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吉祥寺のデパート

「もう連休も最終日だね」

ゆみは、1人自分の勉強机に向かいながらつぶやいた。

「そうじゃな。ゆみは今年の連休はどうだったかな?おいらが一緒の初めてのゴールデンウィークだったからな、さぞかし楽しかったことだろう」

そう、ゆみに返事したのは勉強机の上に乗っているブータ先生だった。

「そうかな、そうでも無かったかな」

ゆみは、連休を思い返してみながらブータ先生に言った。結局、ゆみの連休は、動物病院に行ったぐらいだった。祥恵はずっと最終日の今日も学校にバスケ部の練習に行っていた。お父さんは、昨日横浜のヨット、セイリングクルーザーで行ったクルージングから戻ってきて、明日からの仕事に備えて、自分の部屋でのんびりしていた。

「なんだ、特に楽しくなかったのか?」

「楽しくなくはないよ。お姉ちゃんがずっとバスケ部に行ってしまっていたから、その間ずっとお母さんを独占して一緒にいれたし」

ゆみは、ブータ先生に返事した。

「そうだろう。ゆみは、お母さんのことが大好きだからな。そう思ったんで、今回おいらと過ごす初めてのゴールデンウィークは、ゆみがお母さんのことを独占できるようにいろいろ運命を動かしておいてやったんだ」

ブータ先生は、ゆみに自慢していた。

「そうなんだ」

ゆみは、そんな机の上のブータ先生のことを眺めていた。

「なんだ、別においらが大したことしていない、みたいな表情だな」

「別にそんなことはないよ」

ゆみは、ブータ先生に言った。

「あたし、お母さん大好きだし、別にどこも行かなくても、おうちでお母さんと一緒にいれるだけで満足だし」

「ふむふむ、そうだろう」

机の上からゆみの顔を見ながら、ブータ先生は頷いていた。

「そうじゃ、今日は連休最終日だし大冒険をしようではないか」

そう言うと、ブータ先生は机を飛び降りて部屋を出て走り出した。

「大冒険?ね、ちょっとどこに行くの?」

ゆみも、慌ててブータ先生の後を追っかけていく。

階段を降り、1階のリビングに入ったところで、掃除機で掃除を終えたお母さんと遭遇した。

「ゆみちゃん、お母さんちょうど掃除が終わって、ちょっと吉祥寺まであなたたちの洋服とかお買い物に行こうかと思っていたんだけど、ゆみちゃんも一緒に行かない?」

お母さんは、ゆみに声をかけてきた。

「うん、いいよ。一緒に行こう」

ゆみは、お母さんに返事した。

「それじゃ、着替えてきましょう」

お母さんとまた階段を上がって、2階のお母さんたちの部屋に行くと、お母さんはそこで夏向きのワンピースに着替えた。

「ゆみちゃんも今日は暑いし、ワンピースでなくてもスカートぐらい着替えたら良いと思うんだけど、スカートは嫌なのよね」

「うん、スカートは履かない」

お母さんに言われて、ゆみは即座に答えた。

「そういうとは思ったわ。まあ、いいわ。今日のゆみのパンツはチェックで可愛らしいから、それで吉祥寺まで出かけましょう」

お母さんは、ゆみの履いている赤チェックのパンツを見て言った。

「ちょっと、ゆみと吉祥寺までお買い物に行ってきますから。お昼は台所に冷やし中華を作ってありますからね」

「ああ」

ベッドで横になっているお父さんが、眠そうな声でお母さんに返事した。

「ゆみ、行きましょう」

「はあい!お父さん、行ってきます」

ゆみは、お父さんに挨拶をすると、お母さんと共に部屋を出た。お父さんは、眠そうな顔をしながらも、ゆみの方にバイバイって手を振ってくれた。

「お父さん、ヨットに行って疲れているね」

「そうみたいね」

2人は、横浜のヨットでクルージングに行って帰ってきたお父さんを家に置いて、お母さんの車で吉祥寺にお買い物に向かった。

お母さんが運転席で、ゆみは助手席にシートベルトをして座っていた。

「大冒険って吉祥寺のことかな?」

ゆみは、車の中から外の景色を眺めながらつぶやくと、突然目の前にブータ先生が現れた。

「そうだよ、吉祥寺っていったら色々な人が街に繰り出しているところじゃ。そんな中を動き回るんだからな。大冒険だろ!」

「そうね・・」

ゆみは、ブータ先生の言葉に苦笑していた。

「あら、ゆみちゃん。ブタさんも連れて来たの?」

お母さんは運転しながら、横のゆみがブータ先生と一緒にいるのを見て質問してきた。

「え、うん。そうなの」

ゆみは、チラッとブータ先生の顔を見てから、お母さんに答えた。本当は、連れてきたのではない、ブータ先生が勝手についてきたのだ。

「最近は、そのブタさんが一番のお気に入りなのね」

お母さんは、ここ最近いつもブタのぬいぐるみと一緒にいるゆみに言った。

「そ、そうね」

ゆみは、お母さんに曖昧に答えた。本当は、こんな白にお鼻がピンクのブタのぬいぐるみよりも、もっといつも抱っこしていたい可愛いぬいぐるみは他にもあるのだけど。

「・・・」

ゆみは、ブータ先生の顔を見つめていた。ブータ先生も、どうした?って顔で、ゆみの顔を見つめていた。

「やっぱ、あなたも可愛いよね」

ゆみは、ブータ先生のことを抱き上げて、しっかり両腕で抱え込んであげた。突然ゆみに抱っこされて、少し照れくさそうに、でも嬉しそうに喜んでいるブータ先生だった。

祥恵のバスケ部につづく

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