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お母さんの恩師

「ねえ、お母さん。お母さんは、人間と動物の両方を診察できるお医者さんがいるなんて知っている?」

ゆみは、コンテナの家の中で、お母さんに質問した。

「知らないわ。でも、もしかしたら、そんなお医者さんもいるのかもしれないわね」

お母さんは、答えた。

「お父さんは知っているぞ。人間と動物の両方を診れるお医者さん」

2人の会話を聞いていたお父さんが、ゆみに言った。

「あなた、知っていらっしゃるの?」

「ああ、俺たちの大学の頃の先生がそうだったじゃないか」

お父さんは、お母さんに言った。お父さんとお母さんは、同じ慶応大学医学部の同級生だった。

「ああ、そういえばそうね。佐渡酒造先生とかいう、ちょっと風変わりの先生」

「そうだ、そうだ。あの偏屈なじいさん先生が、獣医と人間の医者の資格の両方を持っていただろう」

お父さんは、大学時代のことを思い出しながらお母さんに言った。

「え!佐渡酒造・・先生」

ゆみは、お父さんの言った言葉を聞いて、繰り返していた。

「そうだよ。お父さんが大学にいたときに、習っていた先生なんだよ」

お父さんからそう聞いて、ゆみは驚いていた。

「あのね、貧民街の壁のスキマに埋まっているような感じで建っている建物もあるでしょう。あの建物で、その佐渡酒造って先生が動物病院をやっているよ」

ゆみは、昨夜あったことをお父さんたちに話した。

「それ、本当かな?本当に佐渡酒造って医者がいたとしても、お父さんたちの習った佐渡酒造先生と同じ人かな」

お父さんは、ゆみから聞いて半信半疑だった。

 

「ここなの?」

お母さんは、ゆみに聞いた。

「うん。そうだよ、ここに佐渡酒造がいるのよ」

ゆみは、動物病院の建物の前で、お母さんに説明した。

「ごめんください」

お母さんは、ゆみを連れて、動物病院の入り口から中に入ってみた。

「誰もいないわよ」

お母さんは、一緒に中に入ったゆみに言った。

「もしかしたら、夜しかいないのかな?昼間はどっかに行ってしまっているのかも」

ゆみは、ケージの中にいる猫たちの頭をなでながら、お母さんに言った。

「そんな水商売じゃあるまいし、夜間しかやっていない病院なんてないでしょう」

お母さんは、2階に上がる階段の上の方を眺めながら、言った。

「はいはい、お客さんかね?」

2階から佐渡酒造が降りてきた。

「え!佐渡酒造先生!」

降りてきた佐渡酒造の姿を見て、お母さんは叫んだ。

「はて、わしのことをご存知なのかな」

佐渡酒造は、お母さんの姿を眺めながら、首を傾げた。

「あのう、私、今井です・・」

「あ!今井君。大学を卒業と同時に、今井君と結婚した・・」

佐渡酒造も、お母さんのことを思い出したようだった。

「先生、お懐かしゅうございます」

「あ、本当に懐かしいのう。今井君は元気しておったか。その後、結婚はどうだったか、お子さんとか生まれたりしたのかな」

佐渡酒造は、久しぶりに会ったお母さんに、懐かしそうに質問した。

「ええ、子どもは2人授かりまして、こっちは下の娘です」

お母さんは、ゆみのことを佐渡酒造に紹介した。

「ああ、なんと!ゆみ君のお母さんが今井君じゃったのか」

佐渡酒造は、お母さんからゆみを紹介されて驚いていた。

「世間は狭いのう」

佐渡酒造は、自分の分とお母さんの分のお茶も淹れながら、言った。

「ゆみ君にはな、わしがヤマトで出ている間、うちの動物たちが世話になってな。まあ、掛けてくれよ。懐かしい話でもしようじゃないか」

佐渡酒造とお母さんは、ソファに腰掛けると話し始めた。その間、ゆみはケージの動物たちと遊んでいた。

「はあ、それは災難じゃったな」

佐渡酒造は、お母さんから地下シェルターで焼き印を押され、貧民にされた話を聞くと、言った。

「わしも、地球政府のやつらが貧民などとわけのわからない差別階級を作りおったという話は聞いておったが。焼き印とかそんな生々しい話を聞いたのは初めてじゃ」

お茶を飲みながら、佐渡酒造は、お母さんに言った。

「わしも、貧民に関してはなんとかしたいとは思っておる。しかしじゃが、いかんせん、こんな年寄り1人じゃからな。どうしたら、貧民のことを世間に知らせて、廃止させられるのか良い方法が思いつかなくてな」

「そんな、先生のせいではありませんから」

お母さんは、佐渡酒造に答えた。

「いや、わしも腐ってもヤマトの乗組員なんだからな。この地位を利用して、なんとか出来ることがあれば、ぜったいなんとかしてやりたいとは思ってるんだ」

佐渡酒造は、言った。

「佐渡先生って、そんなに偉い地位なの?」

それを聞いて、ゆみは佐渡酒造に質問した。

「まあな」

佐渡酒造は、ゆみの方を向いて、お茶目に威張ってみせた。その後に、

「いや、まあ、そんなに大した地位ではないかもしれんが、何か出来ることがあるのではと思ってな」

と、お母さんの方に向き直ってから言った。

「じゃあ、お願いがあるの」

ゆみは、佐渡酒造に言った。

ゆみのアルバイトにつづく

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