「お、なかなか立派なお料理ができたじゃないか」
お父さんは、その白い家のダイニングテーブルの上に並んだ夕食を見て、言った。
「うん、美味しそうよ」
祥恵も、料理を作ったお母さんとゆみに言った。
「ここの家の冷蔵庫の中に入っていたありあわせの材料で作っただけなんだけどね」
お母さんは、照れていた。
「いや、立派りっぱ。これだけの夕食が食べられれば」
お父さんと祥恵は、食卓の席について、食事をはじめた。ゆみは、この家のキッチンの床下からキャットフードとドッグフードを見つけてきて、それを適当なお椀に入れると、犬のメロディと猫たちにあげた。
「ごはんだよ」
ゆみが、ごはんをあげると犬も、猫たちも美味しそうに食べ始めた。
「動物たちも、いろいろあったからお腹空いたんだろうな」
お父さんは、食べている姿を眺めながら言った。
「普段、うちで食べているドッグフードよりも高級なドッグフードだから喜んでいるのかもしれないよ」
「ああ、そうかもしれないな」
祥恵は、お父さんに言った。お父さんは、祥恵の言葉に笑っていた。
「祥恵、ごはんを食べ終わったら2階の部屋を見てこよう」
「はい」
祥恵とお父さんは、夕食を終えると2階を確認しに行った。
「お母さん、あたし、今夜は、ここで皆一緒に寝たいな」
ゆみは、食事の後の洗い物をしながら、お母さんに言った。
「ここってどこのこと?」
「あそこ!そこのリビングルームのソファを並べて、そこに毛布とか敷いて、ベッドにして皆で寝るの!」
ゆみは、お母さんに言った。
「なんか2階とか行くの怖いよ。この部屋で鍵をかけて、皆でくっついて寝たい」
「そうね。確かに、その方が安心かもしれないわね。誰が入ってくるかもわからないものね」
お母さんも、ゆみのアイデアに賛成してくれた。
「おい、上の階は3部屋ある。ベッドの数も、俺たち4人全員が寝れるだけの数ちゃんと揃っているよ」
お父さんは、2階の確認から戻ってくると、お母さんに言った。
「そのことなんだけど、ゆみがリビングのソファで皆で一緒に寝たいっていうのよ」
「え?」
「私も、ゆみの言う通り、ここで皆で寝る方が安全かなって思うんだけど。バラバラに寝ると、なんかあった時にバラバラになちゃうでしょう」
「なるほど」
お父さんは、リビングルームに行くと、大きなソファを選んでそれらを並べて、家族4人が並んで眠れるベッドスペースを作った。
「祥恵。テレビ見てないで、上の階に行って枕とか毛布を4人分持ってきてくれ」
「わかった」
祥恵は、2階に上がっていき、毛布や枕を持って降りてきた。お父さんは、祥恵の持ってきたシーツをソファに敷くと、毛布や枕を4人分並べて、皆が眠れるようにした。
「今日は、早寝しましょう」
お母さんが言って、皆はお父さんのベッドメイクしてくれたソファに並んで寝転がった。祥恵は、ベッドに寝転びながらテレビのニュースを見ていた。
「新宿の地下街は、大混雑しているみたいね」
祥恵は、テレビのニュースで聞いたことを、お母さんに言った。テレビのニュースでは、皆が地下シェルターに避難するために集まってきていて、一台しかない地下シェルターへ降りるエレベーターには人が集まってきていて順番待ちで大混乱しているようだった。
「ね、もしかしたら、今夜は、ここで寝る方が正解かもね」
祥恵は、言った。
「どうして、そう思うの?」
「だって、新宿にたどり着いていたとしても、混雑の中で新宿地下街で夜を過ごすことになっていただろうから、ここの方がぐっすり寝れるんじゃない」
「そうかもしれないわね」
「さあ、もう寝ましょう」
お母さんは、リモコンでテレビのスイッチを消すと、部屋を暗くした。
「怖いから、真っ暗にしないで」
ゆみがお願いしたので、お母さんは小さな小ランプだけ点けておいてくれた。
「おやすみなさい」
皆は、4人並んで横になって眠りについた。
予定変更につづく