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ぶーた先生

「ゆみちゃん!」

学校の授業が終わると、ゆり子がゆみに声をかけてきた。いつもは、ゆり子は、お姉ちゃんの祥恵に声をかけてきて、2人は美和と3人でおしゃべりしたり、どこかに遊びに行ったりしているので、ゆみは自分に声をかけられたので少しびっくりしていた。

「祥恵。きょうは、ゆみちゃんのことを私が借りるよ」

横の机に座っている祥恵に、ゆり子が声をかけた。

「どうぞどうぞ。なんなら、うちの妹、差し上げましょうか」

祥恵は、冗談まじりにゆり子に答えた。

「いいの?ゆみちゃんのこともらっても・・」

「え?」

一瞬、祥恵は、ゆり子への返答に戸惑っていたが、

「やっぱりだめよ。私の大切な妹だから」

祥恵は、ゆみの頭を撫でながら言った。

「だよね。ゆみちゃん、可愛いもんね。私だって、ゆみちゃんが自分の妹だったとしたら、他の誰にもあげたりぜったいしない」

ゆり子は、祥恵に言った。

「ゆみちゃん、行こう」

祥恵と少し話した後で、ゆり子は、ゆみの手をつないで一緒にクラスルームを後にした。ゆみとゆり子は、中等部の校舎を出ると、学校の正門前まで行き、そこでお母さんたちと出会った。

「お母さん、車じゃないの?」

ゆみは、お母さんの車が駐車場に停まっていないので聞いた。

「ゆり子ちゃん家は、駐車場が周りにないから、電車で来たのよ」

お母さんは、ゆみに答えた。

「こんにちは、ゆみちゃん」

「こんにちは!」

ゆり子のお母さんに声をかけられて、ゆみも大きな声で挨拶した。4人は、学校を出ると井の頭公園の中を突っ切って、吉祥寺駅に向かって歩き出した。

「ゆり子お姉ちゃんの家って吉祥寺なの?」

「うん。吉祥寺駅から歩いて15分ぐらいのところなのよ」

ゆり子は、ゆみと一緒に歩きながら答えた。

井の頭公園の中を突っ切ると、吉祥寺の丸井百貨店の前に出る。その脇を通り抜けると、井の頭線と中央線の吉祥寺駅だ。いつもお姉ちゃんと吉祥寺駅から家に帰るときは、ここから井の頭線に乗って東松原駅まで帰っているのだが、今日はゆり子たちの後について、吉祥寺駅の構内を通り抜けた。

駅の構内を通り抜けると、反対側のバスターミナルに出た。ゆみは、この場所にはあまり来たことが無かった。バスターミナルの前のサンロードという駅前の商店街をまっすぐ抜けていくと、静かな住宅街になった。

「急に静かになちゃった」

ゆみは、初めて来る場所に周りをきょろきょろしながら歩いていた。辺りはずっと小さな一軒家が建ち並んでいる住宅街で、ところどころ木々があって、そこに止まっている小鳥が囀っていた。

建ち並んでいる一軒家は、どの家も小さな建物ばかりで、その小さな建物のどれもが土地いっぱいに建っているので、建物は満員電車の中のようにぎゅうぎゅうに建っていた。

そんな建物と建物の小さな隙間にときどき木々が立っている場所があって、広くはないのだが、そこの場所だけ自然でホッとさせられる空間だった。

「あっ」

ゆみは、その木の根元の穴からピンク色の鼻を突き出している白いブタを見つけて、思わず叫んでしまっていた。

「どうしたの?」

ゆり子が、ゆみに聞いた。

「真っ白なブタさん・・」

ゆみは、木の根元にいる白いブタを指さしながら、ゆり子に答えた。

「ああ、本当だね。ブタさんみたいな格好をしているね」

ゆり子は、木の根元にあった小石を持ち上げて眺めながら、ゆみに言った。

ゆり子の手にした小石は、確かにブタのような形をしていた。ゆみは、その小石ではなく、木の根元にいた白いブタの方を探したが、もうそこには白いブタの姿は無くなっていた。

「ブタさん、いなくなちゃった・・」

ゆみは、その白いブタが昨夜みた夢の中に出てきた白いブタと同じブタということに気づいていた。

「ほら、あそこが私のお家」

ゆり子は、先のほうに見える家を指さしながら、ゆみに言った。

「え、どこ?」

「ほら、あの先に赤い瓦の屋根の家見えるでしょう?あれが私の家なのよ」

ゆり子は、ゆみに言った。

「え、もしかして、あの赤い煉瓦の2階建てのお家のこと?ほら、今、2階の屋根裏から屋根に白いブタが出てきて、そのまま屋根を伝って、その向こうの窓まで移動して家の中に入っていった家のこと?」

ゆみは、屋根を伝って反対側の窓まで歩いて行き、そこから家の中に入ってしまった白いブタの姿を見つけて指さしながら、ゆり子に尋ねた。

「白いブタ?白いブタって何のことかよくわからないけど、そうそう、あそこの赤い煉瓦の屋根の家のことよ」

ゆり子は、ゆみに答えた。そうして、ゆり子とお母さんたちは、ゆみのことを連れて、その赤い煉瓦の家の中に入った。

「靴、どこでも好きなとこに脱いで置いておいてね」

ゆり子に言われて、ゆみは自分の脱いだ靴を玄関の空いているスペースに置いて家の中に入った。

「今、お茶を入れますから、ゆみちゃんもそこの机のどこでも座っていてね」

ゆり子のお母さんは、ダイニングテーブルの奥の小さなキッチンの中に入っていった。ゆみは、お母さんが腰掛けた椅子のすぐ横の席に腰掛けて、部屋の周りを見渡していた。ゆり子は、2人の腰掛けている向かい側の席に腰掛けた。

ゆり子の腰掛けたうしろには、茶色の食器棚が置かれていた。その食器棚をよじ登って、食器棚の一番上まで上がると、そこの場所に足を投げ出して腰掛けて、ゆみの方に向かってそこから手を振っている白いブタの姿があった。

「あ、出た!ブタさん」

ゆみは、その白いブタを指さしながら言った。

「ブタさん?」

ゆり子は、ゆみの反応をみて、後ろを振り返って、ゆみが指さす食器棚の上の方を不思議そうに眺めていた。

ゆみは、ゆり子のその様子を見て、もしかして白いブタって自分にしか見えていないのかと自信が無くなっていた。

ゆり子の部屋につづく

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