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期末試験

「ああ、今週はつらいな」

祥恵は、夕食を食べ終わった後も、テーブルから離れるのがつらそうに、しばらく自分のテーブルの席に座ったままだった。

「なあに、そんなに期末試験がつらいの?」

お母さんは、つらそうな祥恵の顔を覗きこんだ。

「だって、わかっているんだもの。どうせ、今回も良い点取れないんだろうなって」

祥恵は、夕食後の食器を片づけているお母さんに言った。食べ終わった食器は、ゆみと一緒に既に洗い終わっていて、お母さんは今は乾いた食器を食器棚に戻していた。

「ゆみなんか、いつも試験中でも普通の顔しているのに、あなたは試験になるとつらそうな顔をするわよね」

「ゆみは、頭いいんだもん。お母さん、どうして私のことも、もっと頭良く産んでくれなかったのよ」

祥恵は、お母さんに無茶な願いをしていた。

「それは、それは、ごめんなさいね。お母さんは、あなたも、ゆみも同じように産んだつもりだったんだけどね」

お母さんは、祥恵の頭を撫でてあげながら答えた。

そろそろ夜の9時を過ぎようとしていた。ゆみは、とっくの昔にお風呂に入り終わって、皆にお休みなさいをして自分のベッドに入っていた。

「え、あら、まりちゃん。珍しいじゃない」

ゆみがベッドの中に入ると、いつものように犬のメロディと猫の美奈ちゃん、ギズちゃんもゆみのベッドの上に上がってきて、一緒に毛布の上に寝転がっていた。

いつもは、美奈ちゃんと並んで寝ているまりちゃんが、今日は、ゆみの枕のところにやって来て、ゆみと一緒に並んで枕に頭を置いて寝ていた。

「なんか、ブータ先生みたいだね」

ゆみは、枕元で一緒に寝ていたブータ先生のことを思い出しながら、まりちゃんと一緒に、その日の夜は寝ていた。

「さあ、祥恵。そろそろ、その重い腰を上げなさい」

洗い終わった食器をみな、食器棚の中に戻し終わったお母さんは、祥恵に言った。

「そうでないと、いつまでも、ここに座っているだけだったら悪い点どころか、落第しちゃうかもしれないわよ」

「そうだよね。それはわかっているんだけど・・立ちたくない」

祥恵は、ダイニングの自分の席を離れて、自分の勉強机に行って、勉強するのを躊躇していた。

「なんだ。祥恵は腰が重いのか?最近、お尻が大きくなったとかか」

お父さんがダイニングに入ってきて、2人の会話を聞いて、無神経なことを言った。

「お父さん、うるさいな。私、胸だってまだまだぺたんなのに、お尻が大きくなるわけないじゃん」

そう、お父さんに返事をして、重い腰を上げて席を立った祥恵だった。席を立つと、両手を高く上げて、大きく深呼吸した。

「ねえ、お母さん。私、お尻大きくなっちゃったかな?」

なんだか突然心配になった祥恵は、両手をぐるぐる上半身と一緒に左右に回しながら、自分のお尻を眺めて言った。

「そんなでも無いわよ」

お母さんも、祥恵のお尻を見てから、言った。

「本当に?太ってない?」

「太ってはいないわよ。お尻は少し昔よりは大きくなっているみたいだけど。女性はね、お尻が大きい方が子ども産むときに良いのよ」

お母さんは、立ち上がると自分よりも背の高い祥恵の顔を見上げながら答えた。

「あなた。お尻もだけど、背もまた伸びたわね」

お母さんは、自分の腕を伸ばして、祥恵の頭を撫でながら言った。

「そうかな」

「毎日、バスケやっているおかげだからかしらね?」

お母さんは、我が娘の成長を嬉しそうに見ていた。

「お姉ちゃん、学校は?」

朝食を食べ終わったゆみは、まだベッドに寝ている祥恵のことを起こしに来た。

「え、もうこんな時間か」

昨夜、試験勉強で遅くまで起きていた祥恵は、眠い目をこすりながら起き上がった。

「ゆみ、朝ごはんは?」

「もう食べちゃった」

ゆみは、髪を三つ編みにしていて、すっかり学校へ出かける準備も終わっていた。

「何それ。三つ編み、お母さんに編んでもらったの?」

「うん」

ゆみは頷いた。

「あたし、いつでも学校へ行けるよ」

「わかった。ちょっと待ってて。着替えたらダイニングに行って、朝ごはん食べるから。食べ終わったら一緒に学校へ行こう」

祥恵は、パジャマを脱いで、いつものグリーン色のデニムスカートに着替える。

「あんた、何、私の着替えをジロジロ見ているのよ」

「え?あ、お母さんが、お姉ちゃんのお尻大きくなったって言うから、本当に大きくなったのかなと思って・・」

「あ、そう。それ、お母さんに聞いたの?」

祥恵は、ブラウスのボタンを留めながらゆみに聞いた。ゆみは黙って頷いた。

「で、どうなの?私のお尻。大きくなってた?」

「ううん。別にいつもと変わらない」

毎日一緒に学校に行っているゆみが、祥恵に答えたると、お姉ちゃんのお尻なんか興味無さそうに1階へ降りていってしまった。

「ふーん。そうか、毎日、私に手を引かれて後ろからついてきているゆみが、そうでも無いってことは、そんなに極端には大きくなっていないんだろうな」

祥恵は、少し安心したようにスカートの上から自分のお尻を確認して、1階に降りていった。

1階に降りると、祥恵の分の朝食だけがテーブルの上に置かれたままになっていた。ほかの皆は、もう食べ終わってしまったようだ。

「いただきます!」

祥恵も、急いで自分の朝食を食べ終わると、ゆみを連れて学校へ出かけた。

「ああ、ゆみちゃん!ゆみちゃん!大変よ、大変!」

学校に着くと、奥の1組の廊下の方から、ゆり子が4組の教室に向かって走ってきた。ちょうど、祥恵がゆみのことを4組に送り届けて、そこで村岡久美子と出会って、おしゃべりをしているときだった。

「ゆり子。どうしたの?」

祥恵が、ゆり子に聞いたが、ゆり子は祥恵には一言だけおはようを言ってから、ゆみのところにまっすぐやって来た。

「ほら、ブータ先生」

ゆり子は、持っていたブータ先生のぬいぐるみを、ゆみに渡しながら言った。

「あ、ブータ先生」

「よっ!ゆみ。久しぶりだな。会いに来てやったぞ」

ブータ先生は、ゆみに言った。

「そうなの」

「ほら、お前さん、おいらに会えなくて寂しいって手紙に書いていただろう。それじゃ仕方ないからって、時間を作って会いに来てやったんだよ」

「そうなんだ。今、期末試験の真っ最中なんだけど」

「まあ、良いじゃないか。どうせ期末試験なんて、お前さんには簡単なんだろう」

ブータ先生は、ゆみの机の上に座り込みながら言った。

ブータ先生からの手紙をもらった後、ゆみもブータ先生にお返事の手紙を書いた。すると、その手紙の返事をブータ先生が書き、またその返事をゆみが書いて、ずっとブータ先生とは文通が続いていたのだった。

「今日は、ずっとこっちにいれるの?」

「ああ、お前さんの家に一晩だがお泊まりもできるぞ」

「そう、良かった。昨日は、ブータ先生の代わりに、まりちゃんがあたしと一緒の枕で寝たんだよ」

「ほお、まり殿が一緒だったのか。それは良かったな」

ブータ先生は、ゆみに答えた。

「じゃ、ゆみ。1組で試験だから、お姉ちゃんはもう行くからね」

「あ、あたしも」

祥恵とゆり子は、1組なので自分の教室に戻っていった。

夏休みの計画につづく

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