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皆と再会
「さあ、ゆみ。地球に到着したからヤマトを降りる準備しましょう」
祥恵は、ゆみに言った。
ゆみは、怪我をしていてまだ足がうまく動かないので、祥恵に着替えさせてもらっていた。ベッドから起き上がると、半袖のブラウスにジーンズを着せてもらった。そして、森雪が用意してくれた車椅子に座らせてもらった。
「もう地球に着いているの?」
「そうよ。そこの窓から外を覗いてみなさいよ」
祥恵は、ゆみに答えた。ゆみは、医務室の窓から外を見ると、ヤマトは地球の海面に浮かんでいた。港の遠くには、地球の町並みが見えていた。
「スターシャさんも一緒に地球に住むのでしょう?」
ゆみは、側に立っていたスターシャに聞いた。
「ええ、そうなるわね。たぶん、守の実家にお世話になることになると思うわ」
スターシャは、ゆみに答えた。
「サーシャちゃんも一緒?」
「うん。もちろん」
「あたし、サーシャちゃんの家に遊びに行ってもいい?」
ゆみは、スターシャに聞いた。
「もちろんよ。ゆみちゃんなら大歓迎だから、いつでも遊びに来て」
スターシャは、ゆみに言ってくれた。その後ろで古代守も笑顔で頷いていた。
「お姉ちゃん、あたしたちは?どこに住むの?」
ゆみは、今度は祥恵に聞いた。
「さあ、どこに住もうかしらね?私の地球で住んでいた場所は、防衛省の独身寮だから、そこには皆で住めないしね」
祥恵は、お父さんの方を見た。
「まあ、とりあえず地球に戻って落ち着いてから、ゆっくり考えよう」
お父さんは、祥恵とゆみの頭を撫でながら答えた。その後ろには、お母さんもいる。
「皆で、また一緒に暮らせるんだよね?」
「うん。もちろんよ」
お母さんが言ってくれて、ゆみは嬉しかった。
「さあ、地上に降りましょう」
祥恵は、ゆみの乗っている車椅子を押しながら、医務室を出た。
皆は、医務室を出ると、ヤマトの甲板に出る。そこからヤマトが停泊している港内を見下ろすと、ヤマトの甲板に港へ降りるためのタラップが架けられていて、もう何人ものヤマト乗組員が既に先にタラップを下って、地上に降りていた。
地上に降りた乗組員たちは、迎えにきてくれた家族たちと久しぶりの再会を喜んでいた。坂本やお蝶婦人たちも、地上で自分たちの家族と再会しているのが見えた。
スターシャや古代守たち一家がタラップを下って、地上に降りるとすぐにマスコミや取材陣たちに囲まれてしまっていた。
「これから地球で暮らすのですね?地球での暮らしでなんか不安に思っていることはありますか?」
スターシャたちは、記者たちから質問攻めにあっていた。
「私たちも降りましょう」
祥恵が、ゆみの車椅子を押しながら、お父さん、お母さんとタラップを降りていく。
「ゆみ~ちゃーん!」
ゆみたちがタラップを下り地上に着くと、大きな声で、ゆみのことを呼ぶ声がした。ゆみが、そっちの方を見た。
「お帰り~!」
それは、少年盗賊団のあゆみだった。
「ただいま」
ゆみは、あゆみに答えた。あゆみと一緒に、ほかの少年盗賊団の子どもたちもいた。
「こんなところに出てきてもいいの?大丈夫なの?」
ゆみは、あゆみたちが貧民街じゃないところに堂々と迎えに来ているので聞いた。
「大丈夫に決まっているじゃん!どこでも好きなところに行っていいんだよ」
あゆみたちは、ゆみに答えた。
「ゆみ姉のおかげだよ!僕ら皆、自由になったんだよ」
子どもたちは、ゆみの周りに集まってきて、口々に喋っていた。
「ほら、あたしね。腕の貧民の跡もきれいにしてもらったの」
貧民マークの跡がきれいに消えている自分の左腕を見せながら、奈美ちゃんがゆみに言った。
「そうか。良かったね」
ゆみは、きれいになっている奈美の左腕を見ながら笑顔で言った。
「俺らだって、そんな変なマークなんてもうないよ」
カズも、自分の左腕をゆみに見せながら言った。
「お前さ、まだそんな変なマークを腕に付けているのかよ」
竜が、ゆみの左腕にある貧民のマークを指さし笑いながら、言った。
「だって、ゆみ姉は、今までヤマトに乗っていたのだから仕方ないじゃん」
あゆみが竜に言い返してくれた。
「やい、やい、ゆみってまだ貧民のマークがある!」
竜が、ゆみのことをからかった。
「うるさいな!」
ゆみは、自分の手を車椅子から目いっぱい伸ばして、竜の頭を小突いた。
恋のライバルにつづく