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夏休み前

「ああ、しんど~」

祥恵は、ため息をついていた。

もうじき夏休みだというのに、夏休み前のため息というのは、いつもの1学期最後にある期末試験のことである。

「あなた、いつも試験前になると、ため息ついているわね」

お母さんは、ダイニングの自分の席でため息をついている祥恵の姿をみて、苦笑していた。

「そんなで大丈夫かしら?来年の高校入試は」

お母さんがつぶやいた。

「やっぱり、高等部に上がる際って、今年から入試あるんだ?」

祥恵は、お母さんに聞いた。

「そうなりそうね」

「お母さんたちが頑張っているんじゃないの?入試が無くなるように」

「それは、そうなんだけどね。たぶん今年からは入試始まるわよ。今、お母さんたちが先生と話し合っている活動は、おそらく数年後の卒業生たちに、また試験無くても進級できるような勉強の成果が現れてくるんじゃないのかなって活動だからね」

「そうか。数年後の卒業生じゃ、私には何の関係もないね」

祥恵は、答えた。

「それは、あなたには関係ないかもしれないけど、数年後のあなたの明星学園中等部の卒業生、後輩たちに良いことになるんだったら良いでしょう」

「まあね」

祥恵は、お母さんに頷いた。

「いけない。数年後の後輩のことじゃなくて、今は私自身の明日の試験のことをまず第一に考えなきゃ」

そう言うと、祥恵は席を立ち上がって、2階の自分の部屋に上がっていった。

「ああ、気持ちよさそうに寝ているな」

祥恵は、2階の自分の部屋に入ると、部屋手前のベッドでぐっすり寝ているゆみの姿を眺めていた。

「あ、かわいい」

祥恵は、自分の妹のゆみの寝顔をそっと眺めながらつぶやいた。我が妹ながら、なんてかわいい顔なんだろうと、思わずそっと近づいて、寝ているゆみのほっぺに、そっと自分の指で撫でていた。

「にゃ」

ゆみの真横で寝ていた猫のまりが、ゆみの顔を撫でている祥恵の姿を見て、頭を少し持ち上げて小さく鳴いた。

「あなたもかわいいよ」

祥恵は、まりの頭もそっと撫でてあげた。

「さあ、お勉強しよう」

祥恵は、部屋の奥の自分の机に座って、教科書を開くと勉強を始めた。そんな祥恵の後ろ姿を眺めていた、ゆみの足元のところで寝ていた猫の美奈が、立ち上がると祥恵の足元に寄ってきた。

「どうしたの?くる?」

祥恵が、美奈に声をかけると、美奈は軽くジャンプして椅子に座っている祥恵の膝の上に乗っかってきた。

「一緒に勉強してくれるの?」

祥恵は、美奈の頭を撫でてあげながら勉強していた。

「お姉ちゃん・・」

翌朝、祥恵は妹のゆみに身体を揺り動かされ、目を覚ました。

「お姉ちゃん、ここで寝ていたの?」

「ああ、寝ちゃったみたい。でも、明け方の5時過ぎまでちゃんと起きていて、勉強していたんだよ」

祥恵は、妹に言い訳っぽいことを寝ぼけながら話していた。

「え、それじゃ殆ど寝ていないの?」

ゆみは、少し心配そうに姉の顔を見た。

「大丈夫よ。試験終わったら、夏休みだし試験期間中に寝られなかった分も、しっかり眠るから。あなたと違って、お姉ちゃんは体力だけはあるから」

祥恵は、ゆみに言った。

「さあ、朝ごはん食べて学校に行こう。早く行かないと試験はじまちゃうぞ」

祥恵は、ゆみを連れて1階の台所に降りると、お母さんの用意してくれていた朝食を食べて、学校に出かけた。

「お姉ちゃん、眠くない?」

途中、井の頭線の電車の中で、ゆみは祥恵に尋ねた。

「大丈夫よ」

祥恵は、欠伸をしている口を手で押さえながら、笑顔でゆみに答えた。

「おはよう!」

「あ、ゆり子。おはよう」

祥恵は、ゆみと学校への道を歩いていると、後ろからゆり子に声をかけられて答えた。

「勉強してきた?」

「一応してきたよ」

「どう?大丈夫?自信ある?」

「そうね」

ゆり子と祥恵は話していた。

「ゆみちゃんは試験大丈夫?」

ゆり子が、ゆみに聞いた。

「ゆみちゃんは大丈夫よね、試験はいつあっても」

ゆみが返事する前に、ゆり子は、自分でした質問に自分で答えていた。

「うん」

ゆみは、ゆり子に頷いた。

「ゆみちゃんは、今なんか楽しみにしていることある?」

「お山に行くこと」

「お山って尾瀬のこと?そうか、ゆみちゃんは初めて学校の登山に参加するのだものね。けっこう楽しみなんだ?」

ゆり子は、ゆみに聞いた。

「うん。今、一番夏休みで楽しみなことかな」

「そうか。でも、尾瀬は夏休みといっても殆ど8月の終わり頃じゃない。その前に、まだまだいっぱい夏休みはあるよ。ゆみちゃんは、その前の夏休みはどうするの?」

「まだ、わからない」

ゆみは、ゆり子に答えた。

「お父さんのヨットに乗りに行くんじゃないの?」

祥恵が、ゆみに聞いた。

「ああ、行くけど。お姉ちゃんも行かないの?」

「え、行くわよ」

祥恵は、ゆみに答えた。

「ね、夏休みの間に、ゆり子の家に遊びに行こうか?」

祥恵が、ゆみに提案した。

「ゆみはゆみで、私は私で、ゆり子の家に遊びに行ったことはあるけど。ゆみと私で一緒にゆり子の家に遊びに行ったことはないから」

「うん!行く!」

ゆみは、祥恵の提案に賛成した。

「いいよ。うちに遊びに来る?」

「うん」

ゆみは、ゆり子に答えた。

ゆり子の家につづく

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