お母さんは、朝あかるくなると同時に起きて、一泊お世話になったこの白い家のお掃除をしていた。
「おはよう、早いね」
「昨日、お泊まりさせてもらった家だし、きれいに掃除だけはしておいてあげようかと思ってね」
お母さんは、起きてきたお父さんに言った。
「おはようございます」
「ゆみちゃんも起きてきたし、ここだけお掃除したら、朝食の準備しますね」
お母さんは、ゆみのことを撫でてくれながら、言った。
「今日の朝食は、トーストでいいですか?」
お父さんは、黙って頷いた。お母さんは、残っていた部屋の箇所の掃除を終わらせると、キッチンに行って、朝食の準備を始める。
ゆみは、パジャマを着替えると、お風呂場の前の洗面台で歯みがき、顔を洗ってきてから、キッチンに行って、お母さんの朝食の準備を手伝った。
「おはようございます」
まだ眠たそうな目で起きてきたお姉ちゃんが、枕や毛布などを2階の部屋に片づけ、リビングルームのソファを元の配置に戻した。
「朝ごはん、できましたよ」
ダイニングルームから美味しそうな目玉焼きとトーストのにおいがして、お皿に朝食の準備ができている。
「いただきます!」
みなは、朝食の食事の時間になった。
リビングのテレビを付けると、テレビでは、盛んに地上の電気、ライフラインは、本日の夕方までです。お早めに地下のシェルターに避難くださいと告げていた。
「このテレビもおかしいわよね。地下シェルターに避難しろ、避難しろとは言うくせに、実際に、地下シェルターが、この辺だと、どこにあるのかは、言わないのよね」
「ああ」
「なんか、地下シェルターで世界じゅうに、あっちこっちあるみたいよね。ニューヨークとか、ロサンジェルス、ロンドン、パリ、ナイロビ・・」
「そんなにあるの?」
お母さんは、お姉ちゃんに聞いた。
「日本は、東京以外にも、北海道、大阪、福岡とかにあるみたい」
「要するに主要都市のそれぞれの地下に建設したんだろうな」
「地下シェルターの無い町に住んでいる人たちは、車かなんかで一番近いシェルターのところまで移動するのかしらね」
「そうだろうな。だから、ライフラインも長めに有効にしているんだろうな」
朝食が終わって、お母さんは、食器とかを洗って片づけていた。
「そろそろ、新宿に向かおうか」
お母さんの洗いものが一段落する頃に、お父さんが話しかけた。
「ええ、私はいつでも行けますよ」
お母さんは、お父さんに返事した。
「ゆみ、お姉ちゃん、そろそろ出かけますよ」
お母さんは、リビングのお姉ちゃんとゆみに声をかけた。
「ゆみ、寝てる」
テレビを見ていたお姉ちゃんは、ゆみの方を見てから、お母さんに言った。
「あらあら、朝が早かったから眠くなちゃったのかな」
お母さんは、ゆみの寝顔を見ながら笑った。
ゆみは、テレビを見ているお姉ちゃんの横で、うつらうつらしていたら眠ってしまった。そして、不思議な夢を見ていた。
夢では、空から隕石が大量に降ってきたので、学校が休校になり、お姉ちゃんと家に帰るところだった。2人は、吉祥寺駅まで早く到着できるというので、井の頭公園の真ん中、動物園を突っ切っていた。ゆみも、お姉ちゃんも夢の中で、井の頭公園の動物園の中央道を必死で歩いているのだが、ぜんぜん公園から抜け出せずにいた。
いくら公園の中を歩いても、歩いても公園から出れないでいた。井の頭公園の動物園にいる動物たちが、そんなゆみたちに話しかけてくる。
「ゆみちゃん、どこに行くの?地下のシェルターに避難するんかい。いいな、おいらたちも、地下シェルターに避難したいよ」
お姉ちゃんと必死になって井の頭公園の中を突っ切って、吉祥寺駅に行こうとしているゆみのところに、動物園の動物たちが代わる代わるやって来て、ぼくらもシェルターに連れていってよと、呼びかけてくる。
「ゆみちゃん、出かけますよ」
ゆみは、お母さんに体を揺すられて、目を覚ました。白い家のリビングのソファで寝てしまっていたみたいだった。
「さあ、行きましょう」
お母さんに言われて、一緒に白い家を出て、表のお父さんの車のところに向かう。お父さんとお姉ちゃんは、もう既に車で待っていた。
ゆみは、車に向かいながら、周りの景色を見渡すと、住宅街のあっちこっちで緑が茂っている木々が、風に葉っぱを揺らせていた。あの木たちも生きているんだな、もし宇宙人の爆弾が落ちてきたら死んでしまうんだと、頭によぎった。
「お父さん、新宿に行く前に、学校の近くの井の頭公園に行きたい」
ゆみは、車に乗ると、お父さんにお願いした。
井の頭公園につづく