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野口先生

「どうしようかな?」

ゆみは、放課後に何をしようか迷っていた。

今日は、放課後に祥恵は女子バスケ部があるので、体育館に行ってしまっていた。ここ最近、いつもは木工室に行って、卒業制作の木工を作っているのだが、今日は木工の先生がお休みの日なのだった。麻子たちは、最近はソーラン節の稽古で体育館に行ってしまっている。体育館が、バスケ部などの部活で塞がっているときは、吉祥寺のほうにある市民体育館が使えるので、そっちに行って稽古をしていた。

「馬宮先生のところにでも行こうかな」

ゆみは、中等部の校舎を出ると、1人音楽室の方に向かって歩いていた。その通りすがりに小等部の女の子たちが図書室の本を抱えて歩いているのと遭遇した。

「あ、久しぶりに、あたしも図書室に行こうかな」

ゆみは、ここ最近、ずっと図書室に行っていなかった。特に8年、9年生になって4組になってからは、麻子とかまゆみとか4組のお友だちがいっぱい増えたために、彼女たちとよく一緒に行動するようになり、図書室はごぶさたになっていた。

「そうよ。久しぶりに図書室に行ってみよう」

ゆみは、小等部の女の子たちが本を抱えて図書室に向かう後にくっついて、職員棟2階の図書室に向かっていた。

「返却は、そこに置いておいてね」

少し前に到着していた小等部の女の子たちは、図書室の先生に言われ、持ってきた本を返却棚に返していた。

「まり、返し終わったら、どうする?」

「あっちで本を読もうよ」

女の子たちは、奥の絵本が置いてあるコーナーに移動して本を選んでいた。

「あら、ゆみちゃん。すごく久しぶりじゃない」

ゆみが図書室に入ると、図書室の野口先生が声をかけてきた。

「野口先生、お久しぶりです」

「お久しぶりね。昔は、毎日のように図書室に来ていたのに、最近はぜんぜん来ないからどうしたのかな?って思っていたのよ」

野口先生は、ゆみに言った。

「なんか、8年生になってから4組にクラス替えになちゃって、そしたら仲の良いお友だちが出来たから、その子たちと遊ぶようになちゃったから図書室に来ている時間が無くなちゃったの」

「仲の良いお友だちできたの?」

「うん」

「それは良かったわ。ゆみちゃん、飛び級で小等部から中等部になちゃったでしょう。いきなり中学生の子たちの中で大丈夫かなって心配していたのよ」

野口先生は、安心したように、ゆみの側にやって来ると、ゆみの頭を撫でた。

「え」

野口先生は、ゆみの頭を撫でていた手を止めて、その手でゆみの身長を比べ始めた。

「ゆみちゃん、背が伸びたね」

「え、伸びた?」

ゆみは、いつも祥恵にもお母さんにも小さい、小さい言われたことしかないので、少し嬉しそうに、野口先生の掲げた手の下に顔を入れて背伸びしてみながら答えた。

「うん、伸びたよ。ずいぶん伸びた」

野口先生は、言ってくれた。

「そうかな」

ゆみは、図書室の窓ガラスに写った自分の姿を見ながら、自分の頭の上に手を置いて言った。

「きょうは、何か本を探しにきたの?」

「ううん」

ゆみは、首を横に振った。

「お姉ちゃんがバスケ部だから、それが終わるまで待っているのに時間があるの。それで久しぶりに来てみたの」

「そう」

野口先生は、図書室の受付の中で返却されてきた本の汚れを取ったり、整理をしながら答えた。

「時間があるんだったら、お話しようか」

「うん」

ゆみは、野口先生の座っている席の前に座った。

「先生のお仕事って、本の管理することでしょう?」

「そうよ」

「大友先生とかのようにクラスの担任とかないの?」

「今はないかな。昔は、クラスの担任も持っていたのよ」

「そうなんだ。その頃は、じゃ、職員会議とかも出ていたの?」

「うん、出ていたわよ」

野口先生は、答えた。

「結婚してから、自分の子どもが出来ちゃったのよ。それからは子どもの世話があるから、図書室の先生だけ担当にしてもらったのよ」

「うちのお母さんと同じだ」

「え、ゆみちゃんのお母さんって図書室で働いていたっけ?」

「ううん。うちのお母さんも、普段はお父さんの歯医者さんで働いているけど、あたしたち子どものなんかがあるときは、お仕事休んできてくれるの」

「あ、そうか」

野口先生は答えた。

「ゆみちゃんのお母さんも、お父さんも歯医者さんなのね」

「うん」

「先生の家も、私も、ダンナも学校の先生をしているのよ」

「え、先生のダンナさんも学校の先生なの?」

「そうよ。明星学園の高等部で社会、世界史の先生をしているの」

「そうなんだ。高等部か。あたしも来年は中等部を卒業なんだよ」

「あれ、ゆみちゃんって8年じゃなくて9年だったっけ?」

「うん」

ゆみは、野口先生に頷いた。

「そうか。それじゃ、来年は高等部か。それだったら、うちのダンナのクラスになるかもしれないわね」

「うん」

ゆみは頷いた。

「あ、でもわからない。ゆみ、明星の高等部に行けるかどうか。なんか来年から高等部になるためには入試があるんだって。入試に落ちたらいけないから」

「あ、そうね。入試ができるかもって言ってたわね」

野口先生は、ゆみに言った。

「でも大丈夫よ。ゆみちゃんなら入試あっても合格できるわよ」

小汀くんにつづく

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