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合唱祭

「きょう、お母さんも学校に来る?」

ゆみは、朝食のときにお母さんに聞いた。

「もちろん、行くわよ」

お母さんは、答えた。

「え、マジで?来なくてもいいよ。美和のお母さんだって来ないんだよ。ゆり子のお母さんも仕事があるから来ないんだって。お母さんだって、病院の仕事あるでしょう?」

お母さんの答えを聞いて、そう返事したのは祥恵だった。

「お母さんの病院での仕事は、そんな大した仕事していないし大丈夫よ。陽子ちゃんだって、いてくれているし」

お母さんは、祥恵に言った。陽子ちゃんというのは、今井デンタルクリニックで働いている歯科衛生士の女性だった。歯科衛生士というのは、なぜか皆すぐに辞めてしまう人が多いのだが、陽子ちゃんだけは、もう長いこと今井デンタルクリニックでずっと働いていた。ゆみは、陽子お姉ちゃんと呼んで、いつも受付で経理とか事務の仕事をしている陽子にいろいろ遊んでもらっていた。

「でも、お母さんだって、お母さん担当の患者さんがいるでしょう」

お父さんは歯医者をしていたが、お母さんも実は医師免許は持っていて、お父さんの病院で少しだけ近所に住むおばさんの患者さんたちを受け持っていた。

「お母さんの患者さんたちは、別にお母さんがいなくても、代わりにお父さんが治療できる患者さんばかりだからね」

お母さんは、祥恵に答えた。

「それに祥恵は、お母さんに学校について来られるのが嫌いみたいだけど、いつも言っているけど、お母さんは別に祥恵のことを見に行っているわけではないから。ゆみのことを父兄として見学しているだけだから」

「って言いながら、ゆみの学校に行くってことは、結局同じ学校だから、私の学校に来ていることになるんだけど・・」

祥恵は言った。

「それに、今日はお母さんは車で見に行くから、帰りは、ゆみのことを車に乗せて帰るから、あなたは思い存分部活してきていいわよ」

お母さんは言った。

「やったー!って部活やれるって、私が喜ぶかと思っているかもしれないけど、合唱祭は体育館でやるの。だから、どっちにしても合唱祭の後片付けとかあるから部活はないんだな」

「あら、そうなの。でも、今日の帰りは、ゆみのことを気にしないで、お友達とゆっくり遊んで帰ってくればいいでしょう」

お母さんは、そう言って、祥恵にお財布からお札を出して、渡した。

「え、いいの?それじゃ、帰りに吉祥寺でゆり子とかと夕食を食べてから帰ってきてもいい?」

祥恵が、お母さんに聞くと、お母さんは黙って頷いた。

「やったー!ゆみ、学校に行くよ」

祥恵は、バッグを持って学校に行く準備すると、ゆみに声をかけた。ゆみも、小さなバッグを持つと、祥恵の後を追って家を出た。

「今日って、学校の授業はないんだよね?」

ゆみは、電車の中で祥恵に聞いた。

「無いよ。だって合唱祭だもん。一日じゅう体育館で合唱して終わり」

祥恵は答えたが、身体の弱いゆみは合唱できるわけではないので、ずっと皆の歌うのを見学しているだけだ。ぜんぜん面白くない。

お母さんだって、ゆみのことを見に来ると言っていたが、それだと皆が歌っている姿を見学しているゆみの姿を、お母さんが見学することになってしまう。

「あたしって、見学ってどこでしていればいいの?」

「私たちだって、ずっと1組が歌っているわけではなくて、ほかのクラスとか学年が歌っている間は、前に設けられた席で見学しているのよ」

祥恵は、ゆみに説明した。

「だから、ゆみも、そこで見学していれば良いでしょう」

「ずっと・・」

ゆみが言うと、祥恵は頷いた。

「どうせ見学しているだけなら、お母さんと一緒の席で並んで見学していても良いのかな?」

「ゆみが、それが良いのなら別に良いんじゃないかな」

「うん、そうする!」

ゆみは、祥恵に答えた。祥恵は、ゆみは本当にお母さんが好きだなって思いながら、ゆみの笑顔を眺めていた。

サプライズにつづく

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