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おそいお出かけ

「誰もいないじゃん」

祥恵は、お父さんと一緒に東松原の駅前までやって来ていた。

「本当だな。全く誰もいないな」

お父さんも言った。さっき、祥恵が、ゆみと一緒に学校から帰ってきた時は、かなりの人たちがあっちへこっちへ大忙しに走り回っていたのだが。

「皆、どこに行ってしまったんだろう?」

祥恵たちは、東松原駅の構内に入った。

「もう、電車はみんな終わってしまいましたよ」

駅の中を片付けていた駅員さんが、祥恵たちに声をかけてくれた。

「もう終わったというのは?」

お父さんが、駅員に聞いた。

「最後の電車が、さっきもう出発してしまいました」

「もう電車は終わりですか?」

「ええ、ここら辺は、まもなく例の隕石が降ってくるという情報ですから、私も大急ぎで車で移動しなければならないんです。お2人も早く地下にお逃げになられた方が良いですよ」

駅員は、2人にアドバイスした。

「地下シェルターというのが、どこにあるのかがわからなくて」

お父さんは、駅員さんに質問した。

「ああ、新宿ですよ。新宿の地下街ありますよね?あそこの地下街に、地下シェルターに降りるエレベーターがあるんです。皆さん、そこに殺到していますので、今は新宿駅が大混雑らしいですよ」

「そうなんですか。新宿の地下街に行けば良いのですね?」

「ええ。ただ、もう電車は皆、終わってしまっていますので、このまま線路の上を新宿まで歩いていくか、お車をお持ちなら、車で新宿まで行くしかありません」

「わかりました。ありがとうございます」

お父さんは、駅員さんにお礼を言うと、祥恵と一緒に急いで家へ戻っていった。

 

「ただいま、地下シェルターの場所がわかったぞ」

お父さんは、お母さんに報告する。

「そう、それじゃ新宿に行くのね」

「ああ」

お父さんは、自分の車のエンジンを掛けたり、周りを確認して出発の準備をする。

「おい、これはなんだよ?」

お父さんは、ぬいぐるみがたくさん車の中に乗っているのを見つけて、お母さんに聞いた。

「ゆみのぬいぐるみですよ」

お母さんは、お父さんに返事した。

「それは、わかっているけど。車の中のスペースは、限られているんだぞ。こんなもの一緒に持って行く気かよ」

「ゆみちゃんにとっては、大事なものですからね。それに、ここに置いていちゃったら、爆弾が落ちてきたりしたら、かわいそうじゃない」

お母さんは、お父さんに言った。

「いや、スペース、場所の問題があるだろ」

「ちゃんと車の中を整理して、置けばスペースぐらいありますよ」

お母さんは、そう言うと、車の後ろの中に入り、持ってきた荷物を順番に整理し始めた。

「お母さん、ここで車内が散らからないように、きれいに整理してるから、祥恵も、ゆみと一緒に荷物を家の中から持ってきてくれる」

「うん、わかった」

祥恵は、家の中に入ると、車で一緒に持っていく荷物を仕分けて、車に運ぶ。

「とりあえず食料は、出来るだけ多く持っていった方が良いぞ」

お父さんは、祥恵に指示する。祥恵は、キッチンに行き、冷蔵庫や戸棚から缶詰めなど食料品を取り出す。

ゆみは、ぬいぐるみのお引越しが終わって、今は、2階から自分とお姉ちゃんのお洋服を箱に詰めて、車のところに持ってきている。

「ゆみちゃん、自分のお洋服は、しっかりスカートだけは持ってこないようにしているでしょう」

ゆみは、持ってきたお洋服の中身を、お母さんに見られて言われた。

「うん。だって、車の中は狭いから、全部は持っていけないでしょう?」

「まあ、そうだけど。それで、お姉ちゃんのお洋服には、しっかりスカートも入っているのね」

「だって、そのスカート、お姉ちゃんよく着ているじゃん」

ゆみは、お母さんに答えた。

「ほら、見てごらん」

お母さんは、自分が持ち出してきたバッグの中を、ゆみに見せながら言った。そこには、ゆみのスカートが入っていた。

「あ、お母さん」

「お母さん、ちゃんと、一番きれいなゆみのスカートだけは持ってきたのよ」

お母さんは、笑いながら、ゆみに話した。さすが、お母さんは主婦だけあって、バッグに入れて持ち出してきた荷物を、今は、車の中、後ろのトランクのところにダンボールでしっかり簡易的な吊りクローゼットを作って、そこに洋服を収納していた。

ほかにも、車の座席の真下など、いたるところに収納スペースが作られており、食料品や生活品がきれいに収納されていた。これで、避難中に当面、車の中で暮らさなければならなくなったとしても、しばらくは快適に暮らせそうだった。

暗い夜道につづく

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