「ああ~、疲れた」
看護師の森雪は、病院での勤務を終えて、自分の肩を叩きながら、伸びをしていた。
「お疲れ。手術はどうだった?」
「ああ、佐渡先生は名医ですもの。しっかり成功してましたよ」
雪は、先輩の看護師に声をかけられて答えた。
「そうなの?でも、この間、ブタさんの手術のときに手が滑ったとか言ってたよ」
「そうなのよ。あの先生、動物の手術の場合は、食事どきが近づくとなんか手が滑って、もう患者が食料にしかならなくなるんですって」
雪は答え、2人の看護師は笑いあっていた。
ドギャーシャン!
2人がおしゃべりをしていると、上の階からものすごい音がした。
「なに?」
2人は、音に反応して、お互いに見つめあってしまった。見つめあった後で、2人は大急ぎで、音のした方向へ走り出した。
上階に行くと、そのフロアの天井が壊れ、そこにぽっかりと穴が開いていた。穴の開いている天井の真下の床には、壊れた天井の欠片があっちこっちに散らかっていた。その散らかった欠片の中央付近に、1人の少女が倒れていた。
「どうしたの?」
雪たち2人が、先に来ていた医師に訪ねると、
「女の子が天井から落ちてきたんだ!」
医師は、倒れている女の子の脈を測りながら、答えた。
「この女の子って、うちの病院の患者さんじゃないよね。どこから来たんだろう?」
雪は、女の子の手当てを手伝いながら、一人言をつぶやいた。
「なんか屋根の上のほうから落ちてきたみたいだな」
医師は、雪の一人言に答えた。
「え、屋根の上?」
雪は、思わず手当てをしている医師に聞き返してしまった。
「屋根の上って、ここは東京地区の、地下シェルターの中だから、地上から落ちてきたってことなのかな?」
「そうなんだろうな」
医師も、雪と同じようなことを推測していた。
「その子、本当に空から降ってきたんですよ」
大きな音に集まってきていた野次馬の中にいる患者が、医師たちに話した。
「私、見たんです。その女の子が石の欠片の上に上手に乗って、欠片を操りながら、空から降りてくるところを」
その患者は、病院の屋上にいたらしく、屋上で空から降りてくる少女の姿を見かけたらしかった。その患者の話によると、最後の天井にぶつかる寸前までは、少女は上手に欠片をコントロールしていたらしいが、天井とぶつかる寸前でバランスを崩して、天井にぶつかり、そのまま天井からこのフロアに落下してきたらしかった。
「なんて、タフな子・・」
雪は、倒れている少女の顔を覗きこみながら、つぶやいた。
「ストレッチャーに乗せて、すぐにレントゲン室へ」
医師が、看護師たちに指示を出していた。
「レントゲンを撮ったら、それを確認し、そのまま手術室へ。緊急で外科的手術を行う」
倒れていた女の子は、ストレッチャーに乗せられて、レントゲン室へと運ばれていった。病院の職員たちは、慣れたもので、女の子はすぐに適切な処置を施されていた。女の子的には、落ちたところが病院だったのはラッキーだったのかもしれない。
病室のお姉ちゃんにつづく