今井ゆみ X IMAIYUMI

多摩美術大学 絵画科日本画専攻 卒業。美大卒業後、広告イベント会社、看板、印刷会社などで勤務しながらMacによるデザイン技術を習得。現在、日本画出身の異色デザイナーとして、日本画家、グラフィック&WEBデザイナーなど多方面でアーティスト活動中。

はじめてのワープ

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「これよりヤマトは、ワープ航行に入ります」

ヤマトの艦内放送が案内していた。

「乗組員の方は、ワープ航行に入るための準備をお願いします」

地球を出航した宇宙戦艦ヤマトは、月の脇から冥王星近辺までをワープで航行するようだ。月から冥王星までなら、距離的にも遠からず近からずで、今回初めてワープを体験する新人乗組員の良いワープ体験になるであろう。

「ゆみちゃん、ワープだって。こっちに来て準備しましょう」

森雪は、ゆみを医務室の奥にある座席に座らせた。その座席の隣の席に森雪も腰掛けた。その奥のシングル席には佐渡酒造が座っている。

「ゆみちゃんは、ワープって何か知っている?」

「うん。時間と時間のひずみを一気に飛んで、宇宙船の航行距離と時間を稼ぐ航行方法でしょう」

ゆみは、森雪に答えた。

「そう。よく知っているわね」

「そりゃ、知っているよな。ゆみ君は宇宙戦士訓練学校を一番の成績で卒業しておるんだものな。学校でちゃんと習っておるよな」

森雪は褒めたが、奥に腰掛けている佐渡先生は知っていて当たり前という顔をしていた。

「そうか。ゆみちゃんは優等生で卒業か、すごいね」

森雪は、ゆみに言った。

「でも、実際にワープしたことは一度もない」

「大丈夫よ。このシートベルトをしっかり締めて、後は座席の後ろのリクライニングに身体を任せて目をつぶっていれば、直にワープは明けるから」

森雪は、ゆみのシートベルトと自分のシートベルトを締めながら、ゆみに説明した。

「ワープ中は、少し頭痛がしたり、なんか目まいというか身体が少し気持ち悪く感じることがあるかもしれないけど、車酔いみたいなものだから、じっとしていればそのうちに良くなるから」

森雪に言われて、ゆみは腰掛けている座席のリクライニングに背中を任せてゆっくり寝の体勢にした。座席のリクライニングがソフトで気持ちよいので、本当にそのまま寝てしまいそうだった。

「目をつぶって、本当に寝てしまってもいいよ。目を覚ます頃にはワープも明けて、また普通に動けるようになっているだろうから」

森雪は、リクライニングに身体をもたせかけているゆみに言った。

佐渡先生も、奥の席でゆったりとリクライニングに身体を預け寝そべっていた。

「3、2、1、ワープ」

艦内放送から島大介の声が響いて、ヤマトはワープ航行に入った。

ゆみは、目をつぶってリクライニングに身体を預けていたが、なんだかもわーんとして少し目まいがした。少し頭も痛い、目を開けて、周りを見渡してみる。

奥の席の佐渡酒造の姿が、ぼわーんと薄らいでいき、やがて見えなくなった。すぐ隣の席に腰掛けている森雪の姿も、少しずつ薄らいできている。

「雪さん、消えちゃう・・」

ゆみは、隣の森雪の姿を見ながら思った。

やがて、森雪の姿も見えなくなった。ヤマトの医務室の壁も、床も、天井も、薄らいでいき、ゆみの前から消えていった。ゆみは、何もない空間に座っている座席だけが残り、宇宙空間をふわふわと浮かんでいた。

「このまま、あたしも消えちゃったらどうしよう・・」

ゆみは、何も無い空間の中で、お母さんやお父さんの姿を思い浮かべていた。愛犬のメロディや愛猫の美奈ちゃん、まりちゃん、GIZちゃんがお父さんたちの周りを走り回っていた。お姉ちゃんの姿もあった。

「お姉ちゃん・・」

地下シェルターに避難している際に、別れて以来、久しぶりに会ったお姉ちゃんの姿を捕まえようと必死に手を伸ばしているのだが、お姉ちゃんのところまで手が届かない。

「あっ!」

お姉ちゃんを必死に捕まえようともがいているうちに、ヤマトはワープ航行から明けて、通常の宇宙空間に戻ってきた。それと同時に、ゆみの周りにも、ヤマトの壁や床、天井が戻ってきた。医務室の機材や奥の席の佐渡酒造も、すぐ隣の森雪の姿も戻ってきた。

「お疲れさま、ワープ終わったよ」

隣の森雪が、ゆみのシートベルトを外しながら声をかけてくれた。

「はじめてのワープはどうだった?」

「なんか不思議な気持ち、まだ頭がもわもわする」

ゆみはワープの感想を答えた。

「これよりコスモタイガー隊は小惑星帯にてコスモタイガー研修をはじめます。隊員の方は自分の機体に乗って、格納庫より出艦してください」

艦内放送がコスモタイガー隊に案内している。

「コスモタイガー隊は、これから研修か」

艦内放送を聞いて、森雪は言った。

「さあ、今のうちに君たち2人は食堂に食事に行ってきたらどうか?」

佐渡先生は、ゆみと森雪に言った。

お母さんの手料理につづく

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