今井ゆみ X IMAIYUMI

多摩美術大学 絵画科日本画専攻 卒業。美大卒業後、広告イベント会社、看板、印刷会社などで勤務しながらMacによるデザイン技術を習得。現在、日本画出身の異色デザイナーとして、日本画家、グラフィック&WEBデザイナーなど多方面でアーティスト活動中。

28 反省

祥恵は放課後、いつものように部活に行ってしまった。

「かおりちゃん」

1人教室に残されてしまったゆみは、教室の廊下側、かおりの席に行って声をかけた。

「ゆみちゃん、今日のホームルームは大変だったね」

「うん。佐伯先生に聞かれて、なんて答えたら良いのかよくわからなかったよ」

「大丈夫だよ、ゆみちゃんは、ぜんぜん悪くないんだから」

かおりは、ゆみの頭を優しく撫でてくれた。

「あのね、お姉ちゃんまたバスケ部の部活に行ってしまったの。今日は水曜日だから、あたしは図書室に行って、そこでお姉ちゃんの部活が終わるの待っているつもりなんだけど」

「そうなんだ。図書室っておもしろい本がいっぱいあって良いよね」

「うん!かおりちゃんも行ったことあるの?」

「うん、あるよ。1、2度しかないけど。図書室は階段があるから、あたしには行きにくいのよね」

「そうなんだ。一緒に行かない?」

ゆみは、かおりに聞いた。

「いいの?ゆみちゃん、連れていってくれる?」

「うん!」

ゆみは、かおりに頷いた。そして、2人は図書室に向かうために教室を出ようとしていた。ゆみは、かおりの机を引いて、生まれて初めて、かおりの座っている車椅子を押した。そのとき、クラスの川上と鶴見が2人の方にやって来た。

「あ」

かおりは、目が見えていないので気づいていないのだが、ゆみは、川上たちがこちらにやってくるのに気づいて、無言になっていた。

「どうしたの?」

ゆみが急に静かになったので、かおりは質問した。

「え、あのね。昨日の男の子たち・・」

ゆみは、かおりに小声でつぶやいた。

「川上君・・あと、鶴見君」

かおりは、川上たちに声をかけた。小等部からずっと同じクラスだったので、かおりは川上たちのことも、名前を知っているのだった。

「おっす」

川上は、かおりに返事した。そして、

「ちょっと、ゆみと話があるから。少し待っていてな」

川上は、かおりに言った。

「え、何をするの?ゆみちゃん、良い子なんだからいじめたらダメだよ。っていうか、もし、ゆみちゃんのことイジメたら、本当に許さないよ!」

かおりは、川上たちのいるだろう方向に向かって怒鳴った。ゆみも緊張して、川上たちがこちらに来るのを、かおりの車椅子の後ろで小さくなって見ていた。昨日、川上たちにイジメられていたときには想像できなかったぐらい、今日のかおりは力強く、川上たちに声をかけていた。

「そんなことしねーよ」

川上は、かおりに言ってから、

「よ、元気か」

川上たちは、ゆみに声をかけてきた。

「え、うん・・」

「あのさ」

川上は、そこまで言うと、その後の言葉が続けられないでいた。

「何、黙っているんだよ。早く言っちゃおうぜ」

鶴見が、黙っている川上に向かって言った。

「あの、ゆみくん」

「はい・・」

「昨日はごめんな。その・・押し倒したりして、怪我とかしなかったか?」

「うん、大丈夫。ちょっとズボンが破けちゃっただけ」

ゆみが答えた。

「そうか。そのズボンどこにある?破けちゃったところは俺が直すよ」

鶴見は、ゆみが履いている昨日とは違う赤チェックのズボンを見ながら言った。

「ううん。大丈夫。もうお母さんが可愛いクマのパッチワークで縫い直してくれたから。前よりも、もっと可愛いズボンになちゃった」

「そうか。それなら良かった」

鶴見は、ゆみに言った。

「あのな、本当にごめんな。昨日はちょっとさ、かおりのやつとじゃれていただけなのに、お前が口出してきたから、なんかムキになってしまって」

鶴見は、ゆみに謝った。

「ごめんなさい。もうこんなことは二度としないからさ。許してもらえないかな」

「うん」

ゆみは、鶴見に答えた。

「じゃれてただけ?あたしは、ぜんぜんじゃれてたつもりないんだけど」

かおりが、鶴見の話に割って入ってきた。

「ああ、いや、ほら、昔に小等部の頃にさ、まだ、かおりも走り回っていた頃、よく追いかけあったりしていたじゃん。あの頃の延長でさ、ちょっとからかってしまっただけで。本当にごめんなさい」

鶴見は、今度はかおりに頭を深く下げて謝った。

「あたしは別にあんたたちのこと昔から知っているから良いけど。ゆみちゃんには、ちゃんと謝りなさいよ」

「ごめんなさい」

鶴見は、再度ゆみに謝った。それを見て、黙っていた川上も、ゆみに頭を下げて謝った。ゆみは、2人に黙って頷いた。

「かおりちゃんって、ずっと仲良しだったの?」

ゆみは、かおりたちの会話を聞いて、質問した。

「仲良しだったかな?」

かおりは、川上たちの方を見て聞いた。

「え、仲良しだったじゃん。いつも遊んでいただろ」

川上たちは、かおりに言った。

「まあ、そうだね。あたしが小等部の頃は、まだ病気じゃなくて目も見えたし、ちゃんと歩いたり走ったりできていたから、よく追いかけっことかしてたよね」

「あの頃は、よく遊んでいたよな」

川上たちとかおりは、話していた。

「かおりちゃんって、走ったりしていたんだ」

「そうよ!あの頃は体育のときのマラソンとか一番だったときもあるんだから。目だってちゃんと見えていたのよ」

かおりは、ゆみに言った。

「へえ」

ゆみは、かおりの見えない目をチラッと確認しながら答えた。

「あの頃は、よく仲良い友だち同士でグランド走っていたものな」

「うん、そうだったね」

かおりは、川上たちに言った。昨日とはぜんぜん別ですっかり仲良くなっていた。

「いいな。あたしもお友だちになりたい」

「いいよ。っていうか、ゆみちゃんも、俺たちともう今日からお友だちだよ」

ゆみが言うと、川上たちが答えてくれた。

「そろそろ図書室行かない?」

「うん」

ゆみは、かおりに答えた。

「あ、じゃ、俺たちは家に帰るから。途中まで一緒に行こうぜ」

ゆみとかおりは、川上と鶴見と一緒に中等部の入り口のところまで行って、家に帰る2人とは、そこで別れた。その後、職員室棟の2階にある図書室に向かって、ゆみとかおりは歩き出していた。

その後、来週のホームルームでのイジメの議題は中止となった。その前に、川上と鶴見が、クラスの皆の前で、俺らがつい調子の乗ってしまいと謝ったからだ。かおりも、それ以上、川上と鶴見を責めることもなくなり、佐伯先生も今回の問題については不問とした。

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