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地下への旅立ち

「美奈ちゃん、地下にお引越しするんだってさ」

ゆみは、猫の美奈ちゃんとおしゃべりしていた。

「なに、おしゃべりしているのよ!」

お姉ちゃんは、忙しそうにお父さんの車に荷物を運びながら、猫と遊んでいるゆみに言った。

「美奈ちゃんにね、地下にお引越しするんだよって教えてあげてたの」

ゆみは、お姉ちゃんに言った。

 

「祥恵!祥恵!」

家の中から玄関に出てきたお父さんが、お姉ちゃんのことを呼んだ。

「テレビ見てても、地下シェルターがどこに行ったらあるのか、ぜんぜん言わないから、ちょっと東松原の駅まで行って、状況を確認しに行ってこよう」

お父さんは、玄関先で靴を履いていた。

「私も行くの?」

「なんだ、お父さん一人に行かせる気か」

お父さんが、お姉ちゃんに言うと、

「別に一緒に行っても良いけどさ、これ、荷物を車に運ばなければならないでしょう」

祥恵は、お父さんに言った。

「荷物を積むのは、お母さんとゆみに任せておけよ」

「わかった。じゃあ、一緒に行こう」

お母さんが、ちょうど荷物を持って出てきた。

「ああ、お母さん。俺たちは、ちょっと東松原の駅まで行って、状況確認してくるから、ゆみと2人で荷物の準備していてくれるか」

「わかりました」

お母さんが返事すると、お父さんは祥恵を連れて、出かけていった。

「ゆみ、お父さんたちがお出かけしちゃったから、お母さんと荷物の準備を手伝ってくれる」

「はあ~い」

ゆみは、お母さんについて2階に上がった。

「何を運んだらいいの?」

ゆみは、お母さんに聞いた。

「そうね。まずは、ゆみちゃんとかが着る着替えかな」

お母さんは、ゆみたちの部屋に入ると、2人のタンスから下着やいろいろ着替えを取り出した。タンスから取り出した着替えをたたんで、バッグに詰めていた。

「ゆみちゃんも何か持っていくものがあったら、持って行きなさい」

ゆみは、お母さんに言われて、自分の部屋の中を見回した。

「お母さん、もう、ここの家には戻ってこないの?」

「そうね。たぶん戻ってこれないかもね」

お母さんは言った。

「うーん。戻ってこれたとしても、もし、その前に宇宙人が、ここら辺に爆弾を落としたりしていたら、お家は何も無くなってしまうかもしれないわね」

「そうか。じゃあ、皆持っていかないと無くなちゃうよね」

「そうね」

「お父さんの車って大きいけど、お父さんの車だけで全部乗り切れるかな」

ゆみは、首を傾げた。お父さんの車は、ベンツのジープタイプでけっこうゴツくてデカい車だ。

「お家の中のものを全部持っていくことは無理ね。だから、大きなものはあきらめるしかないわね」

「そうか」

ゆみは、改めて自分のお部屋の中を見回した。

「ベッドとか勉強机は持って行けないよね」

「そうね。だからベッドは、車の座席で寝るしかないわね。お勉強も、車の座席の前に付いている折りたたみのミニデスクを開いて勉強するしかないわね」

お母さんに言われた。

「とりあえず机は無理だから、教科書とかお勉強道具だけにする」

「そうね。それがいいわ。勉強道具は、このバッグの端っこに入れてあげるから、持っていらしゃい」

ゆみは、お母さんの詰めているバッグの脇に、自分の教科書とかノートを置いた。

「あ、あと、この子たち!この子たちは、全員連れていってあげないと、爆弾で殺されちゃうから」

ゆみは、ゆみのタンスの上に一列に並んでいる動物のぬいぐるみを指さして言った。ゆみのタンスの上には、動物好きのゆみのために、お誕生日とクリスマスに1匹ずつ買ってくれた動物のぬいぐるみがたくさん並んでいた。

「そうね。それじゃ、ゆみちゃんは、とりあえずその子たちを1匹ずつ車に運んであげてちょうだい」

お母さんに言われて、赤い小さなトラック型の台車にぬいぐるみたちを入れて、表のお父さんの車まで、ゆみは運んだ。

「良かったわ。まだ、ゆみの実年齢が8歳で。もし、飛び級じゃなく実際に中学生だったら13歳の倍で26匹もぬいぐるみを連れていかなければならないところだったわ」

お母さんは、ぬいぐるみを運んでいくゆみの後ろ姿を見ながら、ほっとしていた。26匹もぬいぐるみを、狭い車の中なんかに入れたら、お父さんがカンカンになって怒ったことだろうな。

おそいお出かけにつづく

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