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再度、少年盗賊団
「おい、ゆみ、起きろよ!出撃だぞ!」
今日は、大学の入学式の日だった。
「ゆみちゃん、これ着ていきましょうね」
お母さんは、ゆみに紺色のブレザーとフレアースカートを履かせていた。足には紺のストッキングを履いて、いつもよりも女の子らしかった。お母さん自身も紺のブレザーとタイトスカートを履いている。ブレザーの下のブラウスには、お花のコサージュが付いていて、新入生の母親らしい姿だった。
「おい、ゆみ、起きろよ!出撃だぞ!」
ゆみが、お母さんの作った朝ごはんをお父さんと一緒に食べていると、玄関のドアを激しくノックする音がした。あの声は、竜だと、ゆみにはすぐピンときた。
「なによ。朝早くからうるさいわよ」
ゆみが玄関のドアを開けると、外から飛びこんできた竜に言った。
「祥恵さんは、どこにいる?」
竜は、ゆみの言葉などお構いなしに聞いてきた。
「お姉ちゃんは、今日は早番だから、もう出勤している」
ゆみは、竜に答えた。
「大変だぞ!これから少年盗賊団の出撃だぞ!戦うぞ!」
竜は、ゆみのことを上から下へと全身を見ながら言った。竜の後ろには、ほかの少年盗賊団の子たちも皆、一同に揃っていた。今日は訓練学校も入学式の朝だということで、スカートを履いていくと言っていたあゆみも、ジーンズでラフな格好で立っていた。
「あれ、あゆみちゃん。お母さんと一緒に買いに行ったあのスカートを履くんじゃなかったの?」
ゆみが、呑気にあゆみに質問した。
「何を言っているんだよ。お前こそ、そんなチャラチャラした服装で戦えると思っているのかよ。さっさと着替えて来いよ」
あゆみが答える前に、竜が返事した。
「はい?」
「ゆみちゃん、宇宙人だよ!宇宙人がまた攻めてきたのよ!」
あゆみが、玄関の一番近くに付いている窓の外を指さしながら言った。ゆみは、あゆみに言われて、窓の外を眺める。港に大きな球体の宇宙船が着水していて、その球体の上部にあるハッチが開いて、そこから八本足のタコのような乗り物が次々と出てきて、地上に上陸していた。
「なに、あれ?」
「だから、宇宙人だって!俺らで倒しに行くぞ」
竜が、再度ゆみに言った。
ゆみは、玄関先に出てきたお父さんとお母さんの方を見た。お母さんも窓の外にいる宇宙人の姿は確認済みだったが、あなたが戦いに行く必要などないわよという顔で、ゆみのことを見ていた。
「なんで・・。あのさ、地球防衛軍とかは?ヤマトとか出撃してないの?」
ゆみは、竜に聞いた。
「さっきまで、向こうの丘の上で地球防衛軍は、あいつらと戦っていたよ」
竜は、窓から見える丘の向こうを指さした。そこの町は火事で燃え広がっていて、その中に、おそらく宇宙人たちに襲われてしまった後なのだろう、地球防衛軍の戦車とかが残骸になって捨てられていた。
「やられちゃったの?」
「ああ」
竜は、ゆみに答えた。
「あいつら、下手くそなんだよ。ただ無鉄砲に図体のデカい戦車で向かっていくだけなんだもん。俺らなら、もっと機動力のあるバイクで上手に戦えるだろう?」
竜は、ゆみに言った。
「あたしたち素人だし、もっと負けるかもよ」
ゆみは、竜に言った。
「なんだよ、逃げるのかよ。ゆみは」
「逃げるって。そりゃ、竜たちは訓練学校見習いの宇宙戦士かもしれないけど、あたしは、ただの医大生、一般市民だもん」
ゆみは、竜に応えた。
「はああ、よーくわかったよ。ゆみは意気地無しの弱虫に成り下がちゃったんだな。一生、そのチャラチャラしたスカートでお嬢様していろよ!」
竜は、ゆみに怒鳴った。そして、
「おい、お前ら。行くぞ!俺らだけで、あそこの住民たちを宇宙人から守るぞ!」
竜は、ゆみのことはほったらかして、ほかの少年盗賊団の子たちを誘って、出て行こうとしていた。
「竜!ちょっと待ちなさいよ!あんただって宇宙戦士といっても、まだ見習いでしょう。あんたが行って、あの宇宙人たちに勝てると思っているわけ?」
ゆみは、出て行こうとしている竜に後ろから声をかけた。
「ね、お姉ちゃんに伝えて、ヤマトの皆に戦ってもらった方が良いよ」
ゆみは、竜に言った。
「ほお、じゃあ、お前はヤマトの皆さんがいらしゃるまで何もせずにいる気かよ。弱虫のお嬢様だな。いつからそんな腑抜けになってしまったんだよ。ヤマトの皆さんが来るまで待っていたら、あそこに住んでいる人たちは全員やられて死んでしまうぞ!」
竜は、ゆみに言い返した。
ゆみが、窓の外の方を見ると、さっき球体から飛び出してきたタコ型乗り物は、地上に上陸していて、港近辺にある建物を次々とぶっ壊し始めていた。
ゆみは、タコたちが町を破壊する様子を窓からじっと見ていた。
「おい、腑抜けはほっておいて行くぞ!」
竜が、ほかの子たちを誘って、玄関から出て行こうとしていた。
「ちょっと、待ちなさいよ!誰が行かないって言った?先にバイク置き場に行って、そこで待機してなさい!あたしも、すぐ、5分、いや3分で着替えて降りていくから」
ゆみは、竜に叫んだ。
「そう来なくちゃ!」
竜は、ゆみの決断を褒めて、ほかの子たちを引き連れ、先にバイク置き場へ降りていく。お母さんが、ゆみの決断を心配そうに、おろおろと見つめていた。
「お母さん、ごめんね。あたし行かなくちゃ。でないと、あそこに住んでいる人たち皆、やられちゃう」
ゆみは、お母さんにそう言うと自分の部屋に入って、スカートを脱いでジーンズなど動きやすい服装に着替えて、出てきた。
「お母さん、行ってきます!」
「ゆみちゃん・・」
出かけようとしているゆみのことを、お母さんはまだ心配そうに見ていた。
「大丈夫よ。ちょっくら行って宇宙人のやつら倒してくるだけだから。それに、この騒ぎでしょう、大学の入学式だって休止よ。きっと延期になるって」
そう言うと、ゆみは、お母さんにバイバイして、出かけていった。
タコとの戦いにつづく