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不思議な力

「バイバイ・・」

ゆみは、動物たちが乗った宇宙船が飛んでいった空に向かって、手を振った。

手を振り終わると、ゆみは、そのまま地面に倒れてしまった。

「ゆみ!」

お母さんは、車を飛び出して、ゆみのところに飛んでいき、抱きかかえた。

「ゆみ、大丈夫かしら」

お母さんは、気を失っているゆみの体を抱き上げて、車に戻ってきた。ゆみを抱きかかえたまま、お母さんは、車の助手席に乗り込んだ。

「気を失っているだけだろう。しばらくお母さんの膝の上で寝かせといてあげよう」

お父さんは、心配そうなお母さんに言った。

「しかし、ここが動物園だったってことが信じられないぐらい、動物も、植物も、木々も何も無くなっちゃったね」

祥恵は、動物たちのいなくなった動物園を見て、言った。動物園には、動物たちの入っていたケージ小屋とベンチやコンクリートなど無機物しか残っていなかった。

 

ゆみに命じられるまま、ここら近辺の動物や植物を船内に保護した宇宙船は、全機並んで、新宿御苑の上空まで飛んできた。

「開ケルゾ・・」

宇宙船のコクピットの操縦桿は、機械音でつぶやいた。

そういうと、新宿御苑の中央部分、花壇のあった箇所が開きだした。そこが大きな輸送機などが出入りするためのハッチになっているらしく、ハッチがすべて開くと、地下に入るための穴が現れた。

宇宙船は、1台ずつ順番に中に突入した。一番最後に突入する宇宙船は、突入する前に、しっかり新宿御苑に咲いている花壇や木々、小動物たちを回収してから、ハッチの穴に突入した。

勝手に、地下シェルターの輸送機用ハッチを開けられて、慌てたのは、地下シェルターのコントロールルームにいた担当スタッフたちだった。彼らは、慌てて、開いてしまったハッチの蓋をリモートで閉じた。ハッチが閉じたときには、最後の宇宙船が中に突入し終わった後だったので、ちょうど良かった。

宇宙船は、狭いハッチの中を一列に進んでいくと、開けた場所に出た。そこは巨大な地下シェルターの内部で、その天井の辺りにいた。宇宙船が真下を見下ろすと、シェルターの中央には、人間たちがこの中で暮らすための建物が建っていた。その周りには、なにも無く、ただむき出しの土が盛り上がっているだけだった。宇宙船たちは、その土があるだけのところの上空に降りた。そして、オレンジ色の光を土の上に当てると、まず船内にいる植物、木々たちを土の上に降ろした。植物たちは、土の中に根をはって、土しかなく開けただけの場所には、あっという間に森が出来上がった。

今度は、その森の中に、オレンジの光を放ち、動物たちを森の中に降ろした。動物たちは広い森の中で暮らせるのを、嬉しそうにしていた。1隻の宇宙船が、空から森の一部に水を撒くと、そこに川や池が誕生した。魚たちは、そこへ放流された。

宇宙船で連れてきた全ての動物たちが、地下シェルターに誕生した自然の中に降り立つと、宇宙船も空いている森の中に降り立ち、そこに着地した。

「ユミドノ、オオセノトオリ動物、植物ヲ移動シタ・・」

それだけ言うと、宇宙船は、そこで役目を終え、動作を完全にストップした。自分たちを地下シェルターまで運んできてくれた御礼の意味をこめて、植物の木々は、宇宙船の機体に巻きつき、宇宙船の機体は、そこで自然の一部になった。小動物や鳥たちの中には、宇宙船の中に巣を作るものも現れていた。

 

「さて、井の頭公園にも来ましたし、そろそろ新宿に向かってもいいですかね?」

お父さんが言った。

「宜しいんじゃないですか」

お母さんのお膝で気絶しているゆみの代わりに、お母さんが答えた。

「それじゃ、新宿を目指すぞ」

お父さんは、車を発進させた。しかし、時刻は、もう5時を回っていた。しばらく走ると、陽が暮れて、また辺り一面は真っ暗になってしまった。

「また、今夜は、どこかここら辺の家で一泊か」

お父さんが言った。

「仕方ないよね」

祥恵も、お父さんに同意した。結局、井の頭公園に来てしまったために、昨日、下北沢までたどり着いた一行は、今日は吉祥寺、いや西荻窪の少し手前ぐらいのところで一泊することとなった。

「どうする?どこの家にする?」

祥恵は、お父さんに聞いた。さすがに、この辺の人たちは皆、もう新宿に避難してしまったようで、どこの家も人が暮らしている様子は、全くなく真っ暗だった。

「どこの家も、真っ暗で人が住んでいないようだから、どの家でも選び放題だよ」

「そうね、ゆみちゃん寝ちゃってるから、一番近くて移動しやすい家がいいわ」

「それじゃ、目の前の茶色い家かな」

お母さんに言われて、祥恵は、すぐ目の前にある茶色い家を指さした。

「どうせ、一泊、朝明るくなるまでの間、泊めさせてもらうだけだから、どこの家でもいいよ。じゃ、茶色い家にしようか」

お父さん、祥恵に、ゆみを抱っこしたお母さんは、車を降りて、茶色い家に入った。ゆみが気絶しているので、猫たちは祥恵に抱かれている。犬のメロディは、自分の足で歩いて、皆についていく。

不思議な力の正体につづく

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