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おやすみ、ブータ先生

「ああ、今日は疲れたよ」

祥恵は、夕食を食べた後、リビングのソファに寝転びながら言った。

「疲れたって、どうかしたのか?なんかあったのか?」

お父さんは、心配そうに祥恵に聞いた。

「え、別に何もないよ。今日はさ、お母さんがゆみのことを連れて帰ってくれたから、ずっと最後までバスケ部が出来たから、それで身体を動かしすぎで疲れただけ」

祥恵は、お父さんに答えた。

「で、何。ゆみは、このぬいぐるみをゆり子にもらったの?」

祥恵は、リビングのソファの上に転がっている白いブタのぬいぐるみを乱暴に持ち上げて、バスケットボールを投げるような持ち方しながら、ゆみに言った。

「そんな持ち方すると、その子、噛みつくかもよ」

「え、噛むわけないでしょう。ぬいぐるみが」

祥恵は、ぬいぐるみが噛みつくとか聞いて、ゆみのことを笑った。

「でも、それ・・」

ゆみは、祥恵にもブータ先生がおしゃべりしたり、動いたりすることを言えずにいた。

「ゆみ。もうそろそろ9時になるわよ。お風呂に入ってしまいなさい」

キッチンにいるお母さんが、ゆみに声をかけた。

「はーい」

ゆみは、お母さんに言われて、お風呂に入りに行った。

「ゆみ!お風呂行くなら、ゆり子にもらったぬいぐるみも、こんなところにほったらかしにしないで、自分の部屋に連れて行きなさい」

祥恵は、お風呂に行くゆみに声をかけた。が、ゆみは既にお風呂に入ってしまっているみたいで聞こえず、返事が無かった。

「ああ、白いブタのぬいぐるみでしょう。それ、ゆり子ちゃんにもらったみたいなの。もらったというか預かってて良いよってことらしいんだけど。あんたからも、妹にぬいぐるみありがとうございますってお礼を言っておいて」

キッチンからリビングに食器を片づけに来たお母さんが、祥恵に言った。

「うん、わかった。明日ゆり子に会ったら言っておく」

祥恵は、お母さんに言った。

「それにしても、今日もらったばかりのぬいぐるみを、こんなところにほったらかしにして、ゆみらしくないね」

祥恵は、そう言いながらブタの置いてあったソファの上を見た。が、さっきまで置いてあったと思ったブタがそこから無くなっていた。

「あれ、ブタいなくなっているよ」

祥恵は、お母さんに言った。

「ゆみが、お風呂に入る前に、部屋に持っていたんでしょう」

「そうかな。置きっぱなしにしていた気がしたけどな」

「だって、今日ゆり子ちゃんからもらったばかりのぬいぐるみよ。あの子が、こんなところにほったらかしにするはずないじゃない」

「それはそうだよね。ゆみは新しいぬいぐるみが増えると、必ず部屋にそれの置き場所をしっかり確保するものね」

祥恵は、思い直した。

「動物のぬいぐるみに関しては、あの子めちゃ神経質なぐらい大切にするもの」

「そうだよね」

お母さんも、祥恵に言って、それに祥恵も納得していた。

「おやすみなさい」

ゆみは、お風呂から上がってくると、リビングにいるお父さん、お母さん、それに祥恵にも夜の挨拶をして、2階の自分の部屋に上がっていった。

自分の部屋に入ると、ゆみは手前の自分のベッドの毛布をめくって中に入った。ゆみが、ベッドの中に入ったのを確認すると、猫の美奈ちゃんやまりちゃん、ギズちゃんもベッドに上がってきて、ゆみの足元で丸くなって眠りについた。

美奈ちゃんだけは、いつもゆみと同じように毛布の中に入って、中でUターンして頭を、ゆみが乗せている枕の上に乗せて眠りについていた。

「美奈ちゃんは、今日もあたしと一緒に寝てくれるんだ」

ゆみは、美奈の頭を撫でてあげてから自分も目をつぶって眠りについた。

「えっ」

自分の左側に寝ている美奈とは別に、誰かが自分の右側の毛布の中にごそごそ入ってきて、頭を枕の上に乗せて眠り始めた。

「あれ、まりちゃんも、ここで寝るの?珍しいね」

ゆみは、目を開けて、自分の右隣りを見た。まりちゃんだと思っていたのは、ブータ先生だった。

「え、あなたも、ここで寝るの?」

「いけないか?まだ4月だから夜は涼しいからな。毛布ぐらいかけて寝ないと風邪引いてしまうだろう」

「別に良いけど」

ゆみは、自分の横で眠っているブータ先生のことを見ながら、ぬいぐるみも風邪を引くのかなと不思議に思っていた。

「ゆみ、もう寝たの?」

祥恵が部屋に入ってきて、ベッドに寝ているゆみの姿を見ながら言った。

「寝るなら、部屋を暗くしてから寝れば良いのに」

祥恵は、部屋の電気を消した。リビングでテレビを見ていたら、お母さんに今日はずっと部活で遊んできたのだから勉強しなさいと怒鳴られて、部屋に上がってきたのだった。

「さて、少しだけ予習でもするかな」

祥恵は、部屋の一番奥の自分の机に座って、小さいデスクライトを点けて勉強をし始めた。勉強の合間に、寝ているゆみの方を見ると、ゆみの足元にはまりちゃんとギズちゃん、隣りには美奈ちゃんも寝ている。さらに、ゆり子からもらったブタのぬいぐるみまで横にいた。

「ゆみ。余程あのぬいぐるみが気に入ったのね」

祥恵は、ブタのぬいぐるみと一緒に寝ているゆみの姿を見ながら思っていた。

ブタの初登校につづく

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