今井ゆみ X IMAIYUMI

多摩美術大学 絵画科日本画専攻 卒業。美大卒業後、広告イベント会社、看板、印刷会社などで勤務しながらMacによるデザイン技術を習得。現在、日本画出身の異色デザイナーとして、日本画家、グラフィック&WEBデザイナーなど多方面でアーティスト活動中。

9 ママと昼食

「お姉ちゃん、行っちゃった」

1人教室に残されたゆみは、お母さんに言った。

「ゆみは、お母さんと一緒に帰りましょうか」

お母さんは、ゆみの手を握りながら言った。

「斉藤さん、もし良かったら、車で来ているので駅まで送りましょうか」

お母さんは、ジョー君のお母さんのことを誘って、学校から吉祥寺駅までは、ゆみとお母さん、それにジョー君のお母さんも一緒に、お母さんの運転する車で移動した。

「それでは、ありがとうございます」

「いいえ、こちらこそ」

ジョー君のお母さんが吉祥寺駅で車を降りると、ゆみは助手席に席を移動して、お母さんは家に向かって車を出した。ジョー君も、午後からの部活オリエンテーションに参加するらしく、学校に残っていて、ゆみたちとは一緒ではなかった。

「どっか途中でごはんを食べていこうか?」

お母さんは、ゆみに言って、途中にあったファミレスの駐車場に車を入れた。

「お母さんと2人だけで、ごはん食べてもいいの?」

ゆみは、お姉ちゃんも、お父さんもいないのに、自分だけお外でお母さんとお昼ごはんを食べてもいいのか心配で、お母さんに聞いてみた。

「大丈夫よ、お姉ちゃんは、お友だちとごはん食べているんだから」

「お父さんは?」

「お父さんだって、病院で何かお昼ごはん食べているわよ」

お母さんは、心配そうなゆみの顔を見て、笑いながら答えた。

「なにを食べたい?」

「ゆみ、全部ひとりでは食べきれないよ」

「じゃあ、お母さんと半分っこしようか」

ゆみは、お母さんに頷いた。

「そうね、ハンバーグにしようか?お野菜とか、ゆみの好きなポテトも付いているし」

「うん」

ゆみが頷くと、お母さんは店員さんを呼んで注文した。

「入学式はどうだった?」

店員さんが厨房に戻っていき、注文した料理が出てくるまでの間に、お母さんは、ゆみに聞いた。

「クラスの皆、大きかった」

ゆみが答えた。

「それは仕方ないわよ、皆、お姉ちゃんと同い年で、ゆみよりも5歳も年上なんだから」

「クラスの人たち皆、ほとんどが小等部の6年生からずっと一緒だったから、知っている人ばっかでもう仲良しなんだよね。ゆみは、ぜんぜん知らない人ばっかだったから、お友達できるの大変かも」

「それは仕方ないわよ。でも、クラスの半分は、ゆみと同じに他の小学校から入学してきた子だから、ゆみと同じに初めて一緒になるお友達ばかりのはずよ」

お母さんは、ゆみの頭を撫でながら言った。

「ほら、担任の、頭がもじゃもじゃの先生、佐伯先生だって言ってたでしょう。クラスの半分は、よその小学校から明星学園に入学してきた人だって。その人たちだって、ゆみと同じで、ほかの人たちとは、きょう初めてで、まだ誰も知り合いがいないんだから」

「お友だちできるかな?」

「大丈夫よ、ゆみにも、きっとすぐお友だちできるから」

「お姉ちゃんも小等部からの入学だったから、知っているお友だちがいっぱいいたの?」

ゆみは、お母さんに聞いた。

「そうでしょうね」

お母さんは、答えた。

「さっき、お姉ちゃんが一緒にごはん食べに行ったお友だちってなんていうの?」

ゆみは、お母さんに質問した。

「さあ?お母さんは、あのお姉ちゃんのお友だちがなんて名前なのか知らない」

お母さんは、ゆみに答えた。ゆみは、しばらくポカンとお母さんのことを見ていたが、

「お母さん、お姉ちゃんのお友だちのことぜんぜん知らないの?」

「そうね、お姉ちゃんの学校でのお友だちのことは、あまり知らないわね」

「どうして?」

ゆみは、お母さんに聞いた。

「お母さん、ゆみのお友だちのことは知っているよね。シャロルちゃんのこととか」

ゆみは、自分がニューヨークにいた頃に通っていた中学校で仲の良かった学校のお友だちのことを思い出しながら、お母さんに言った。

「そうね、ゆみは、いつも学校であったことを全部、お母さんにお話をしてくれるものね」

お母さんは、答えた。

「お姉ちゃんは、学校であったことを、あまりお母さんに教えてくれないから。あとお姉ちゃんは、独立心が高い子だからね。お母さんは、あなたと一緒にしばらくニューヨークに住んでいて、祥恵とは一緒に暮らしていなかったしね」

「そうなの?」

お母さんは、ゆみに頷いた。

「今度から、ゆみは、お姉ちゃんと同じクラスだから、ゆみのお友だちとお姉ちゃんのお友だちって同じになるよね?そしたら、ゆみがお母さんに学校のお友だちとあった事をぜーんぶ教えてあげるね」

ゆみは、なんとなくお姉ちゃんが学校のお話をぜんぜんしないことを、お母さんが寂しがっているような気がして、お母さんに答えた。

「ありがとう。ゆみちゃんは優しいね」

お母さんは、運ばれてきた料理を小皿に取り分けながら、ゆみに手渡した。

「このぐらいなら、食べられるわよね」

「うん」

ゆみは、お母さんに取り分けてもらった小皿の料理を食べていた。ニューヨークにいた頃から、あまり量を食べられないゆみは、レストランとかに行くと、いつもお母さんと料理を半分こしていた。

「そういえば、百合子ちゃんのことなら、お母さんも知っているわ」

「百合子ちゃん?」

ゆみは、ごはんを食べながら、お母さんに聞き返した。

「ほら、お姉ちゃんの学校のお友達のことよ」

「百合子ちゃんって、お姉ちゃんが学校で仲の良いお友達の名前」

お母さんは、ゆみに答えた。

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