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合唱祭
「明日は、ゆみは午前じゃなくて午後にピアノを弾くのか?」
お父さんは、夕食のときに、ゆみに聞いた。
「ううん。午前中にも、翼をくださいを弾くよ」
ゆみは、答えた。
「あ、でも午後の方が弾く数は多いかも。午前中はどちらかというと7年生の子たちが中心で合唱するから。8年は午後の最初のほうなの」
ゆみは、お父さんに言った。
「ほお、そうか。それじゃ、お母さんは、学校に行っても、ゆみのピアノは1曲しか聴けないんだな」
お父さんは、午前中に見学に行く予定のお母さんに向かって嬉しそうに言った。
「そうですね」
お母さんは、特に気にせずに返事した。
「え、お母さん。1曲しか聴けないの?」
それを聞いて、逆にゆみが心配そうにお母さんに聞いた。
「お母さんは大丈夫よ。ゆみの弾くピアノはいつでも聴かせてもらえるから」
お母さんは、ゆみに答えた。
「それよりも、普段あまり聴けないんだから、明日はお父さんにいっぱい聴かせてあげて」
「うん、わかった!」
ゆみは、お母さんに返事した。3人が明日の合唱祭のことを話している間、祥恵は静かに自分の席で夕食を食べていた。
「祥恵も、明日の合唱祭を両親に聴いてもらいたくなったんじゃないの?」
「ううん、別に」
祥恵は、お母さんに答えた。
「お母さん、午前中だけ見に来るの?」
祥恵は、お母さんに逆に質問した。
「そう。明日はお父さんも聴きに行きたいっていうから、2人で病院を留守にするわけにいかないでしょう」
「そうか。午前中って8年生は4組だけなんだよね。1組はぜんぶ午後なの」
祥恵は、お母さんに言った。
「あら、それは残念。お姉ちゃんの合唱は聴けなくなちゃうのね」
「うん」
祥恵は、お母さんに答えた。
「大丈夫だよ。おまえの分も、お父さんがちゃんと聴いておいてあげるからな」
お父さんは、少し嬉しそうにお母さんに言った。
「でも、1組の合唱ってちょうど順番が最後だから。夕方から9年生の合唱が始まるんだけど、その少し前だから」
「3時か、4時頃か?」
「そうだね、だいたいそのぐらいかな。お父さんもそんな時間までは、病院もあるしいれないでしょう?」
「いや、そのぐらいだったら残っていられるよ。な、母さん?」
「そうですね。どうせ、明日の午後はあなたの患者さんは、陽子ちゃんが予約入れないようにしてくれたみたいですし」
お母さんは、お父さんに言った。
「え、でも4組って午前の部の一番最後と、午後の最初の方なんだよ。だから2時前には終わってしまうよ」
祥恵は、お父さんに言った。
「別に良いんじゃないか。4組が終わったら、1組が始まるまでの間は、ほかのクラスの子の合唱を聴いていても良いんだろう?」
「まあ、そうだけど・・」
「祥恵は、そんなに親に見られるのが嫌なのか?」
お父さんは、祥恵に聞いた。
「もしかして、祥恵ってすごく音楽とかは音痴なのか?それで聴かれたくないってことなのか?」
「別に、そんな音痴じゃないよ!まあ、歌が上手いってわけでもないかもしれないけど」
祥恵は、お父さんに答えた。
「じゃ、別に聴きに行っても良いんじゃないのか?」
「まあ、いいよ。聴きに来ても」
祥恵は、食べ終わったお皿を流しまで持っていくと、自分の部屋に戻った。祥恵が食べ終わったお皿を流しに持っていったのを確認すると、ゆみは流しに行って、祥恵の分も自分のお皿と一緒に洗い始めた。いつも、お料理は、お母さんとゆみの担当なのだ。
「ゆみは、別にお父さんに聴きにきてもらいたくないわけじゃないんだろう?」
お父さんは、お皿を洗っているゆみに背後から聞いた。
「別に、そんなことありませんよ」
お皿を洗っているゆみに代わって、お母さんが答える。
「むしろ、ゆみは、お母さんやお父さんに学校にいつも見に来てほしいぐらいですから」
「兄弟で真逆なんだな」
お父さんは笑っていた。
「ゆみ!出かけるよ!」
いつものように、学校へ行く前、祥恵は玄関から中に向かって、ゆみを呼んだ。
「あ、お姉ちゃん。あたし、大丈夫」
ゆみは、お母さんに長い髪をブラッシングしてもらいながら、玄関に出てくると祥恵に答えた。
「今日は、ゆみはお母さんが車で連れていくから」
「ああ、なるほどね」
祥恵は、1人家を出て、学校へ電車で向かった。ゆみは、合唱祭を見に行くお母さんの車に乗って、お母さんと一緒に学校へ通学だった。
「お母さん、バイバイ!」
「はい、バイバイ」
学校の駐車場で、お母さんの車を降りると、ゆみはお母さんと別れた。
「お母さん、先に合唱祭の会場に行って、合唱祭を見学しているわね」
「うん!」
お母さんは、先に合唱祭会場の体育館に行ってしまった。ゆみは、午前中7年生の子たちの合唱が終わるまで、少し時間があるので、音楽室に行くと、そこで馬宮先生とピアノの練習をしているつもりでいた。
ピアノとソーラン節につづく