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お母さんの手料理
「そうですね、確かに今のうち食堂に行ってきちゃうのが良さそうですね」
森雪は、佐渡酒造に返事した。
「ゆみちゃん、少し時間早いけど、ごはん食べに行きましょう」
森雪は、窓の外で研修をしているコスモタイガーの機体を眺めていたゆみに言った。
「あたし、お腹空かない。ここで飛行機の研修を見ている」
ゆみは、森雪に言った。
「だめ。今のうちに、ごはんを食べてきましょう」
森雪は、ゆみに命令した。
「ほら、今は皆、コスモタイガーの練習に出ているでしょう。だから、今のうちに食堂に行けば、食堂が空いているのよ」
森雪は、そう言うと、ゆみの手を握って、一緒に医務室を出て食堂に向かって歩き出していた。仕方ないので、ゆみも森雪に手を引かれながら、食堂へ向かう。
2人はヤマトの食堂の中に入った。
確かに皆、コスモタイガーの研修とかに出かけてしまっているらしく、食堂にはお客さんが誰もいなかった。カウンターの中に従業員のシェフとウェイトレスが一人ずついるだけだった。
「お母さん!」
ゆみは、その従業員のウェイトレスの方に呼びかけた。お母さんは、カウンターに座った2人の側にやって来ると、
「ゆみちゃん、ダメよ。そんな大きな声で、お母さんとか呼んだりしたら。親子だってことがばれちゃうでしょう」
お母さんは、小声でゆみに注意した。
「お母さんも、ここに乗っていたんだ」
「うん。佐渡先生がそういう風に配慮して下さったのよ」
カウンターの奥では、お父さんが料理をしながら、ゆみのほうに向いてニッコリと微笑んでくれている。
「お父さんとお母さんだけじゃないのよ。ほら、美奈ちゃんたちも来ているのよ」
お母さんは、厨房の奥のケージの中にいる猫の美奈ちゃんたちと犬のメロディの姿をゆみに見せた。
「あんな狭い中じゃかわいそう」
ゆみは、ケージの中に入っている美奈ちゃんたちを見て言った。
「そうなんだけど、ここに放してあげられる場所もないし、仕方ないのよ」
お母さんは、ゆみに言った。
「ね、ゆみちゃん。あの子たちは、私たちのお部屋に連れて行こうか?そうしたら、狭いケージの中でなくて、お部屋で自由にできるよ」
「いいの?」
ゆみは、森雪に聞いた。森雪は、笑顔で頷いてくれた。
「とりあえず、ごはん食べましょう」
森雪は、2人分のお料理をお母さんに注文した。
厨房の奥では、お父さんがお料理している。ゆみは、厨房の中、お父さんの側に行って、お父さんの料理するところを見ていた。
「お父さんって、お料理できるの?」
ゆみは、お父さんに聞いた。ゆみは、まだガミラスが攻めてくる前、東松原の家に住んでいた頃を思い出しても、お父さんが台所でお料理するところなど見たこともなかった。いつも、お母さんがお料理をしていて、それを、ゆみがお手伝いしていた。
「お父さんだって、料理ぐらいできるんだぞ」
お父さんは、うどんをこねながら、ゆみに言った。お父さんは歯医者なので、歯の治療とかしているから手先は器用みたいで、けっこう上手に料理もこなしていた。
「お父さん、シェフに転職できるね」
ゆみが、お父さんの料理を見て言った。
「勘弁してくれよ。お父さんは、出来たらいつかまた歯医者に戻りたいんだから」
お父さんは、ゆみの頭を撫でながら笑顔で答えた。
「ゆみちゃん、お料理来たよ」
森雪にカウンターから呼ばれ、ゆみは森雪の隣の席に戻って、ごはんを食べ始めた。
食べ終わると、ゆみと森雪はケージに行って、メロディ、美奈ちゃん、まりちゃん、ギズちゃんをケージから出すと、自分たちの部屋に連れて行った。
まだ、コスモタイガー隊の人たちは、宇宙で練習している最中だったので、誰にも会わずに、メロディたちを部屋へと移動することができた。
ゆみの目的につづく