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リーダー誕生

「ああ、疲れたな。ようやく逃げきったな」

「あの店主、デブのくせにしつこいこと、しつこいこと」

「いい加減あきらめろよって感じだったな」

子どもたちは、ハアハア息を切らしながら、思い思いに話していた。

ゆみも、竜に引っ張られて、生まれてから一度も走ったことないってぐらいの猛スピードで走らされて、少し息が上がっていた。生まれた時から病弱で、学校の体育はいつも見学だったゆみだが、宇宙船を乗っ取って、動物たちを助けたとき以来、身体の方はずいぶんと元気になったようで、こんなに走ったのに、喘息も出ず、少し息が上がったぐらいで収まっていた。

「それにしても見て!このお肉の厚さ」

「これだけあったら、今日は久しぶりにお腹いっぱい食べられるね」

子どもたちは、それぞれのバックパックの中からお店から盗んできた食料を出しながら、嬉しそうに話していた。

「ほら、これは、お前の分の取り分だ」

竜は、自分のバックパックの中から盗んできた肉と野菜を取り出すと、ゆみの前に放り投げた。

「何よ、これ。あたしは、人から盗んできたものなんかいらないよ」

ゆみは、竜がよこしてきた食料には手も触れずに、竜に答えた。

「え、ゆみちゃん。いらないの?」

「それじゃ、あたしもらちゃおうかな」

ほかの子たちが、地面に転がっている竜が投げた食料を見て言った。

「おお、お嬢様は、そんな食料いらないらしいから、お前たちもらちゃってもいいぞ」

竜が言うと、ほかの子たちは皆、竜の投げた食料を拾い出して、地面にあった食料は、あっという間になくなってしまった。

「ね、あんたたちは、いつもこんなことしているの?」

ゆみは、竜に聞いた。

「ああ」

「人のものを盗んだりしたらいけないんだよ」

ゆみは、竜に言った。

「それじゃ、配給だってもらえないのに、どうやって食っていたら良いんだよ?」

「配給もらっているでしょう、毎朝」

ゆみは、竜に言った。

「え? ああ、俺は確かに毎朝マーケットで俺と年老いたばあちゃんの分の2人分だけ配給は、もらえているさ。でも、こいつらは、誰も配給なんてもらえないんだぞ」

竜は、子どもたちのことを見渡しながら、ゆみに言った。

子どもたちは、逃げてきた背の高い草が生えている草っ原の中にある、草がまるく刈り込まれている場所の中央に、焚き木を集めてきて、火を焚いて、盗んできた食料の料理を始めていた。

「俺はさ、夜は、ばあちゃんの車の中で寝ているけど、こいつらは夜寝るのも、ここの草っ原の中で皆、肩を寄せ合って寝ているんだからな」

ゆみは、竜に言われて、焚き火で料理を始めている子どもたちの様子を見た。草むらの中をよく見ると、ボロボロの毛布が何枚か畳んであった。きっと、夜は、あの毛布に包まって、ここで寝ているのだろう。

「孤児院みたいなところってないの?」

「あるわけないだろう。ここは限られた食料しか備蓄もない避難用の地下シェルターの中なんだぞ」

竜は、ゆみに答えた。

「本当に、ここの草むらの中で、いつも寝ているの?」

ゆみは、そばにいた女の子に尋ねた。その女の子は黙って、ゆみに頷いた。

「着替えとかどうしているの?男の子たちと一緒に着替えてるの?」

「着替えなんかないもの。お洋服は、今着ているこれしか持っていないし」

ゆみに聞かれて、女の子は答えた。

「あっちの方に池があるの。お天気のいい日は、池でお風呂にするんだけど、その時は男の子と女の子で別れて、順番に入っているの」

「そうなんだ」

ゆみは、その女の子の頭を優しく撫でてあげた。

 

「な、わかっただろう。そういうことだ」

竜は、何も言えずに立っていたゆみに言った。

「でも・・」

ゆみは、何か必死で言い返そうとしていた。

「それにしても・・。そうよ!竜のやり方は、とっても雑!頭の悪い子にしか考えつかない、バカみたいな無能な子のやり方よ」

ゆみは、必死で頭に思いついたことを、やっと口に出した。

「なんだよ!その言い方。俺がバカみたいな言い方じゃん」

竜が、ゆみに抗議した。

「え、でも確かに竜はバカだけどね」

あゆみって名前の女の子が言うと、ほかの子どもたちも、うんうんと頷いていた。

「なんだよ、お前ら」

竜は、ちょっとふて腐れていた。

「そんなに、俺がバカだって言うなら、俺じゃなくゆみにでもリーダーになってもらえばいいじゃん」

竜は、こう言えば子どもたちが、やっぱりリーダーは竜が良いって、頭を下げてきてくれると思って発言したのだったが、子どもたちは黙ったまま、ゆみの顔を覗きこんで、ゆみの様子を眺めているだけだった。

ゆみは、自分のことを見つめる皆の視線を感じて、しばらく黙って、皆の方を見回していた。

「わかった!あたしが皆のリーダーになってあげる!」

ゆみは、突然、子どもたちに向かって叫んだ。

お試しリーダーにつづく

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