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宇宙戦士訓練学校生
「ゆみ君、OKじゃぞ!明日から君は宇宙戦士訓練学校生じゃ」
佐渡先生は、ゆみに伝えた。
「それでじゃな、わしの知り合いにも、ゆみ君が貧民だということは内緒にしてある。だから、左腕に付けられてしまったアザ、それは学校では誰にもぜったいに見られてはいかんぞ」
佐渡酒造に言われて、ゆみは、うんと頷いた。
「夏とかでも、カーディガンを羽織るなどして、腕が表に出ないようにしておいたほうが良いだろうな」
佐渡酒造は、ゆみが訓練学校に入学するに当たって、内緒にしておかなければならない注意点をいくつか告げた。
「もし、見つかったら・・」
「貧民だということがわかってしまったら、ほかの生徒や先生からどんな目に遭うかも、わしにもわからん。だから、ぜったいにわからないようにしておきなさい」
佐渡酒造は、ゆみに言った。ゆみは、それを聞いて少し不安な気持ちになった。
「あたし、別に学校には行かなくてもいい。ただ、ここの病院で動物たちの面倒をみるアルバイトするだけでもいい」
「ダメじゃ、ダメじゃ!」
それを聞いて、佐渡酒造は、ゆみのことを叱咤した。
「こんなところで、アルバイトしているだけじゃ立派な獣医などなれんぞ。ちゃんと大学の医学部に入学し、勉強して卒業せねばダメじゃ」
佐渡酒造は、ゆみのことを説き伏せていた。
「そのために、宇宙戦士訓練学校に行くんじゃろうが!獣医になるという自分の夢の実現のためなんじゃぞ。貧民のことを内緒にしておくのは不安かもしれんが、しっかり、そのことを自覚し頑張らないとダメじゃぞ」
「わかった!」
佐渡酒造に言われて、ゆみは改めてしっかりと決意を持った。
「ところで、宇宙戦士訓練学校は1丁目の省庁とかがいっぱい建っているところにある。その中の防衛省に隣接している建物じゃ。そこまで、毎日通学せねばいかんのだが、どうするかな」
「それは大丈夫。あたし、この町の、地下の下水道設備を全て把握しているから。貧民街の真下から下水道設備を通って、1丁目の学校までずっと地下を通って通えるから」
ゆみは、佐渡酒造に言った。
「そうか。それならば、学校までの通学路も地下だから、誰かに見つかる可能性も低いだろうしな」
佐渡酒造は、ゆみから聞いて納得した。
「ところで、お前さんたち随分派手にやっているみたいだな」
佐渡酒造は、悪戯っぽくゆみにウインクすると笑いながら言った。
「え?」
「君たちの結成している少年盗賊団のことだよ。毎晩、下水道から外の町に出て、あっちこっちのお店から商品を頂いているのか?」
「あ、はい。そうしないと、ここの貧民街に住んでいる人たち皆、飢え死にしちゃうから」
「盗んだことがお店の人にばれにくいように上手くやっているみたいじゃないか」
「それは盗みは良くないってことは、わかっているんだけど、そうしないとあたしたち貧民だって、生活があるから」
「わしは、そのことについて責める気は全くない。あの少年盗賊団というのは、君がリーダーをしているのか?」
「あ、はい」
「うん。君は賢い子なんだな。貧民なんかにされなかったら、間違いなく学校で優等生だったんだろうな。それがもったいなくてな。だから、わしは、ゆみ君、君のことを学校に行かせることに決めたんだ。例え、貧民ということを周りに内緒にしてでもな」
「頑張って、勉強します!」
ゆみは、佐渡酒造に敬礼してみせた。
「うん。頑張って、一生懸命に勉強をしてくれ」
「はい。そして、ぜったいに大学の医学部にも入学します!」
ゆみは、佐渡酒造に約束した。
「ところで、大学の医学部も、貧民であることを内緒にして入学することになるの?」
「まあ、現状だと当然そうなるだろうな」
佐渡酒造は答えた。
「まあ、大学の話は、まだ2年後のことだ。まずは宇宙戦士訓練学校に2年間通って、しっかり卒業しなさい」
「はい!」
ゆみは、笑顔で答えた。
ふたたび家族探しにつづく