わからないから、今こうして、そのシェルターがこの辺だとどこらへんにあって、どうやったら行けるのかを知るために、ニュースを見ているところなんだ」
お父さんは、お姉ちゃんに説明した。
「で、そのガミラスって宇宙人は、なんのために、そんな恐ろしい隕石を地球に落としてくるの?」
「地球征服のためらしい」
お姉ちゃんの質問に、お父さんは答えた。
「何それ?地球征服って、わけわからない」
お姉ちゃんは、まだ会ったこともない宇宙人に腹を立てていた。
「で、これからどうするの?」
ゆみは、お父さんに聞いた。
「ここら辺で一番近い地下シェルターの場所がわかったら、車ですぐにそこへ避難する」
お父さんは返事した。
「いつ、わかるの?」
「いつかは、わからないけど、わかり次第、避難するから、それまで待機してましょう」
お母さんが、ゆみに言った。
「お父さんは、ここでテレビのニュースでシェルターの場所を確認しておくから、お前たちは、お父さんの車ですぐ避難できるように、必要なものをまとめて準備しておきなさい」
お父さんは、家族皆に命令した。
「何が必要なの?」
「それは着替えとかでしょう。あとは食料とか」
お姉ちゃんが答える。
「メロディは?美奈ちゃんは?マリちゃんは?ギズちゃんは?」
ゆみが、お母さんに聞いた。
「もちろん一緒に逃げるわよ。だから、ゆみちゃんは、彼らも一緒にすぐ車に乗れるようにしておきなさいね」
ゆみは、お母さんに言われた。メロディとか美奈ちゃんっていうのは、うちの愛犬と愛猫たちの名前だ。
地下への旅立ちにつづく