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ブタの同居人

「おいおい、ゆみ。やめろよ」

白いブタは、ゆみに抱き上げられながら、少し恥ずかしそうに照れていた。

「ブタさん、照れることないじゃない」

ゆみは、白いブタの頭を撫でてあげながら答えた。

「いや、照れてるわけじゃ・・。それに、ブタさんではない、ブータ先生じゃ」

「そうか、ブータ先生」

ゆみは、白いブタいやブータ先生に言われて、名前を呼んでみた。

「うむ、ブータ先生だ。なんじゃ、なんか用かな?」

「ううん、別に」

ゆみは、ブータ先生に答えた。

「あれ、ゆみちゃん。そのブタのぬいぐるみ余程気に入ったのね」

1階のお母さんからお菓子とお茶をもらって戻ってきたゆり子が、ゆみに言った。

「え、別にそうじゃないけど・・」

ゆみは、戻ってきたゆり子に、白いブタを抱っこしているところを見られて、慌ててブタを床に置いた。別に気に入ったわけじゃない、ただ、なんかこのブタが不思議な会話をしてくるのだと、ゆり子に言いたかったのだが言わないでいた。

「お母さん、お菓子を出してくれたの。食べよう」

ゆり子は、持ってきたお菓子とお茶を、床に座っているゆみの前に置いた。床に置かれたお菓子は、ちょうどブータ先生の前に置かれていた。

「お、かたじけない。すまんな」

ブータ先生は、お菓子を見て、そう言うとお盆の上に乗ったゆみの方のお菓子を一口でパクリと食べてしまった。

「あ、食べちゃった」

ゆみは、お菓子を食べてしまったブータ先生を見てつぶやいた。

「え、食べちゃったって?」

ゆり子は、ゆみの言葉に反応して、お盆の上のお菓子を見ると、ゆみの方のお皿にあったお菓子がひとつも無くなっていた。

「あら、ゆみちゃん。このお菓子好きだったんだ。じゃ、私の分も食べてもいいよ」

ゆり子は、そう言って自分の方のお皿のお菓子を、ゆみに差し出した。

「え?ううん、あたしが食べたわけじゃなくて、ブータ先生が・・」

「ブータ先生?大丈夫よ、大丈夫。私は、またお母さんにもらうから、これはゆみちゃんが全部食べてしまっていいよ」

ゆり子は、優しくゆみに残りのお菓子をくれた。結局ゆり子には、持ってきたお菓子は、ブータ先生でなく、ゆみが食べたことになってしまっていた。

当のブータ先生は、お腹いっぱいで満足そうに、床の上にあぐらをかいて、床に落ちていた細いゴミをまるで爪楊枝のようにして、口の中をシーハーしていた。

「ぬいぐるみの口の中にも、食べたものがくっついたりするのかな?」

ゆみは、爪楊枝でシーハーしているブータ先生を不思議そうに見ていた。

その後、ゆり子がオセロゲームとかいくつか持っているボードゲームをクローゼットから出してきて、2人はゲームで遊んでいた。

「ゆみ、帰るわよ」

1階からお母さんの呼ぶ声がした。

「はーい」

ゆみは、ゆり子と一緒に部屋を出て1階に降りていくと、お母さんは玄関で靴を履いて待っていた。ゆみも、靴を履いてお母さんの横に行った。

「それじゃ、ゆみちゃん。また遊びに来てね。今度は、もう場所もわかるし、お母さんと一緒で無くても1人でも来れるわよね」

ゆり子のお母さんが、ゆみに言ってくれた。

「はい、ありがとうございました」

ゆみは、ゆり子のお母さんに挨拶すると、お母さんと2人で表に出て、家に帰るため駅へ向かって歩き出そうとしていた。

「ゆみちゃん、待って」

そんなゆみの後を、ゆり子が追ってきて、手に持っているブータ先生のぬいぐるみを手渡した。

「これ、持って帰って可愛がってあげていいよ」

ゆり子は、ブータ先生をゆみに渡しながら言った。

「え、これは、ゆり子お姉ちゃんがお兄ちゃんからお土産にもらった大切なぬいぐるみだから。ゆり子お姉ちゃんが持っていて」

ゆみは。ゆり子に返事した。

「いいの。ゆみちゃんにあげる」

「え、いいよ。要らない。また今度遊びに来たときまで置いておいてほしい」

「いいから、いいから。ゆみちゃんのお気に入りなんだから、ほら、ゆみちゃんの家で預かっておいてもらえないかな」

ゆり子は、ブータ先生をゆみの手に持たせながら言った。

「でも・・」

ゆみは、ブータ先生をゆり子に返そうとするのだが、ゆり子は受け取ってくれない。

「遠慮しないの。持っていっていいから」

「ほら、せっかくゆり子お姉ちゃんが持っていていいって言ってくれているんだから、お家に持っていきなさい」

お母さんにも言われて、ゆみはブータ先生を手に抱えながら家に帰ることとなった。

別に、ゆみは本当に遠慮していたわけではなかった。ブータ先生を連れ帰ると、おしゃべりはするし、いろいろ面倒なことになりそうな気がしたので、本当にゆり子に返したかったのだが、ゆり子は、ゆみがブータ先生のぬいぐるみを気に入っていると思っているらしく、持ち帰ることになってしまったのだった。

「それじゃ、大切にお預かりします」

ゆみは、ゆり子に言った。

「うん。たまに学校にも持ってきて、ちゃんと大切にしてくれているから確認させてね」

ゆり子は、ゆみに言って、手を振った。

「バイバイ。また明日学校で」

ゆみも、ブータ先生を持っていない方の手で、ゆり子に手を振った後、お母さんと手を繋いで吉祥寺駅に向かって歩き出した。

おやすみ、ブータ先生につづく

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