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ゴールデンウィーク

「お姉ちゃん、連休だよ!連休」

ゆみは、祥恵に話しかけた。

「そうだね、ゴールデンウィークなんて毎年来るじゃない。そんな珍しくないでしょうに?」

祥恵は、ゆみに答えた。

「でも中等部になっての初めての連休だし・・お姉ちゃんは連休どうするの?どっか行く?どっか行こうよ」

ゆみは、祥恵に聞いた。

「お姉ちゃんは連休っていっても、今年からは部活あるし」

「部活?学校の部活のこと?」

ゆみは、祥恵に聞き返した。

「そうよ」

「連休は、学校もお休みなんだよ」

「学校の授業はお休みでも、部活はあるもの」

「え、部活ってお休みでもあるの?」

「そうよ。だから連休でも、お姉ちゃんは毎日学校に行くの」

「え、なんだ。つまらない」

ゆみは、祥恵に言った。祥恵が学校に行ってしまったら、せっかくの連休といっても家に残っているのは自分1人だけになってしまうではないか。

「ゆみちゃん、お母さんとどっかに行きましょう」

横で2人の会話を聞いていたお母さんが、ゆみに言った。

「うん。どこ?」

「そうね。東松原駅前のスーパーにお買い物とか、吉祥寺のデパートまで行ってみようか」

「お買い物か・・」

なんだかお買い物では、あまり普段の買い物の手伝いと変わりない。なんか、もっと特別なことがしたいなと思うゆみだった。

結局、連休が始まっても、祥恵は朝からバスケ部の練習とかで学校に出かけてしまっていて、ゆみは家で1人でお留守番する毎日だった。

お父さんは、横浜のヨットクラブに30フィートのヨット、セイリングクルーザーを所有している。なので、ゴールデンウィークとか長い連休になると、いつも一緒に乗っているヨットの仲間とクルージングと称して泊まりがけでどこかに出かけてしまう。

なので、ゆみは連休にお父さんの姿を家の中で見ることは殆ど無かった。

「どっか行きたいな」

ゆみは、自分の勉強机の前に座ってつぶやいていた。休み中、時間があるので、もう予習も復習もあきるぐらい学校の勉強をしていて、勉強ですらすることが無かった。

こんな感じで時間があると、いつも部屋で1人勉強を先に先にとしてしまうので、知らず知らずに勉強が進んでしまい、次の進級になると飛び級、飛び級と進級してしまうのだった。

7年から8年生になるときは、せっかくお姉ちゃんと同じ学年になれたのだし、もう飛び級はしたくないなと思っているゆみだった。

「どっか行くか?」

そう、ゆみに返事したのは、ゆみが勉強机の上でずっといじくっていたブータ先生のぬいぐるみだった。

「どっかに連れていってくれるの?」

ゆみは、ブータ先生に聞いた。

「どこに行きたい?」

「そうね。今年のゴールデンウィークは暑いし南極とか、それとも北欧のフィンランドとか行ってみたいな」

ゆみは、ブータ先生に言った。

「なんだ。皆、外国ばかりじゃないか。さすがに遠すぎるだろう」

「え、だって、どこでもドアとかならば、すぐに行けるでしょう?」

ゆみは、ブータ先生に尋ねた。

「どこでもドアなんてどこにあるんだ?もう中学生なんだから、もっと現実的なことを言ったらどうだ」

ぬいぐるみがしゃべるなんて、一番現実的でないブータ先生が、ゆみに答えた。

「ええ、ブータ先生がどこでもドアを出してくれるんじゃないの?ドラえもんとかみたいに・・」

「はあ?おいらは別にドラえもんみたいなあんな青タヌキじゃないぞ」

「ふーん、そうなんだ。どこなら連れていってもらえるの?」

「そうじゃな・・もっと現実的なところじゃな」

「そうね、例えば動物園とかいいな。動物園に行きたいな」

ゆみは、少し現実的なところを提案したつもりでいた。

「よし、動物園か。ゆみ殿の大好きな動物がいっぱいいるところで良いのだな。ならば、ついてこい」

ブータ先生はそう言うと、部屋を飛び出した。ゆみも、ブータ先生の後を追って、部屋を出ると階段を降りて1階に行ってみる。

「あ、お母さん」

ゆみは、1階で洗濯物をしていたお母さんと出くわした。

「あら、ゆみちゃん・・」

「お母さん、洗濯?お手伝いしようか?」

「大丈夫よ。もう終わるところだから」

先を歩いていたブータ先生が、リビングで欠伸をしていた猫の美奈ちゃんの前でごろんと倒れてみせた。

「あら、美奈ちゃん。ゆみちゃんがゆり子さんから借りてきたブタさんを持っていたらダメじゃない」

美奈の前に倒れているブータ先生のぬいぐるみを見ながら、お母さんは美奈に話しかけた。

「ニャーン」

ブタのほうが勝手にきて自分の前で倒れただけなのに、美奈としてはお母さんにいたずらしてくわえて持ってきたと思われ、良い迷惑だった。

「お母さん、そういえば美奈ちゃんとまりちゃんのノミ取り首輪がもう無かったよ」

ゆみは、気づいてお母さんに言った。

「そうだったわね。ちょうどお洗濯も終わったし、ゆみちゃんも一緒に動物病院に行きましょうか。ついでに、その帰りにスーパーに寄ってお買い物もしてきたいし」

「いいよ」

ゆみは、お母さんと一緒に近所の動物病院まで出かけた。ゆみの持っているバッグの中には、ブータ先生も一緒に入っていた。

ゆみは、この近所の動物病院がけっこう好きだった。ここに来ると犬や猫だけでなく、ほかにも珍しい種類のペットたちが置いてあって、その子たちと遊べるからだ。

「かわいい」

動物病院の入り口のケージに、小さなハツカネズミがいて、ゆみは、その子たちを手の平に乗せて可愛がっていた。

「どうじゃ。動物のところに連れてきてやったぞ」

嬉しそうに動物病院の動物たちと遊んでいるゆみに向かって、ブータ先生は話しかけた。

「え、動物のいるところに連れていってくれるってここのこと?」

「そうじゃよ。なんか不満か?」

「不満ではないけど・・」

かわいい動物たちと遊べているので不満ではないけど、ブータ先生が連れていってくれると言ったのだから、もう少し別の動物がいっぱいいるところに連れてきてくれるものとばかり思っていたゆみだった。

吉祥寺のデパートにつづく

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