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ひとりぼっち

お父さんが運転する車は、駐車場の先の方に停まっている車の列の後ろに追いついた。

「遅いお着きですね」

お父さんが、列の最後尾に車を停止すると、係りの人がやって来て、お父さんに声をかけた。

「ええ、今すぐそこで、宇宙船に追いかけられました」

「それは、それは災難でしたな」

係りの人は、お父さんに話しかけた。

「せっかく着いた早々申し訳ありませんが、すぐに地下シェルターへ誘導するわけには行きません」

係りの人は、お父さんに説明した。

「これから、放射能検査の人間に来てもらって、あなた方の車と皆さん自身の体の放射能検査をさせてもらいます。それまで、しばらくこちらで待機をお願いします」

係りの人は言った。

「遅くに、こちらに到着した皆さんは、遊星爆弾の落とされた地上にて、ずっと過ごされて来ていらしゃると思います。つまり、遊星爆弾の放射能に当たってこられている皆さんです。皆さんの体の放射能の有無、有るのでしたら除去してからでないと、地下シェルターへはご案内できません」

お父さんだけでなく、助手席のお母さんにも聞こえるように係りの人は話す。

「それでないと、地下シェルターが地上と同じように放射能に汚染されてしまいます。どうぞ、ご理解をお願いいたします」

「それは、もちろんです」

歯医者、お医者さんでもあるお父さんは、放射能検査を受けることに理解を示した。

「それで、放射能検査なのですが、ただ今、非常に混み合っていまして。検査の担当の順番が回ってくるまでに2、3日は、こちらでお待ちいただくことになってしまうかと思います」

係りの人は、申し訳なさそうに、お父さんたちに頭を下げた。

 

「仕方ないな。しばらくここで待機だ」

係りの人が奥に戻っていくと、お父さんは、お母さんに言った。

「お姉ちゃんは?」

ゆみは、お母さんに聞いた。お母さんは、そのことには何も返事をせずに、ゆみのことを抱きしめてくれるだけだった。

「お父さん、さっきの人が、順番が来るまでの間、2、3日はここで待つって言ったよね」

「ああ」

「それじゃ、あたし、その間ちょっとお出かけして来る」

ゆみは、そう言うと、車のドアのロックを解除して、外に出ようとしていた。お母さんは、ゆみが解除したドアロックを慌ててまたロックすると、ドアをしっかり閉めた。

「出して!」

ゆみは、お母さんに頼んだ。が、お母さんは首を大きく横に振った。

「お姉ちゃんを助けに行くの!」

ゆみは、お母さんの顔を真剣に見つめた。

「ゆみちゃん、良い子だからわかって!」

お母さんは、目に涙をいっぱい貯めながら、ゆみにお願いした。そんなお母さんの目を見ていたら、ゆみの目からも、いっぱい涙が流れてきてしまった。

それからの放射能検査の順番が来るまでの数日間は、ゆみは、生まれて初めての寂しい一人っ子を経験していた。ゆみが生まれてから、ずっとゆみの側には、いつも姉の祥恵がいてくれた。学校に行くのにも、帰るのにも、いつも姉が一緒に登下校してくれた。近所にお買い物行くときだって、いつも姉が一緒に行ってくれた。いつも、いつも姉がずっと一緒にいてくれた。

それが、この数日間、ゆみは車の中で、お母さんとお父さんの3人だけで過ごしていた。

「ゆみ、ごはんだぞ」

「ゆみちゃん、パジャマに着替えて、後ろの席で、お母さんと寝ましょうね」

お母さんとお父さんの2人を、ゆみはずっと独占していた。

これが、お姉ちゃんがどこかお友だちの家に数日間だけお泊まりに行っているだけで、その間は、ゆみが2人を独占できると言うのだったら、どんなに良かったことだろう。だけど、もうこの先ずっとお姉ちゃんは、帰ってこないのだ。これからずっと、お姉ちゃんが永遠に帰ってこないままの、お母さんとお父さんの独占なのかと思うと、ゆみにはぜんぜん嬉しくなかった。

「もう、お姉ちゃんに会えないの?」

お母さんに聞いても、お母さんは、そのことについては、何もはっきりとは答えてくれなかった。最も、ゆみ自身も、お母さんの口からそのことをはっきり聞きたいとも思わなかった。

希望の光につづく

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