校長先生の長い挨拶が終わり、教頭先生の、校長先生の長い挨拶に負けず劣れずな、長い挨拶も終わって、入学式は無事終わった。
「これで入学式は終わりです。後ろの席の父兄の皆さんから順番に体育館を退出ください。新入生の皆さんは、この後は、担任の先生からホームルームがありますので、それぞれの教室に戻ってください」
入学式が終わると、体育館じゅうに案内の放送が流れていた。
「ゆみ、式が終わったら、新入生は教室に戻って、ホームルームですってよ」
お母さんは、自分の横にべったりくっついているゆみに言った。
「お母さんは?」
「お母さんは、新入生じゃないもの。このまま帰りますよ」
「お母さんも一緒に教室に行こう」
ゆみは、お母さんにお願いした。
「こんにちは、お姉ちゃんかお兄ちゃんの入学式を見に来たのかな?」
ゆみとお母さんが話していると、その背後から、式の間、お母さんの隣りに腰掛けていたおばさんが声をかけてきた。
「お姉ちゃんも入学式なんだけど、ゆみちゃんも入学式で、新入生の当事者なのよね」
お母さんが、隣りにいた声をかけてきたおばさんに返事した。
「あら、お嬢さんも中学の7年生なの?」
隣りのおばさんは、少し驚いたように、ゆみに声をかけた。
「背は小ちゃいけど、今日から中学生ですって答えなきゃ」
お母さんに言われて、ゆみは、おばさんの方に黙って頷いた。
「父兄席に、お母さんと一緒に座っているから、てっきりお姉ちゃんの入学式を見に来たのかと思っていたわ」
「違うのよね。本当は4年生になるはずだったんだけど、飛び級で中学生になれちゃったのよね」
「あら、すごい!それじゃ、勉強ができるんだ!頭いいのね」
お母さんが、おばさんに説明すると、おばさんは、ゆみの頭を撫でてほめてくれた。
「お母さんは、前の席に行きなさいって言ったのに、甘えん坊でお母さんの側から離れなかったのよね」
お母さんは、隣りのおばさんとすっかり仲良くなって話し込んでいる。
「甘えん坊なんじゃなくて、中学生のお兄さん、お姉さんたち皆、身体が大きいからちょっと怖くなっちゃったのよね」
おばさんが、ゆみのことを弁護してくれた。
「おばさんとお母さんで、教室の途中まで一緒に行ってあげるから、そしたらその先は1人でも行けるわよね」
ゆみは、嬉しそうにおばさんに頷いた。そして、ゆみと、お母さんと、おばさんの3人で体育館を出ると、中等部の校舎がある方に向かって歩き出した。
「ちょっと待って」
職員室の前を通ったとき、職員室の中に誰か知り合いを見つけて、おばさんが、ゆみたち2人を呼び止めた。
「ジョー、ジョー」
おばさんは、職員室のコピー機で何かをコピーしている中学生に声をかけた。声をかけられた中学生は、おばさんの方へ振り向いた。
「きょうからやっぱり中学の新入生で、うちの息子です」
おばさんは、ゆみたち2人に自分の息子を紹介した。その中学生は、髪がボブのように丸く伸びていて、その伸びた髪は天然パーマでチリチリな感じだった。
「ゆみちゃんって言うのよ。彼女すごいんだから、本当は4年生なのに飛び級で、きょうからあなたと同じ同級生になるんですってよ」
おばさんの息子の、その中学生は、ゆみたち2人の方に頭を下げて会釈した。
「あら、お坊ちゃんだったの。お嬢さんかと思ってたわ」
ゆみのお母さんは、その中学生の顔を覗きこんで言った。
「いいのよね。名前はジョーだから、おジョーさんだものね」
おばさんは、ゆみのお母さんに笑って答えていた。
「ねえ、ジョー。ちょうど良かったわ、ゆみちゃんと一緒に教室まで行ってあげてよ」
おばさんは、自分の息子のジョーに指示していた。
お姉ちゃんと同じクラスにつづく