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いじめっ子

「おまえ、本当にどんくさいな」

徳川太助は、坂本たちのグループに言われていた。

その日の体育の授業はサッカーだった。坂本たちと同じチームになった徳川太助は、皆の足手まといにならないようにと、必死でボールを追っかけていたのだった。しかし、その一生懸命さは、常に空回りして、かえってボールが相手のゴールに入ってしまったりと、さんざんな結果だった。

「せっかく、俺が先制点を取ったのに、お前のせいで、あっさり負けてしまったじゃないか」

坂本は、徳川太助に文句を言っていた。ほかの学生たちも、坂本と一緒になって、徳川太助にネチネチ、ネチネチと試合結果のことを文句言っていた。

「ごめん。必死で走っていたんだけどね。なんか上手くボールを蹴れなくて」

徳川太助、太助は、少しおどけて見せながら、坂本たちに謝っていた。

「おどけているんじゃないよ」

「もう卒業まで、お前は体育の授業は見学しててくれないかな。どっかのブスと同じように・・」

坂本たちは、教室の端の席に座っているゆみのことを、チラッと見ながら言った。ゆみは、生まれつき身体が弱いことを理由に、いつも体育の授業は見学していた。

「次の授業はじまるよ」

ゆみは、追いつめられていた太助の側に行くと、耳元で囁いた。

「あ、はい」

太助は、次の授業の教室に向かっていたゆみの後を追って、走り出した。

「なんだ?あのブス、太助の側でなんて言ったんだ?」

坂本は、廊下を歩いていく2人の姿を眺めながら、言った。

「さあ?ブスの声が囁くように小さくて、よく聞こえませんでしたが。ブスとデブのブサイク同士で、きっと気があうんじゃないですか」

「はは、そうかもしれないな」

坂本は笑っていた。

「あのう、ありがとうございました」

太助は、ゆみに追いつくと、お礼を言った。

「・・・」

「さっきは、俺が坂本さんに文句言われてたもので、助けてくれたんですよね」

「別に・・」

ゆみは、太助に答えた。

「あのう、ゆみさんですよね。ゆみさんって呼んでもいいですか?」

「・・・」

「ゆみさんって、どうしてお化粧とかしないんですか?」

太助が聞くと、ゆみは黙って、太助の顔を前髪の間、奥の目で睨んだ。

「あのう、ほら、女性の方って皆、メイクとかするじゃないですか。ゆみさん、ぜんぜんメイクとかしていないですよね」

太助は、ゆみに聞いた。

「それどころか、顔にファウンデーションとか塗る代わりに、泥とか塗ってわざとかわからないけど顔を汚したりしているじゃないですか」

ゆみは、太助に言われて、前髪の間から視線をさらに睨みつけた。

「あ、いや、その・・。ほら、ゆみちゃんって本当は美人じゃないですか。なのに、なんか自分の真の姿を隠しているというか、クラスの皆に、わざと薄気味悪いやつみたいな振りして、自分のことをひた隠しにしているように、俺には思えるんですけど」

太助は、ゆみに言った。

「せっかくの美人なのに、もったいないなって・・」

太助がそう言うと、突然、ゆみは太助の首根っこを掴んで、廊下の壁に押しつけた。

「あたしがなんかを隠しているように見えるって?それ、誰に言われた?」

ゆみは、太助の耳元で質問した。

「いや、別に誰にも言われていないです」

太助は、突然に自分の首掴んできたゆみに少し驚きながら答えた。

「ただの、俺の勝手な思い込みかもしれないけど、何と無く、ゆみさんって自分のこと隠しているように思えたもので・・」

「そう。その通りよ、それは、ただのあんたの勝手な思い込みだけ」

ゆみは、太助の首根っこを掴んだまま、太助の耳元で低い声でつぶやいた。

「そう、そうですね。俺の勝手な勘違いだったかもな」

「あとね、あたしが本当は美人だとかっていうの。それも、あんたの思い込みだけだから」

ゆみは、太助に言った。

「あたしはブスだから。そんなこと自分でもよくわかっているから」

そう言うと、ゆみは太助の首根っこを離して、次の教室に行ってしまった。

「あ、いや・・」

太助は、去っていくゆみの後ろ姿を眺めていたが、

「いや、やっぱり違いますよ。確かに、ゆみさんが隠し事しているとか言うのは、俺のただの勘違いだったかもしれないけど。ゆみさんが美人というのは俺の勘違いなんかじゃないです」

太助は、去っていくゆみの後ろ姿に向かって言った。

「ゆみさんは、絶対に美人ですから!」

コスモタイガー実習につづく

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