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食堂会議
「しかし、化け物が化け物だったなんてな」
坂本は、食堂でほかの訓練学校卒業生たちと話をしていた。
「本当だよね、小汚いブスだったからって皆で貞子、貞子呼んでいたけど。まさか、本当に貧民って化け物だったなんてね」
お蝶婦人も、坂本たちとゆみのことを話しながら、笑っていた。
「なんとなくブスとか貞子って呼んでたけど、あながち間違いじゃなかったってことだよな・・」
「まさかの貧民とかあり得ないよ」
「でも、どうやって貧民のくせに、宇宙戦士訓練学校に入学できたんだろうね?」
「っていうか、貧民って貧民街から外に出れないんじゃなかったのかな。いったい、あいつってどこの貧民街から来たんだろうな」
「もしかして、自分の貧民街が無かったとか・・」
「無かったってどういうことだよ?」
「だからさ、貧民街が無いものだから、野良貧民だから、行く場所が無くて訓練学校の敷地に迷い込んだとか」
「それで事務のおじさんだかが生徒と勘違いして、学生に紛れ込んじゃった・・」
「学生事務の、神田のおばちゃん、あのおばちゃんなら野良貧民がウロウロしているの見つけて、学生と間違えて学生証発行しちゃうとか有りそうじゃない」
「確かに、神田のおばちゃんならボケッとしてるもん。あり得そう・・ハハ」
皆は、ヤマトの食堂でゆみに関する勝手な想像をして大笑いしていた。
「あのさ、笑い事じゃないと思うんだけど」
楽しそうに笑っている皆に向かって、太助が真剣な表情で発言した。
「おっ、どうした。太助が自発的に発言するなんて珍しいじゃん」
加藤四郎が太助に言った。
「これって大問題だと思わないのか?」
太助は、皆に提案した。
「だって、俺らの訓練学校の同級生に貧民が紛れ込んでいたんだぞ!しかも、その貧民が卒業時に最優秀MVP、ヤマトのテストセーリングにも乗っていたんだぞ」
「確かにな」
太助の提案に、今までヘラヘラ笑っていた生徒たちも真面目に返事を返した。
「訓練学校も問題だけど、俺たちの職場の宇宙戦艦ヤマトに貧民が無断で乗っているなんて・・」
「ただ、その貧民が乗っていたからスターシャさんを助け出せたっていうのはあるんじゃないの」
お蝶婦人が、太助に言った。
「いや、それは無いでしょう。仮にあの貧民のやつがヤマトに乗っていなかったとしても、俺たちっていうか、坂本かお蝶婦人か、あるいは戦闘班長かもしれないけど、がスターシャのことを助けていたよ」
太助は、お蝶婦人に答えた。
「そうかな。私、ぜんぜんスターシャがイスカンダル星に残っていたなんて気づかなかったけどね」
「俺も気づいてない。たぶん戦闘班長だって気づいてなかったと思う・・」
坂本も、お蝶婦人に同意した。
「あんな貧民のやつに気づけたんだから、貧民がいなければ俺たちにだって気づけていたよ!まあ、その話はどうでも良いんだけどさ。あの貧民がヤマトに乗っているっていうの許せなくないですか?」
太助は、1人興奮しながら皆に聞いた。
「えっ、まあな。貧民がヤマトに乗ってたっていうのは問題だけど、これから地球に戻ったら、地球警察に身柄渡すことにはなるんじゃないか」
「地球警察に身柄渡して、それからあいつどうなるんだよ?」
「どこかの貧民街に収容かな。それともヤマトとか訓練学校に勝手に入ったんだから殺処分かもな」
「殺処分っすよ!あんなやつ殺処分が良いっすよ!」
太助は、興奮しながら言った。
「なんだか、太助荒れてるな」
「別に荒れてはいないっすよ。ただ、貧民が許せないだけで」
太助は、少し冷静になりながら答えた。
「それは荒れるよね。なんてたって、自分が惚れた子が貧民だったんだから」
お蝶婦人が言った。
「え、別に俺、あんなブスに惚れてないっすよ!」
太助は、お蝶婦人に反発した。
「えっ、惚れてなかったのかよ」
今度は、坂本が太助に聞いた。
「惚れてないっす!誰があんなブスに惚れたりするもんですか」
太助は、きっぱりと言った。
「まあな、でも大丈夫だよ。ゆみのやつは地球に戻ったら地球警察に引き渡して、強制的に貧民街送りだから。迷惑かけられたって嘆願書提出すれば、貧民って殺処分にすることもできるみたいですよ」
「何なら、俺たちも嘆願書に署名してあげましょうか」
「ああ、太助の気持ちを考えたら、いくらでも嘆願書に署名ぐらいしてやるよ」
坂本も太助に言った。太助は、ゆみになんか惚れてないと強がってはいるが、坂本たち皆にはもう大分以前からバレバレだった。
「まあ、地球に戻ったときのことはともかく、今も許せないですけど・・」
太助は、皆に言った。
「だって、考えてもみてください。あいつは今、医務室のほかほかのベッドの中で眠っているんですよ、貧民のくせに。貧民なんて床にほったらかしでも十分じゃないですか。なのに、なんであいつは、普段怪我したときに俺たち人間様が寝る医務室のベッドに寝ているんですか!?許せないと思いませんか?」
太助は、皆に訴えた。
「じゃ、太助はどうしたいんだよ?」
「それは・・」
それから皆の会話は、ヒソヒソと小声になって、これからのことを相談し始めた。
デモ行進につづく