映画「宇宙戦艦ヤマト」をご覧になった方も、ここから先のシーンは本編にもなかったので、もしかしたらご存じないかもしれない。
ヤマトは、遠くイスカンダル星まで行って、放射能除去装置コスモクリーナをもらって帰ってきた。
「こちら、ヤマト。地球政府、聞こえますか?」
ヤマトの通信班長である相原は、ヤマトが地球の大気圏に突入すると、地上いや地下シェルター内にいるはずの人たちに向かって、何度も何度も通信で呼びかけていた。
「返事がないのか?」
古代進は、通信で必死に呼びかけている相原に聞いた。
「ええ、ずっと呼びかけているんですけどね」
「もしかして、地球との通信用の周波数帯を間違えて、設定してしまっているとかないか?」
ヤマトのステアリングを握って、地球の上空を飛んでいる島大介が相原に確認した。
「ええ、それは、もう何度も再確認しているので、この周波数帯で通信は間違いないはずなのですが・・」
相原は、無線で呼びかけながら、島大介に返事した。
「もしかして、間に合わなかったとか」
近くにいた森雪が、不安そうに相原に言った。
「いやあ、そんなことは無いと信じたいのですが」
相原も、心の中ではもう地球の人間は全て放射能で絶滅してしまった後で、だから呼びかけても何も返事が返ってこないのではないかと不安に思っていたみたいで、森雪の言葉をすぐに理解していた。
「大丈夫だよ!きっと、地球の皆は無事さ」
古代進は、相原を元気づけるように答えた。その言葉は、通信で呼びかけている相原へだけではなく、もしかしたら間に合わなかったのではないかと思ってしまっている自分自身を安心させたいという思いから発した言葉だった。
「こちら、地球。ヤマトの諸君、お帰りなさい」
そのとき、相原の呼びかけに答えるように、地上から返信があった。
「こちらは地球政府の長官だ」
それは、ヤマトがイスカンダル星に旅立つことを一番理解してくれていた地球政府の防衛軍の長官の声だった。
「長官!」
「古代君か、お帰りなさい。よく戻ってきてくれた」
長官は、ヤマトの古代進の言葉に返事した。
「それで、コスモクリーナーはもらえたのか?」
「はい。コスモクリーナーは現在組み立ても終わって、ヤマトの波動砲にセットしてあります。波動砲からコスモクリーナーの除去装置を地上に発射すれば、いつでも地上の放射能を除去できるかと」
「それは有り難い。ぜひ、地上の放射能を除去してくれ」
長官は、古代進の言葉を聞いて、嬉しそうに言った。
「なにしろ、地上の放射能汚染は、君たちが地球を出発したときよりも遙かに多くの放射能で汚染されてしまっていて、その一部は地下シェルターの中にまで多少汚染されてきてしまっているのだ」
「それでは、すぐにコスモクリーナーによる除去作業を開始します」
古代進は、長官に返事した。
「よろしく頼む」
長官は、頭を下げた。
「ところで、沖田艦長はどうしたね?」
「艦長は、地球が見えるところ寸前まで戻ってきたところで亡くなりました」
「そうか・・。しかし、沖田艦長の息子たちである君たちが意志を継いで無事に帰ってきてくれただけでも有り難い」
長官は、艦長の死を少し寂しそうにつぶやいた。
「それでは、ヤマトはこれより地上の放射能除去作業に入ります」
古代進は、長官に向かって敬礼した。
放射能除去につづく