※スマホの方は、横向きでご覧下さい。
卒業戦
「ゆみさん、きっと勝ちますよ」
太助が、ゆみにそう言ったのはクラスの教室で、担任の先生がコスモタイガー実習の卒業試験について述べた後のことだった。
「ちょっと、皆、静かにしてくれ」
担任の先生は、教室に入ってくると、雑談している生徒たちに話した。
「これから、コスモタイガー実習の卒業試験について説明します」
先生は、クラスの皆に言った。
「コスモタイガー実習の卒業試験は、皆がここの宇宙戦士訓練学校で学んできた2年間の集大成とでも言える卒業試験だ。皆は、これから本校を卒業した後、ヤマトの乗組員になるもの、防衛省の機関部で働くもの、あるいは省庁のセクションでデスクワークに励むもの、様々だと思うが、この学校で学んできた2年間の成果を思う存分、この卒業試験に発揮してもらいたい」
先生は、皆に告げた。卒業試験ということで、さっきまで雑談しておちゃらけていた生徒たちが皆、緊張して先生の話を聞いていた。
「このコスモタイガー実習は、もちろんパイロットたちの実習も見るが、それだけではない。機関、エンジンやナビゲーションなどそれぞれ担当の人たちの実習態度も試験に含まれるから、そのつもりで望んでもらいたい」
先生は、皆に言った。
「皆にはパイロット、機関担当、ナビゲーターなどそれぞれで一つのコスモタイガーを操縦するグループになってもらう。その上で、一番早く的確に、試験コースを周ってゴールまで戻ってきたコスモタイガーのグループが本年度の最優秀コスモタイガー隊に選ばれることとなる」
先生の話は、続いていた。
「それで、最優秀コスモタイガー隊に選ばれたグループには、表彰状とトロフィーを授与するわけだが。ただ、トロフィーをもらったって、皆だっておもしろくないだろう。そんなわけで、今年卒業した皆の殆どは、宇宙戦艦ヤマトのコスモタイガー隊か機関部に配属されるわけだが、その際、ヤマトに搭乗する際に、この学校で使っていた自分の担当コスモタイガー機を愛用としてヤマトに一緒に搭乗することができることとなった」
ワー!
生徒たちは、先生からそれを聞いて歓声を上げた。やはり、2年間ずっと一緒に乗って訓練してきた自分のコスモタイガー機には、ほかのコスモタイガー機よりも愛着があるのだった。
「そこで、今回の卒業試験だ。この卒業試験で最優秀コスモタイガー隊に選ばれたコスモタイガー機は、何色でも自分たちが一番塗りたいと思う色に、愛用のコスモタイガー機を塗装してもいいというプレゼントを授与することとなった」
「え、はい、先生!なに色でも好きな色に塗っていいのですか?」
「ああ、そうだ。坂本だったら、よく青い服を着ているから、自分のコスモタイガー機は青色にでも塗装するか?」
先生は、質問された坂本に答えた。
「え、俺はやっぱり金色、ゴールドがいいです」
坂本が答えて、クラスの皆は大笑いになった。
「お蝶婦人なら、真っ赤なバラの赤色にでも塗装するか?」
お蝶婦人は、先生に提案されて、黙ってにっこりと微笑んでいた。
「ゆみ君なら、なに色に塗りたいかな?」
先生に聞かれたが、ゆみはうつむいたまま黙っていた。
「ゆみは、薄暗いから、どぶ色の、グレイの薄汚い色でしょう」
ゆみの代わりに、いつも坂本と一緒にいる青木という男子学生が答えた。それを聞いて、太助以外のクラスの皆は笑っていた。
「まあ、その前に、天地が逆さになったって、ブスのゆみになんか優勝できるわけないですがね」
加藤四郎が言って、クラスの皆は笑いながら、加藤に頷いていた。
最優秀パイロットにつづく