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スターシャお母さん
「間に合うかな」
ゆみは、ピンク色のコスモタイガーを操縦しながら考えていた。
それでも、ゆみの操縦しているコスモタイガーはヤマトを飛び出してから、ずっと飛び続け、ようやくイスカンダル星の大気圏に突入したところだった。
「この飛行機の性能ってすごい!」
ゆみは、ピンク色に塗装されているコスモタイガーを操縦しながら思った。訓練学校時代には、いつも実習授業で乗っていたコスモタイガーなのだが、その頃よりも抜群に性能が上がっていた。最優秀MVPのご褒美で、ピンク色に塗装してもらったときに、ついでに整備までしてくれたみたいで、かなりの性能アップされていたのだった。
そのおかげもあって、今ゆみの飛んでいる眼下には、イスカンダルの町並みが広がっているのが目視できるところまでやって来ていた。
「やっぱ、間に合わないかな」
ゆみは、スターシャが自爆スイッチを押すよりも前に到着したかったのだが、どうやらこのまま普通に進んだのでは間に合いそうもない。
「突っ込むか・・」
ゆみは、自分の操縦しているコスモタイガーをそのまま全速力で、眼下の町並みの中に建っている他のビルよりもひときわ高いタワーに向かって突っ込んでいた。その高いタワーの最上階に展望台があり、普段スターシャは、そこで眼下に見えるイスカンダルの町を見守っているようだった。
ガシャーーン!
ゆみのコスモタイガーは、そのタワーの最上階に突っ込んだ。
突っ込んだときの衝撃で、タワーに埋め込まれていた壁面の透明ガラスが砕けて、ガラスの破片が周りに散らばった。
「え、なに?」
びっくりしたのは、タワーの最上階内にいたスターシャだった。
いきなり、コスモタイガーが猛スピードで自分の立っているタワーの最上階フロアに突っ込んできたのだ。フロアの床には、コスモタイガーが突っ込んで割ったガラスの破片が辺り一面に散らばっていた。
突っ込んできたコスモタイガーのコクピット部分にあるハッチが開いて、中から地球人の女の子が顔を出した。
「あなたは?」
「説明はあと!時間が無いの早く乗って!」
ゆみは、スターシャに向かって叫んだ。
スターシャは、その数秒前に自分の目の前にあるイスカンダル星の自爆用スイッチのレバーを押したばかりだった。
「あなたこそ、早くヤマトにお戻りなさい。ここは、この星はまもなく爆発します」
スターシャは、ゆみに向かって言った。
「あたしも死にたくないの!だから、ヤマトに戻るから、あなたもこの飛行機に早く乗って下さい」
ゆみは、再度スターシャに言った。
「私は、この星の最後の住人、この星と運命を共にしなければなりません」
スターシャは、静かに答えた。
「そんなことはさせません!」
ゆみは、スターシャに告げた。
「あなたは、確かにこの星の最後の住人なのかもしれません。が、その前にあなたは、あの赤ちゃんのお母さんです。お母さんは、子どもが大きくなるまで見届ける義務があります。子どもを良い子に育て上げる義務があります」
ゆみは、スターシャに言った。
「だから、あなたは、ここで死んではいけません。あたしと一緒にこの飛行機でヤマトに行かなくてはいけません」
ゆみは、スターシャの顔を見た。
「でも、私は、この星の・・」
「この星の最後の住人とか関係ない。それよりも前に、あなたは、あの赤ちゃんのお母さん、お母さんにとって、何よりも子どものことが、家族のことが優先されるべきです」
ゆみは、スターシャにきっぱりと言い切った。
スターシャは、しばらく、ゆみの顔を見て考え込んでいたが、
「そうですね。確かに、あなたの言うとおり私はイスカンダル星の最後の住人である前に、娘の、サーシャの母親です。守の妻です。彼ら家族と過ごさなければいけないかもしれない」
そう言うと、スターシャは、ゆみの乗るコスモタイガーの後部座席に乗りこんだ。
「それじゃ、時間がないから、ちょっと乱暴の運転になるかもしれないけど我慢してね」
ゆみは、スターシャにそう告げると、コスモタイガーのアクセルを吹かして、イスカンダル星を飛び立った。このまま、星が爆発する前に、なんとかイスカンダル星を離れなくては、ゆみは焦って操縦していた。
大爆発!につづく